「論理的思考のツボ」の3回目。今回は「事実」と「意見」の違いについてです。
「事実」と「意見」は何が違うのでしょう?
じつは、この問題は考え出すと非常に難しい問題(=「何が現実なのか?」という哲学的命題)にまで達してしまうのですが、文章作成という観点から見れば、
そこに「価値判断」が含まれているかどうか。
によって分けられるといってよいでしょう。
例を挙げます。
A:日本の合計特殊出生率は2005年の1.25から2011年には1.39にまで上昇した。
B:日本の合計特殊出生率は2005年の1.25から2011年には1.39にまで急激に上昇した。
上記2つの文のうち、Aは「事実」を述べた文といえるでしょう。一方、Bは「意見」を述べた文といえます。
その差はたった1語。Bには「急激に」という言葉が入っているからです。
基本的にAの文には「異論」は発生しません。
出所のはっきりした数値であれば、だれもが元のデータにあたって、全員で納得することができます。
それに対し、Bにはさまざまな「異論」が発生する余地があります。
「たしかに『急激』だ」
「いや、『急激』じゃなくて『堅調』じゃないか?」
「いやいや、『わずかながら』だろう?」
このようにBの文には「急激に」という「価値判断」が含まれているからこそ、他の人の価値判断との間で対立が起こり、「異論」が発生するのです。
そして「異論」あるところに「議論」の余地が発生し、どの解釈が正しいかを巡って「論争」が起こるのです。
「意見」を求められたならば、そこにはなんらかのあなた自身の「価値判断」が含まれていなければなりません。
いくら最新の情報を羅列しても、古今の名著からの言葉を引用しても、それはあなたの「考え」ではないのです。
だからこそ、自分はその事実に対してどのような「価値判断」を下すのかに、意識的になりましょう。
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