第4講 これが差が付くポイント!」カテゴリーアーカイブ

4-1:原稿用紙の使い方 これだけは覚えておこう! 

原稿用紙の使い方は自分のいいたいことを伝えるためのフォーマット(ひな形)。正しく理解しよう!

原稿用紙の使い方をマスターすることは、相手に自分のいいたいことを伝えるための「フォーマット」(ひな形)をマスターすることです。
以下の表はみんなが間違えやすい原稿用紙の使い方をまとめたものです。注意しましょう。

  • マス目

1字で1マス。拗音(「ゃ」など)、促音(「っ」)、句読点(、。)なども同じ。ただし、閉じカギカッコ(」)と句点(。)は同じマスに入れる。

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  • 字下げ

段落の初めは1マス空ける。

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  • 行の先頭

閉じカッコ(」』など)や中黒(・)、長音(ー)、拗音、促音、句読点などは、行の先頭に書かない。前の行の末尾のマスに一緒に入れる。

ただし、字数制限がある場合は例外。最後の行の最後のマスに複数の字や記号を入れると字数オーバーとなるので書けない。

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  • 行の末尾

開きカッコ(「『など)などは、行の末尾に書かない。
末尾のマスを空け、次の行の先頭に書く。

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  • 疑問符・感嘆符

疑問符(?)や感嘆符(!)の後ろは1マス空ける。ただし、論文では原則として用いない。

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  • 点やダッシュ

点(……)は、1マスに点を3つ入れ、2マス続ける。
ダッシュ(――)は、2マス分書く。

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  • 数字

縦書きの場合は漢数字、横書きの場合は算用数字で書く。

なお、横書きの数字の時は、原則的に一マスに二文字入れる。

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  • カギカッコ

会話や気持ちを表す場合は一重カギカッコ(「」)を用いる。

カギカッコの中にもう一組カギカッコを書くときは、二重カギカッコ(『』)を用いる。

なお、会話文であれば、閉じカギカッコと同じマスに句点(。)を入れる。それ以外であれば、句点は必要ない。

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それでは、次に「わかりやすい文章」を書くためのポイントを説明します。でも、その前に質問です。「わかりやすい文章」を書くために注意しなければならないことは何でしょう?なるべく詳しく考えてください。


4-2:わかりやすい文章を書くための10ヶ条

わかりやすい文章を書くために守らなければならい十ヵ条。すべてマスターしてわかりやすい文章を書こう!

次にぜひ覚えておいて欲しいのは、わかりやすい文章を書くためのポイントです。そのポイントを「わかりやすい文章を書くための十ヶ条」として説明します。

この「十ヵ条」の説明では、まず「悪い例文」を読んでもらい、その上で「解説」を読んでもらいます。そしてそれから「書き直し例」を読んでもらうことで、これらのポイントを守ることがいかに重要であるかを理解していただきます。

また、すべての「悪い例文」は、以下の新聞投書に対して意見を書いてもらった小論文から採っています。あなたも、もし可能ならば、同じように以下の新聞投書に対して自分の小論文を書いてみましょう。その上で自分の文章を読みながら、「十ヵ条」の説明を読んでみてください。自分の文章がどのような傾向を持っているかを実感することができるでしょう。


問題
以下の新聞の投書を読んで、自分が思ったことを書きなさい。(400字以内)

だらしなくていいじゃない
(千葉県 中学校教員 男性 43歳)

最近の生徒たちの服装は、だらしない。私の勤めている中学校も、ご多分に漏れないところがある。多くの先生たちは、そのことを良くないこと、恥ずかしいことと思い、一生懸命指導している。

でも、ちょっと待てよ、と私は思う。だらしなくてもいいじゃない。気持ちの問題だと思う。服装の乱れは心の乱れなんて言うのは、頭の固いだれかさんの言うこと。ワイシャツを出している子もいる。カラーTシャツを着ている子もいる。それでいいじゃない。気持ちが優しくて、勉強も、運動も頑張っていれば、それで十分だと思う。

日本の学校は、あまりに形式的なことが多すぎる。起立、礼に始まり、起立、礼に終わる。競技大会といえば、整列行進。形だけできていれば、気持ちが伴わなくても問題にされないようだ。

いま問題になっている「日の丸」「君が代」法制化もそうだ。卒業式に日の丸が掲げられ、君が代を歌えば、教育委員会は満足するものらしい。問題は気持ちだ。心から国を愛する気持ちで歌わなければ意味がないことだし、法制化しても形式的な要件が整うだけで、無意味なことと思う。

服装一つをとってみても、もっと彼・彼女たちの気持ちを尊重してあげられないものだろうか。先生たちの意識の変革を強く望みたい。


 

  • 第一条 一文はできるだけ短く、一文一義で。

悪い例文
 私が思ったことは、確かに今の学校は細かい服装の規則をやかましく言って守らせようとしたり、起立、礼などの形式的なことを徹底して守らせるなど直接勉強に関係ないことまで我々を管理しようとしていると思うし、実際に私も同じような経験を受けたことがあるのでよく分かる。

一文に複数の事柄を入れようとすると、主語と述語のねじれや、呼応の副詞(けっして~ない)や係り受け(なぜなら~だからだ)の混乱などが起こり、大変読みづらくなります。

一文一義とは、「一つの文で一つのことをいう」ことです。つまり、一つの文で一つのことだけをいい、そうした短い文の積み重ねで文章を組み立てていくことが、わかりやすい文章への第一歩なのです。

書き直し例
 確かに今の学校は、細かい服装の規則をやかましく言って守らせようとしている。また、起立、礼などの形式的なことを徹底して守らせるなど、直接勉強に関係ないことまで我々を管理しようとしている。

実際に私も同じような経験を受けたことがあるのでよく分かる。
 

  • 第二条 接続助詞「が」はなるべく使わない。

悪い例文
 このようなことは誰しもが思うことであるが、私も同じような経験をしたことがあるが、そのときはやはりいい気持ちはしなかったが、それは私の友人も同じであった。だが、これはやはり学生時代誰もが経験しているはずだ。

 一文が長くなる現場には、かならずといっていいほど、この接続助詞の「が」が現れます。接続助詞の「が」は万能接着剤のように、様々な文をつなげてしまうのです。
 ですから、なるべく接続助詞の「が」は使わないようにしましょう。その代わり、文と文ををつなぐ言葉を適切に入れましょう(第四条を参照)

書き直し例
 このようなことは誰しもが思うことである。
 私も同じような経験をしたことがある。そのときはやはりいい気持ちはしなかった。それは私の友人も同じであった。
 これはやはり、学生時代誰もが経験しているはずだ。
 

  • 第三条 主語をなるべくあらわに書きこむ

悪い例文
 個人の人権を尊重する現代に、服装や形式のことばかりを厳しく規制することは許されるのでしょうか。こんなことがあってもよいのでしょうか。
 たしかに、子どものころはしつけの一環として行うこともあるでしょう。しかし、ただ「ためにする」のであれば、むしろやらない方がよいのではないでしょうか。

主語がない文は、書き手の主体がない文です。このような主語なし文は、自分と他人の区別があいまいなときに生まれます。

例えば、上記例文の「許されるでしょうか」という一文では、「誰が誰を許すのか」「筆者はなぜ、許さないのか」「我々ははなぜ、許さない、と思うべきなのか」といった事柄はわかりません。「小論文」を書くときはなるべく主語をあらわに書くようにしましょう。

書き直し例
 個人の人権を尊重する現代に、学校が服装や形式のことばかりを厳しく規制することは適切な対応でしょうか。
 たしかに、子どものころは親がしつけの一環として行うこともあるでしょう。しかし、ただ「ためにする」のであれば、むしろやらない方がよいのです。
 

  • 第四条 文と文をつなげる語句をなるべく使う

悪い例文
 生徒一人一人の気持ちを尊重することは大切である。学校ではそこまで保障する必要があるのだろうか。 学校は教育の場である。勉強を教えるのは当然だ。一定の社会のルールを教える必要がある。気持ちが尊重されないとしても、やむを得ない。

第二条で、なるべく接続助詞の「が」はつかうべきではない、と説明しました。その代わり、適切に使いこなすべきなのが、接続詞をはじめとする、文と文をつなげる語句なのです。

これらの語句を使用することによって、文と文の関係が明確になり、読み手に自分の主張が伝わりやすくなります。また、そうすることで、自分自身のいいたいことが、論理的に飛躍していないか、自分で確認することも出来ます。

書き直し例
 生徒一人一人の気持ちを尊重することは大切である。しかし、学校ではそこまで保障する必要があるのだろうか。
 たしかに、学校は教育の場である。勉強を教えるのは当然だ。そして、一定の社会のルールを教える必要がある。だから、気持ちが尊重されないとしても、やむを得ない。
 

  • 第五条 文末はできるだけ簡潔に

悪い例文
 筆者の言うことも、わからなくもない。たしかにその通りといえるだろう。
 私も同じ教育の現場に立つ者として、学校の「校則」と「個性」の問題には常々考えさせられないわけにはいかない。

文末はなるべく端的にいい切るようにしましょう。例えば次のようにです。

…この例は特殊であるとはいえない。

…この例は特殊ではない。

…この例は普通のことである。

このように、意識的に文末を簡潔にし、いいたいことを明確に表しましょう。ことに「論文型小論文」を書くときには、この原則は非常に重要になります。

書き直し例
 筆者の言うことも、理解できる。たしかにその通りだ。
 私も同じ教育の現場に立つ者として、学校の「校則」と「個性」の問題には常々考えさせられている。
 

  • 第六条 同じ概念は同じ語で表し続ける

悪い例文
 生徒と先生の間柄は、ある面においては対等である。それは、「自由に意見を言いあえること」ということである。
 教師は、子どもの言うことに耳を傾けなくてはならない。たとえ子どもであろうとも、意見はその生徒の個性の表れとも言えるからである。

概念(がいねん)というのは、あるものについてみんなが共通に持っている考えの集合体です。例えば、「犬」の概念は、「四本足で毛むくじゃらで、ワンワンと吠え、人なつっこい動物」といったものです。

そして、言葉が違えば、それが指し示す概念も変わるのが原則です。逆に、同じ概念は同じ言葉で表されるのが原則です。その原則に従えば、上記例文における「生徒」「子ども」、「教師」「先生」は、どれか一つの言葉に統一すべきです。

書き直し例
 生徒と教師の間柄は、ある面においては対等である。それは、「自由に意見を言いあえること」ということである。
 教師は、生徒の言うことに耳を傾けなくてはならない。たとえ生徒であろうとも、意見はその生徒の個性の表れとも言えるからである。
 

  • 第七条 「と思う」「と感じる」「と考える」はなるべく使わない

悪い例文
 私はこの人のいうとおりだと思います。
 私の高校生活も、校則に縛られたものだったと思います。そのときは、早くこんなところを卒業したいとばかり考えていました。そのことは、今でも間違っていなかったと思っています。

「小論文」、特に「論文型小論文」では、思った「内容」を書くべきで、“思った”という「事実」は書く必要はありません。“感じる”と“考える”も同様です。

ただし、「作文型小論文」ではこの限りではありません。文末の単調さを避けるためにも、適度に使用してください。でも使いすぎは逆に幼い印象を与えるので注意しましょう。

書き直し例
 筆者の言うとおりです。
 私の高校生活も、校則に縛られたものでした。そのときは、早くこんなところを卒業したいとばかり考えていました。そのことは、今でも変わっていません。
 

  • 第八条 一段落一義で適切に段落分けする

悪い例文
 筆者の言うことは納得がいかない。私の中学校の生活を思い出すと、服装が乱れていた人たちは、やはりいわゆる「不良」だった。高校でもそうだった。やはり、服装にはその人の心のようすが表れると思う。

第一条で述べましたが、文は「一文一義」が原則です。それと同じく、段落は「一段落一義」つまり、一つの段落で一つのことをいうのが原則です。特に「論文型小論文」の場合は、一段落がどんなに短くなっても、この原則を守るようにします。

しかし、この原則も「作文型小論文」のときは少しゆるめてもらってもかまいません。また、論文型小論文の時も、200字程度のごく短い文章の時は、段落をつける余裕がないので、この原則の適応外になります。

書き直し例
 筆者の言うことは納得がいかない。
 私の中学校の生活を思い出すと、服装が乱れていた人たちは、やはりいわゆる「不良」だった。高校でもそうだった。
 やはり、服装にはその人の心のようすが表れる。
 

  • 第九条 他者の文章は正確に引用する

悪い例文
 筆者は、服装の乱れについていちいち注意する人は結局、形式が守られることだけを求めていると書いている。そして、「日の丸」や「君が代」の問題も、結局は服装についての注意と同じで無意味であると書いている。

上記の例文は、投書を正確に引用していないため、ピントのずれた、投書の内容から離れた文章になっています。このような事態を避けるためにも、他者の文章は正確に引用しましょう。

引用を行うことで、(1)他者の意見と自分の意見をきちんと分けてとらえられ、(2)資料文から目が離れてしまうのを防ぐ、ことができます。

ですから設問に、「要約せよ」と書かれている場合をのぞき、資料文は正確に引用しましょう。

書き直し例
 筆者は、「だらしなくてもいいじゃない。気持ちの問題だと思う。」と述べている。また、「『日の丸』『君が代』法制化も、(中略)法制化しても形式的な要件が整うだけで、無意味なことと思う。」と述べている。
 

  • 第十条 他者の文章に対し、文章の内容を越えてその人の人格に言及してはならない

悪い例文
 この人は、「起立、礼」という挨拶を無意味であるように書いているが、きっと毎時間の授業のはじめとおわりには、必ず「起立、礼」をやらせているにちがいない。結局は口先だけできれい事を言っているだけで、「生徒の気持ちを尊重」などといいながら、注意するのがいやな臆病者なのだ。

「文は人なり」といいます。確かに文章を読むとその人の人柄や、性格などを感じることが出来ます。しかし、文は文であって、その人本人ではありません。人間は奥深いものです。一片の文章でその人を断定してはいけません。

それにその人の性格までを問題にしてしまっては、物事を正確に論じることが出来なくなってしまいます。他者の意見を論ずるときは、文の内容に限定して論じましょう。

書き直し例
 筆者は、形式的なことの例として、「起立、礼」を挙げている。しかし、果たして筆者は、毎回気持ちのこもった「起立、礼」をさせているのだろうか。または、形式だけならばいらないと、廃止しているのだろうか。
形式だけのことを問題視するのであれば、まず自らの行動が伴わなくてはならない。筆者はまず、自らの行動を書いて報告すべきだ。

以上が、わかりやすい文章を書くための十ヵ条です。自分がどんなことに気をつけて文章を書いたらよいか、おわかりいただけましたでしょうか?

わかりやすい文章を書くための十ヶ条

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4-3:小論文のための日頃のトレーニング

情報のインプット(入力)、アレンジメント(整理)、アウトプット(出力)が日頃のトレーニングの三本柱!

「小論文」入試のために日頃はどんな勉強をしたらよいでしょうか?
「小論文」の日頃の勉強は、以下の3つの柱から成り立っています。

  1. 情報のインプット(入力)
  2. 情報のアレンジメント(整理)
  3. 情報のアウトプット(出力)

つまり、

  1. 小論文の内容となる情報を収集し、
  2. それを自分の知識として使えるよう整理し、
  3. 整理した自分の知識を使って、要求にあわせて自分の意見を表現すること

が、小論文の日頃のトレーニングなのです。

毎日新鮮な「ネタ」を仕入れ、それをいつでも使えるように下ごしらえし、客の好みに合わせて出す…、小論文の日頃のトレーニングはお寿司屋さんの仕事に似ています。

しかし、小論文のトレーニングがお寿司屋さんの仕事と違う点は、この三本柱が、別々に存在しているのではなく、密接に関係している、という点です。

つまり、この柱のどれか一つを行おうとすると、同時に他の柱の訓練もすることになる、ということなのです。

たとえば、インプットとアレンジメントは同時に進むことが多いですし、アレンジメントの過程で自分の意見を言葉にしようとすることは、アウトプットの練習になっています。アウトプットの過程で必要な情報をインプットしたり、それについてアレンジメントをおこなったりすることはよくあることです。

ですから、あなたは、この三本の柱を順番どおり、一つずつ行おうとする必要はありません。次の頁から紹介するトレーニングの具体的な方法を読んだなら、あなたは、できるところからどんどんトレーニングを始めてみて下さい。

情報のインプット(入力)

書くためには「ネタ」が必要。そのためにはあらゆる手段で情報をインプットし、新鮮な「ネタ」を多くたくわえよう!

「小論文」を書くためには、最初に「ネタ」となる情報を「インプット」しなければなりません。そして、情報のインプットのための代表的な方法は以下の4つです。

  1. 本を読む
  2. 新聞・雑誌を読む
  3. インターネットで情報を得る。
  4. いろいろな社会的経験を積む

なにをいまさら、と思われるかもしれません。しかし、これらの方法は本当に大事なのです。以下、私なりのアレンジを加えて一つずつ説明します。

(1)本を読む
情報をインプットするための一番オーソドックスな方法は、いろいろな本を読むことです。”小論文を書く”という視点から見た場合、本を読むことの利点には以下の4点があります。

  • 小論文の「ネタ」となる知識を得ることができる。
  • 小論文で使用されることの多い、抽象的なことばを覚えられる。
  • 良い文体の本を読むことで、自分が小論文を書くときの文体のお手本を得ることができる。
  • 何度も繰り返して読むことができ、本に書かれている内容に関してじっくり考えることができる。

ですから、とりあえず、志望領域に関係する本は、最低10冊は読んでおくことをお勧めします。専門書でなくてもかまいません。最近は新書のシリーズが数多く出版されていますので、志望領域で現在起こっている問題点をそれらの本で確認しておきましょう。

その時、注意すべきなのは、かならず異なった意見を主張している複数の本を読む、ということです。主張の異なる複数の本を読むことによって、一つの問題を、さまざまな角度で考えることができます。そしてその過程で自分の意見を作り上げることができるのです。

(2)新聞・雑誌を読む
情報をインプットするための第2の方法は、新聞を読むことです。小論文入試に出題されるテーマは、意外と時事ネタが多いものです。

いずれにしろ、どのような事件であれ、それがどんな事件だったかを知らなければ話しになりません。ですから、新聞には毎日目を通すようにしましょう。

さて、毎日、新聞を読むことにして、では、どの新聞を読んだらよいでしょうか。それに関しては、一応このように覚えておいてください。

  • 大学入試用なら「朝日」
  • 就職試験用なら「日経」

大学入試に出題される新聞記事は、圧倒的に朝日新聞から引用されています。ですので、まず一紙めは「朝日」、そして対立する意見を知るために二紙めを「讀賣」にしましょう。そうすることで一つの事件に対する異なった意見を知ることができます。

また、就職試験用にはやはり「日経」(日本経済新聞)を読んでおくことをおすすめします。採用担当官が読んでいる新聞のトップがやはり「日経」でした。敵を知るためにも、「日経」を読むことをおすすめします。

しかし、新聞を理解するためには、ある程度の基礎知識が必要となります。それら基礎知識がない場合は、新聞は読んでも理解できません。

そのような場合は、雑誌の特集記事を読むことをおすすめします。「アエラ」や「Yomiuri Weekly」「ニューズウィーク日本語版」などを、立ち読みでもかまいませんので、一通り目を通しておくと良いでしょう。
この場合も、複数の雑誌に目を通すのがポイントです。

(3)インターネットで情報を得る。
志望する領域に関する情報や、小論文の資料文に関する情報をインターネットで収集するという方法も非常に有効です。代表的な方法は以下の3つです。

  • Yahoo!Japanなどの検索エンジンを利用する
  • 掲示板・メーリングリストなどに参加する
  • 新聞記事のクリッピングサービスを利用する

とりあえず、わからないことがあったら検索エンジンにキーワードを入れて検索してみましょう。たいがいのことに関しては、必要十分な情報が得られるはずです。

そして、ある特定のトピックを深く知りたいときは、掲示板やメーリングリストに参加するのも有効です。

また、各新聞社では、登録メンバーに、その人の興味ある記事だけを配送してくれる新聞記事のクリッピングサービスを行っているものもあります。特定領域に関する記事を網羅して読みたい人にはお勧めです。

(4)いろいろな社会的経験を積む
(1)から(3)まで、すべて言葉を使って間接的に情報を得る方法を述べてきました。しかし、直接的に自分の体で得た情報はなんといっても一番説得力があります。

いろいろなことを経験しましょう。その経験が他人の文章の理解を助け、自分の小論文の説得力を高める、最高の「ネタ」を提供してくれます。「経験」は「言葉」より広く、深いのです。いろいろな経験をしましょう。

情報のアレンジメント(整理)

「情報のアレンジメント」とは、入力した情報を整理して、「自分の意見」を作り上げること! キーワードは「つっこみ」です。

情報をインプットしたら、次はアレンジメント(整理)です。そして情報のアレンジメントにおいて大切なのは、技術ではなく態度です。その態度とは、

すべてのことに”つっこみ”を入れようとする

態度です。

なぜ、つっこみを入れることが情報のアレンジメントにつながるのでしょうか?

それは、つっこみを入れるということが、相手の意見に対して異論を唱えることだからです。そして、異論を唱えるということは、まさに相手の意見とは違う「自分の意見」をいうことなのです。

論文型小論文の基本の型の説明で述べましたが、自分の意見は、他人の意見との違いを考えることで生まれます。そのためには他人の意見を鋭く疑い、どこかおかしなところがあるのではないか?もっと違う見方があるのではないか?と何ごとにも”つっこみ”を入れる気持ちで接する必要があるのです。

そして、そういう態度で接することが、じつは一番誠実に相手の考えを理解しようとする態度なのです。

しかし、ただ漫然と”つっこもう”と心がけているだけでは、なかなかつっこめません。具体的なつっこむ相手とつっこむ方法が必要です。以下に代表的なつっこむべき相手とそれらにどのようにつっこむかを説明します。以下の4つです。

  • 文章をつっこみを入れながら読む
  • 気に入らない相手につっこみを入れる(心の中で)
  • 友達とつっこみを入れあいながら議論する
  • 自分の常識につっこみを入れる

以下、詳しく説明します。

(1)文章をつっこみを入れながら読む
われわれには、活字で書かれた文章は、つい信じてしまう、という癖があります。とくに新聞や教科書など、エラそうにしている文章に対してはなおさらです。

ですから、文章を読むときには、常に「ほんまかいな?」「うそちゃうか?」とつっこみを入れながら(別に関西弁でなくてもいいですが…)読むようにしましょう。

たとえば「健全な肉体に健全な精神はやどる」という文を見たとき、私の中には「健全な精神って何?誰が決めるの?」「肉体的に障害を持った人には健全な精神が宿らないの?」といったつっこみが生まれてきます。そして、このつっこみを、他人にもわかるように「根拠」を挙げながら丁寧に説明すると、新たな自分自身の「理論」ができあがるのです。たったいまから、すべての文章(この本の文章も例外ではありません)につっこみを入れながら読むようにしましょう。

(2)気に入らない相手につっこみを入れる(心の中で)
「いやな親」「いやな教師」「いやな友達」などなど、世の中には「いやなヤツ」がいっぱいです。でもなぜ、そいつはそんなに「いやなヤツ」なのでしょう。それはそいつが持っている考えと、自分の持っている考えがことごとく対立しているからなのです。

しかし、そんな「いやなヤツ」に「言葉」で反論しようとすることも、小論文のよい訓練です。 別に面と向かっていう必要はありません(いってもいいですが責任は持ちません)。「いやなヤツ」と意見の上で衝突したときは、反論をきちんと構築してみましょう。

「ムカツク!」と思ったら、「ムカツク!」といって終わりにするのではなく、「なぜムカツクのか」「相手を打ち負かし、スカッとするにはどういい返したらよいのか」等を冷静に考えます。できれば文章にするとなおさら良いでしょう。きっとその文章を書き終える頃にはムカツキもとれ、スッキリとした気分になり、おまけに小論文の力も付いているはずです。まさに一石三鳥の方法といえるでしょう。

(3)友達とつっこみを入れあいながら議論する
友達と共同で何かをするときは、つっこみを入れあいながら、なるべく「よりよい方法」を見つけ出すよう議論しましょう。「旅行の計画」や、「部活動など組織の運営方法」、「夕飯に何を食うか」など、何でもかまいません。意見をいい合い、意見が食い違ったときは、対立を恐れずに、言葉を尽くして議論しましょう。

この方法は、小論文でいえば、「部分否定」の「判断」や、よりよい「提案」を生み出すための訓練といえます。

基本的には相手の立場を認めつつ、自分の意見を「たしかに…だが、しかし…ではないか」という形で主張します。まさに小論文の「部分否定」の定型で自分の意見を述べていくのです。そうやってお互いの意見をやり取りする過程で、お互いの意見の対立を解消する、より良い第三の意見を見つけ出せれば、こんなに良いことはありません。

(4)自分の常識につっこみを入れる
もっとも頑固で、一番つっこむのが難しいのは、なにあろう「自分の常識」です。

疑う余地がないと思われる、自分にとっての「当たり前」をこそ疑いましょう。そして、他の人にとっての「当たり前」のほうが、じつは本当の「当たり前」なのではないか、と一度は自分に問うてみることです。

たとえば、新聞の投書の意見に対して「そのとおり!」「つっこむところなし!」と思うことがあるかも知れません。しかしそんなときこそ、立ち止まって考えて欲しいのです。そこに書かれていたことは、真実なのではなく、もしかしたら自分の「常識」と同質なだけかも知れないのです。別な考え方がないかどうか、もしかしたら別な「常識」のほうが正しいのではないか、と一度自分に問うてみてください。

情報のアウトプット(出力)

基礎訓練をしたら、とにかく書いて慣れること!書き直しと他の人に見てもらうことも忘れずに。

インプットとアレンジメントが終われば、あとは、アウトプット、つまり書くことだけです。アウトプットで重要なのは、「とにかく書くこと」そして「信頼のおける指導者に添削してもらうこと」さらに「納得がいくまで書き直すこと」です。 しかし、すぐに小論文の問題に取りかかるのには抵抗がある、という人もいるでしょう。また、もう少し基礎訓練をしてから問題に取り組みたい、という人もいるかもしれません。そのような人には、以下のような基礎訓練をお薦めします。

  1. 新聞の投書や、コラムなどを視写する。
  2. 視写した記事を要約してみる
  3. 視写した記事について論文を書いてみる。

以下、詳しく説明します。

(1)新聞の投書や、コラムなどを視写する。
「視写」というのは、新聞記事などを、一字一句違わず「視ながら」「写す」ことです。「えっ、ただ視ながら写すだけ?」と思われるかも知れませんが、じつは、この方法は小論文の訓練という観点からみると、以下の二つの点で非常に有効な手段なのです。

  • 記事の内容を注意深く読むことができる。
  • 自分が小論文を書くときのリズムや感覚がつかめる

1は、読解力の養成という点から見た利点です。他人の文章を視ながら写すことで、その人がどのようなつもりで、その文章を書いたのかがわかるようになります。なぜここでこの言葉を使うのか、なぜここに読点をおくのか、この事例は何のために書かれているのか、などその文章を書いた人になったつもりで、注意深く読むことで、その文章の内容を深く理解できるようになります。

2は実際に小論文を書くという点から見た利点です。投書は原稿用紙1.5~3枚の長さです。これらの長さはほぼ、標準的な小論文の制限字数と同じです。ですから、この分量の文章を視写することは、実際に自分が小論文を書くときの予行演習にもなるのです。

この方法の良い点は、「小論文を勉強するのだぞ」という構え無しに、小論文を勉強することができることです。小論文の基礎訓練は、新聞記事の視写から始めてみましょう。

(2)視写した記事を要約してみる
読解力に自信のない人、過去問で要約を求められることがわかっている人は、視写した記事を要約してみましょう。

要約は、文章の大意をつかむ良い訓練です。長い文章のどこが大事で、どこが大事でないかを見極めることは、そのまま読解力の向上につながります。論文型小論文の説明で、「要約はなるべく避けて引用をすること」と説明しましたが、読解力アップのために、基礎訓練ではどんどん要約をしてみましょう。

その際、注意すべきことは、いろいろな文字数で要約を作成してみるということです。私は200字、100字、50字、20字、の要約を作らせるようにしています。異なった文字数で要約を作ることで、どのくらいの文字数で、どの程度書けるかがわかり、本番でも文字数が足らなくなったり、逆にあまったりということがなくなります。

(3)視写した記事について論文を書いてみる。
せっかく視写をして、注意深く文章を読みとったのですから、次の段階として、視写した文章について、小論文を書いてみましょう。つまり、視写した文章が小論文入試で出題されたと仮定して、その文章に関して小論文を書いてみるのです。

あなたは視写した段階で、すでに矛盾点や問題点を探しながら文章を読んでいます。ですからそれら視写した時に見つけた矛盾点や問題点を「引用」し、それに対して「問題提起」して「判断」を下し、「根拠」を挙げて、自分の論文を書いていくのです。

この論文で合否が判定されるわけではありません。投書の場合、相手も素人です。投書の主と議論するつもりで気楽に書きましょう。そうするうちに自然と論文型小論文の型にはまった、論文が書けるようになります。

さて、基礎訓練が終われば、あとは実戦形式で小論文の過去問を練習するだけです。書いて書いて書きまくりましょう。その際は、以下の三点に気をつけてください。

(4)ネタの転用を練習しよう
いくら周到に情報をインプットし、アレンジメントをしていても、すべての小論文に別々の「ネタ」を用意するわけには行きません。また、その必要もありません。なぜなら、おなじ「ネタ」を使い回せばいいからです。この「ネタ」の使い回しを、「ネタの転用」といいます。

このように、論文を書くことに慣れてきたら、自分の得意ネタをさまざまな課題に使い回す訓練をしてみて下さい。

(5)他人に自分の小論文を読んでもらおう
情報のアウトプットにおいて、実際に書くことと同じくらい大事なことに、書いたものを他の人に見てもらうというのがあります。

練習の論文を書き上げたら周りにいる人に読んでもらいましょう。自分では十分わかりやすく書いたつもりでも、他人の目で見ると、わかりずらいということはよくあることです。

じつは、この本を書いている私自身も、書きかけの原稿をまわりの友人たちに読んでもらい、コメントをもらいながらこの本を執筆しました。あなたも論文を書き上げたら、まわりの人に見てもらいコメントをもらいましょう。もし、まわりに適当な人がいない場合は、通信添削講座という手もあります。

(6)納得がいくまで書き直そう
小論文の実力は、書き直しの際に養われます。前回の答案の問題点を反省し、どこを直せばよりわかりやすくなるか、どのように論を展開すればより説得力が増すか、などを考えながら、納得がいくまで、何回も書き直しましょう。

また、これも信頼の置ける指導者に見てもらうことが肝心です。指導者が学校の先生の場合は、たとえいやがられても何回も書き直しの答案を持っていくようにしましょう。また、指導を受けているのが、通信添削の講座であれば、書き直しの制度のない通信添削は、受講する価値がありません。かならず、書き直しの制度のある通信添削講座を受講するようにしましょう。

家で小論文の問題に挑戦するときの注意点

初回は制限時間を守って、書き直しはじっくり時間をかける。かならず手書きで練習しよう!

「小論文」を自宅で書く場合、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?

「小論文」を自宅で書く場合に最も気をつけなければならないことは、

初回は制限時間を守って、書き直しはじっくり時間をかけて

ということです。

実際の小論文入試に制限時間がある以上、ある程度の時間内で小論文を書けるようにする訓練は必要不可欠です。ですから最初に小論文の問題に挑戦するときは、なるべく制限時間を守って書いてください。最初はなかなか制限時間内では書けないかも知れませんが、何回も繰り返すうちに感覚がつかめてきます。

そして、この最初の演習を繰り返す中で、自分なりの時間配分をつかんでください。特に自分が物理的に制限字数を埋めるのに何わかかるかはかならず把握しましょう。

反対に書き直しの時は、あせってはいけません。じっくり時間をかけて、構成の洗練、内容の吟味、推敲による文章のレベルアップに時間をかけてください。場合によっては途中で関連書籍を読んだり、インターネットで情報を集めたりしながら、ゆっくり執筆してくれてもかまいません。初回の執筆が実戦演習だとすれば、書き直しは実力アップのための実力養成訓練だと思ってください。

また、ふだんパソコン等を使って文章を書いている人も、小論文の練習のときは、

かならず手書きで練習

しましょう。

現在、試験場でパソコンをつかって小論文を書かせてくれる学校や会社はありません(将来はわかりませんが)。ですからかならず手書きで練習し、自分の手で文章を書くことになれておきましょう。

さて、これで小論文Web講座は閉講です。ここまで読んでくださった方、ほんとうにおつかれさまでした。

この講座で学んだことを、ぜひ実践に生かしてください。また、そのお手伝いをさせていただければ、とってもうれしいです。