投稿者「石井 秀明」のアーカイブ

1-1:小論文と作文の違いはいったいなんだろう?

「作文」も「論文」も自己表現の一種。「私」を直接的に書くのか、間接的に書くのかが一番の違い。

作文と論文はどのように違うのか? この問題は、いままでいろいろな本で、いろいろに言われてきました。しかし、大事なことを忘れてはいけません。それは、作文も論文も自己表現の一種であるということです。

「自己表現」などといわれると、何やら頭の中が「???」となってしまいそうですが、つまり、作文も論文も自分の経験や考えを他人に伝えるために書くのだということです。その意味で作文も論文も「私」のことを書くものだと言うことができます。

ズバリ 作文と小論文の違いはココ!

でも、あなたもお気づきのように「作文」と「論文」には明らかな違いがあります。その違いはどこから来るのでしょうか。それは、同じ「自分」に関する表現でも、その表現方法が違うことからくるのです。

ここではひとまず、「作文」と「論文」を、以下のように定義しています。

  • 作文…「自分」のことを直接書く文章
  • 論文…「自分」のことを直接書かない文章

以下、くわしく説明します。

作文…「自分」のことを直接書く文章

作文とは、簡単にいってしまえば、自分の経験を中心に、感じたことや考えたことを書く文章です。もう少しきちんと定義すると以下のようになります。

作文のくわしい定義:
「自分自身の《経験》に基づき、その《経験》に対する《分析》や《感想》を述べる文章」

ある経験を通して考えたこと、感じたことを述べることによって、自分を知ってもらうための文章。つまり、どのような形にせよ、「作文」はあなたという人がどんな人なのかを語る文章なのです。

それでは以下に、試験という観点から見た「作文」の特徴を挙げましょう。

  • 自分の経験を中心に構成される
  • 人柄や感性を評価するのに適している。
  • 論理的整合性より話の内容の方が重視される。
  • ある程度の文学的表現も許される。
  • ある程度の主観的判断も許される

論文…「自分」のことを直接書かない文章

論文とは、簡単にいってしまえば、ある意見に対して自分の判断を下し、その判断がなぜ正しいのかを根拠を挙げて述べる文章です。もう少しきちんと定義すると以下のようになります。

論文のくわしい定義:
「与えられている事実・意見の《引用》に基づき、その事実・意見に対する自分の《判断》の正当性を《根拠》を挙げて主張する文章」

「論文」は客観的である必要があります。そのためには「自分」が前面に出る主観的な文章(~が好き、~が嫌い、~を信じる等)は書くべきではありません。
また論文は一定の手続きに従って書く必要があります(それが《引用》《判断》《根拠》です。後ほど説明します)。この手続き自体には個性は反映されません。しかし、どのような内容の《引用》《判断》《根拠》を行うかには、その人の個性が反映されます。つまり、同じ手続きにどのような内容を盛り込むかによって、間接的に「自分」を表現するのが「論文」といえるのです。

それでは以下に、試験という観点から見た「論文」の特徴を挙げましょう。

  • 社会的事象を中心に構成される
  • 論理的思考力や知識量などを評価するのに適している
  • 話の内容よりも論理的思考力・表現力が重視される
  • 文学的表現は嫌われる
  • 客観的判断が最優先、根拠を持たない主観的判断は許されない。

さあ、これで「作文」と「論文」の違いがわかりましたね。それでは、「小論文」とはどんな文章なのでしょうか?


1-2:「小論文」において一番大切なことはこれ!

自分を受からせてくれ!というメッセージを持たない小論文は小論文ではない。最大限に自分をアピールせよ。

字の通り解釈すれば、「小論文」とは、「小さな論文」のことです。しかし、入学試験や就職試験では、つねに「小さな論文」を書けばいいというわけではありません。

 「小論文」とはあくまでも試験科目の名前です。

確かに「小論文」の試験で、文字通り「小さな論文」を書かされることもあります。しかし、実際は「小論文」の名の下に「作文」を書かされたり、「要約」を作らされたり、はては大学入試の場合は、「国語」や「英語」の問題を解かされたりすることも多いのです。
また、試験科目としての「作文」についても同じことがいえます。特に就職試験の場合、「作文」の名の下に「論文」を書かされたり、時には「ショートショート」を書かされたりもするのです。

結局、「小論文」あるいは「作文」という試験科目の名の下に、どんな文章を書いたらよいのかは、過去問を分析し、実際の設問に接してみなければわかりません。
ですから、試験科目の名前としての「小論文」「作文」という言葉には、こだわらないようにしましょう。

とりあえずここでは、試験のために書く作文、論文を一括して「小論文」として扱うことにします。また、本来の意味での作文を書くべき試験問題は「作文型小論文」、本来の意味での論文を書くべき試験問題は「論文型小論文」と呼ぶことにします。

ズバリ! 小論文で一番伝えるべきことは

さて、「小論文」の定義はこのくらいにして、それよりもっと大事なことをお話ししましょう。
それは「小論文」は何のために書くのか? いい換えれば受験生は「小論文」で何を試験官に伝えればよいのか?ということです。

あなたはなぜ、「小論文」を書くのでしょう? 当然、試験に合格するためですね。では、合格するためには「小論文」で相手に何を伝えればよいのでしょう? 答えはいたってシンプルです。

私は志望する会社/学校にとって有益な人材であり、採用される/合格するべき人物である。

この一点を試験官に伝えられれば良いのです。また逆にいえば、このメッセージを持たない「小論文」は書くだけ無駄というものです。

入学試験、就職試験ともに、志望先へのプレゼンテーション(自分の売り込み)であることに変わりはありません。「自分はこの会社にとって、こんなに利益をもたらす存在ですよ」「私は将来、この学校の評判を上げる可能性のある優秀な学生ですよ」「小論文」の答案であなたが伝えるべきメッセージはこれだけなのです。

では、試験官に「有益な人材」と思わせ、「採用」したい「合格」させたいと思わせる「小論文」の答案とはどのような答案なのでしょうか。いい換えれば、高い評価が得られる“良い”「小論文」の答案とはどのような答案なのでしょうか。

それではここで、あなたに質問です。試験官に高く評価される“良い”「小論文」の答案とはどのような答案でしょうか?


1-3:高く評価される“良い”「小論文」の答案とは?

いつでも、どこでも、だれにでも通用する“良い”答案などない。試験官の要求にきちんと応えた答案が“良い”答案!

いろいろな本が“良い”「小論文」の答案を定義しています。いくつか拾ってみましょう。

  • あなたという人柄がよく伝わる答案
  • 自分の意見を論理的に筋道を立てて明確に表現した答案
  • 読みやすくて人を引きつける答案
  • なるべく常識から離れた突飛な内容の答案

たしかにこれらの“良い”「小論文」の答案の定義は、ある特定の状況下では有効です。
しかし、これらの定義にかなった“良い”答案が、いつでも“良い”答案であるわけではありません。なぜなら試験問題によって、あるいは試験官によって、“良い”答案は大きく違うからです。
例えば、試験官が、受験生の論理的思考力を見るために「論文」を書くことを要求している時にに、いくら「作文」的に感動できる“いい話”を書いても“良い”答案にはなりません。
また、反対に、受験生の人柄を見るために「作文」を要求しているのに、“理路整然とした”「論文」を書いても“良い”答案にはなりません。
じつは、あなたがめざすべき“良い”答案はただ一つです。それは、

試験官が読んで面白いと感じ、この人をぜひ採用したい、合格させたい、と思わせる答案

です。それを忘れないでください。


2-1:内容から見た小論文の種類

二大柱は「作文型小論文」と「論文型小論文」。この二つを押さえるところからすべては始まる。

次に知っておくべきことは、自分がどのような小論文を書いたらよいか、ということです。

なお、ここから先は、できれば、自分の志望する学校や会社の過去問を手に入れてから読むようにしてください。過去問を分析しながら以下の部分を読むことで、自分が書くべき小論文の種類がわかります。

まず最初は、書くべき内容による小論文の型を説明します。(カッコ内は入学試験・就職試験どちらに出題されるかを表します)

(1)作文型小論文(入試・就職)

本来の意味での「作文」を書くべき試験問題。
主に、受験生の人柄や性格を見るのに使われる。
入学試験における推薦入試の問題や人柄的な学部適性を見る問題、就職試験における志望動機を問う問題や熱意を計る問題に多く使われ、受験生がどういう人間なのかを見るために使われることが多い。

〈評価の観点〉

  • 人柄
  • 性格
  • 態度
  • 熱意
  • 基本的な読み書き能力
  • 人生観・発想力

〈出題例〉

  • 自分の出会った最も感動的で興味深いできごと(武蔵野美術大学造形学部映像学科、1998年度)
  • 「私がかいた赤っ恥」(北海道放送、2000年度)
  • 「私の人生設計」(慶應義塾大学医学部、1998年度)
  • 「21世紀の私は」(世界文化社、1999年度)
  • 「普通」(日本大学芸術学部放送学科、1998年度)
  • 「私の職業観」(日本オリベッティ)

(2)論文型小論文(入試・就職)

本来の意味での「論文」を書くべき試験問題。受験生の論理的記述力を見る目的で使われ、文字通り「論文」を書かなければならない。あらゆる入試で使用され、幅広い知識と正確な文章表現を要求される。

〈評価の観点〉

  • 資料文や図表の読みとり能力
  • 論理的思考力
  • 社会常識
  • 時事問題に対する感受性
  • 論理的な文章を書く能力
  • 自分の意見を構築する能力

〈出題例〉

  • 「マスコミと暴力」(江戸川大学社会学部マス・コミュニケーション、2001年度)
  • 今後の自動車産業への提言(日産自動車)
  • 劇場のパフォーマンスという観点から「いじめ」の構造を分析した文章を読み、要旨をまとめた上で、様々なタイプのある「いじめ」を、具体例を挙げながら分析する。(京都大学教育学部教育科学科、1999年度)
  • 誤報であった松本サリン事件での報道のあり方をめぐって書かれた文章を読み、犯罪報道において実名を出すことの是非を論じる。(熊本大学法学部、1998年度)
  • 放射能汚染されたチェルノブイリに生きる人びとを描いた文章Aと、失われゆくアイヌ世界を描いた文章Bとを読み、両者をふまえてテーマを設定し、タイトルをつけ、それについて自分の考えを論述する。(立教大学文学部B方式、2000年度)
  • 「あなたは、21世紀の日本は、どのような国であってほしいと思いますか。次の中から、3つまであげてください」という質問をした世論調査の回答結果のグラフを読み、その結果について論述し、次に自分の考えを論述する。(富山大学教育学部生涯-人間環境、2001年度)
  • 与えられたモチーフで自分をモデルとして撮影し、その写真作品の意図を文章で表現する。(東京工芸大学芸術学部写真学科、2001年度)

(3)随筆型小論文(入試)

「作文型小論文」と「論文型小論文」の中間に位置する小論文。個人的な経験と社会的事実を関連づけて述べる小論文で、人文系や芸術系の問題、国公立大学の後期試験などにこの種の論文が多い。早稲田大学の一文・二文はこの種の問題の典型。論理的記述力に加え、文学的な発想も必要とされるため、ある意味ではもっとも難しい問題。

〈評価の観点〉

  • 資料文や図表の読みとり能力
  • 資料文や社会的事象から問題を発見する能力
  • 社会常識
  • 時事問題に対する感受性
  • ある程度文学的で抽象的な文章を書く能力
  • 自分の経験を社会的事象と結びつける能力・読者を引きつける構成力など

〈出題例〉

  • ある父親が大学生のわが子に「若い君に、いまだ固まらない熱い岸辺[アジア]を歩くことを、私はすすめたい」とメッセージを送る手紙を読んで、この手紙に答えるかたちで返信を書く。(早稲田大学第一文学部、1996年度)

(4)創作型小論文(入試・就職)

与えられた課題(文章・写真・絵など)に関して、小説や、戯曲、キャッチコピーなどを作成する問題。おもに発想力を見るのに使われる。広告業界やマスコミなど独創的な発想が要求される部署の就職試験や、日大の芸術学部等、芸術系の大学などで出題される。

〈評価の観点〉

  • 柔軟な思考力
  • ユニークな発想力
  • 文学的文章力
  • 企画力など

〈出題例〉

  • 「コンピューター・再生紙・盆踊り」のうち二つを使って物語を論述する。(日本大学芸術学部演劇学科、1999年度)
  • 「一瞬の……」ということばを使って作文を書く。(日本大学芸術学部放送学科、2001年度)
  • ユニークな写真を題材にショートストーリーを作成(集英社、2000年度)
  • 「離婚・ガーデニング・食べ放題」(小学館、1999年度)
  • 「殺人・祈り・手紙」(日本大学芸術学部文芸学科、2001年度)
  • 「流転・フィルター・爛熟」(学習研究社)

(5)その他の小論文

現代文型(入試)
「小論文」とは名ばかりの、どちらかといえば「現代文」の問題に近い問題。大学等の入学試験に出題される。漢字の読み書きや空所補充、要約、表題付けなど、まとまった分量の文章を書かせる問題ではない。受験生は「小論文」の問題を解く、と考えるよりも「現代文」の問題を解く、と思った方がよい。

理系教科型(入試)
「現代文型」と同様、「小論文」とは名ばかりの問題。受験生は「小論文」の問題を解く、と考えるよりも「理科」あるいは「数学」の問題を解くと思った方がよい。

総合問題型(入試)
小論文を書くのに、その領域の専門知識がないと論述できないような問題。まず、その専門知識に関する普通の問題を解いて、その答えを元に論述する形の問題である。


2-2:形式から見た小論文の「型」

「テーマ型」は就職試験の主流派。「資料読みとり型」は大学入試の主流派。過去問を分析して正しい対策を!

「小論文」の問題は出題される問題の形式によっても分類されます。形式によって注意すべき点は変わるので自分の書く「小論文」がどのパターンになるのかは必ず調べておきましょう。(カッコ内は頻出の小論文の型)

(1)テーマ型(作文・論文・創作)

「私の愛読書」「眼」「脳死について思うところを書け」など、書くべきテーマだけが与えられて、それについて自由に論ずる問題。以前は入学試験、就職試験双方ともこのタイプの小論文が多かった。現在も就職試験はこのタイプが主流。しかし、大学入試に関しては、高校生には書くべき内容が限定できず、あまりにも難しいため、最近は減少傾向にある。

〈必要とされる訓練〉

  • 作文型小論文の場合は、基本の型をマスターした上で過去問に形式にあわせた訓練をする。(【作文型小論文をどう書くか】)
  • 論文型小論文の場合は、社会的知識をたくわえ、基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。(【論文型小論文をどう書くか】)

(2)資料読みとり型(作文・論文)

設問として資料文が提示され、それについて論ぜよ。と要求される問題。最近の入学試験はこちらが主流。考える素材があらかじめ与えられているのでテーマ型よりは比較的容易に書くことができる。ただし、資料文の内容を的確に把握し、それに基づいて自分の主張を組み立てなければならないので、「書く」より前に「読む」能力が必要とされる。

〈必要とされる訓練〉

  • 読解力を高めるために、視写や要約の作成をする。
  • 作文型小論文の場合は、基本の型をマスターした上で過去問に形式にあわせた訓練をする。。(【作文型小論文をどう書くか】)
  • 論文型小論文の場合は、資料文を注意深く読み、基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする(【論文型小論文をどう書くか】)

(3)図表読みとり型(論文、まれに作文)

資料文と一緒に、あるいは単独で図表を提示し、そこから読みとれることをもとにして書かせる問題。図表の読みとり能力が問われる。おもに入学試験で出題される。工学部・医学部・経済学部・教育学部など、図表の読みとり能力がその後の学部での研究に要求される学部に多い。ただし、図表が示している事実を読みとれれば、あとは、資料読みとり型と同じようにして書けばいいので、資料読みとり型の特殊なパターンとして訓練すればよい。

〈必要とされる訓練〉

  • 図表が主張していることを読みとるために、図表の説明文や、問題点のリストなどを作成する。
  • 論文型小論文の場合は、「引用」部分に図表から読みとったことを書き、あとは基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。(【論文型小論文をどう書くか】)

(4)写真・ビジュアル読みとり型(論文・創作)

写真や絵画など、ビジュアルに訴えるものを見せ、それについて、考えたことや感じたことを書かせる問題。おもに入学試験で出題される。ビジュアル的に提示されたものを、いかに言語化するかがポイント。いったん読みとったことを言語化できれば、あとは資料読みとり型と同じように書けばよい。

〈必要とされる訓練〉

  • 写真や図版から読みとれることを言葉にするために、写真の説明文や、そこから想像したストーリーなどを書いてみる。
  • 論文型小論文の場合は、「引用」部分に写真などから読みとったことを書き、あとは基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。(【論文型小論文をどう書くか】)

(5)複数資料読みとり型(論文)

資料文と図表、あるいは対立する意見を含む複数の資料文が与えられ、それについて論述する問題。おもに入学試験で出題される。慶應義塾大学などはこのタイプの問題の最難関。資料間の意見の対立点を整理し、それについて自分の意見を述べてゆく。資料読みとり型の変形。まず、資料読みとり型をマスターし、その上で資料間の意見の対立点を整理する訓練をすると良い。

〈必要とされる訓練

  • 複数の資料から問題を読みとり、共通点、対立点などを整理する。さらにそれを文章と表の両方で表現してみる。
  • 論文型小論文の場合は、「引用」部分に読みとった問題点を書き、あとは基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする。(【論文型小論文をどう書くか】)

(6)英文読みとり型(論文)

資料文が英文で提示される問題。入学試験、特に医学部・工学部系に多い。日本語の記述力とともに英語の読解力を評価しようとする問題だが、小論文の書き方としては、資料読みとり型と同じなので、受験生は英語力を高める以外、「小論文」の勉強としては特に新たに勉強する必要はない。

〈必要とされる訓練〉

  • 英文の読解能力を上げる。
  • 論文型小論文の場合は、「引用」部分に読みとった問題点を書き、あとは基本の型にそって書く訓練をする。その後、過去問の形式に沿って実戦的な訓練をする(【論文型小論文をどう書くか】)。資料文が英文になっただけであり、小論文の書き方としては日本語のときとまったく同じである。

(7)三題噺型(創作)

創作型の一種。「どらえもん・石油ショック・花束」など一見関係のなさそうな単語を三つ挙げ、それらを元にストーリーなどを考えさせる問題。マスコミ等の就職試験におもに出題される。入学試験ではごく少数派。

〈必要とされる訓練〉

  • 落語等を聞いて、三題噺の典型例を学ぶ。
  • 星新一や阿刀田高などのショートショートを読み、読者を引きつける文体を学ぶ。
  • 過去問や過去問の傾向とあった予想問題に挑戦する。

さて、これであなたが書くべき小論文の種類はつかめたでしょうか?では、質問です。

質問:あなたが書くべき小論文はどのような種類の小論文ですか?過去問等を調べ、以下の空欄に書き込む形で答えてください。また、主に評価される点、これから自分で訓練するべきことも書いてください。

  • 内容による型 型小論文
  • 形式による型 型小論文
  • 主に評価される点
  • これから訓練しなければならないこと

また、ここで述べた「必要な訓練」にはすべて次の二つの訓練が付け加えられます。その二つとは、

  • 信頼できる人に見てもらい、問題点を指摘してもらう。
  • 指摘してもらった問題点が改善されるまで、何回も書き直す。

です。この二つもかならず訓練するようにしてください。


2-3:作文型小論文で「何を」書いたらよいか?

「自分」について直接語る「作文型小論文」。評価ポイントは、志望先への意欲と人柄。自分のことを熱く、かつ冷静に語れ!

「小論文」の二大柱の一方である「作文型小論文」は、受験生の入学への意欲や人柄を見るために使われます。医学部の「配点なし」の小論文入試や、教育学部、看護学部など、人柄が学部適性として重要視される学部の入試などがその典型例です。また、企業の入社試験の課題も約半数がこの型の論文を書かせるようです。

どちらにせよ、「作文型小論文」では、志望者である「あなた自身」を語る必要があります。このタイプの小論文では、自分がいったいどういう人間なのかを、存分に試験官にアピールしましょう。

これが典型的な作文型小論文だ!

以下に、典型的な作文型小論文を挙げます。課題は数多くの推薦入試や志望理由書に使われる「この学校・学部を志望した理由を書け」です。今回は教育学部向けの内容で、制限字数は600字です。(なお、「学校・学部」のところを「会社・業界」と置きかえれば、そのまま就職試験やエントリーシートの課題にもなります。就職試験の人は自分だったらどう書くかを考えながら読んでください)

「この学校・学部を志望した理由を書け」
教育学部・教育心理学科向け

 「カウンセリングの技法を身につけた、生徒の話を聞ける教師になりたい」これが私がこの学部を志望した理由である。

 中学2年の時、私は軽い不登校になった。学校には何とか行けるのだが、教室に行けない。このとき私を受け入れてくれたのは学校の保健の先生だった。その先生は私の「教室へ行きたくない」という気持ちを認めてくれ、ひたすら私の話を聞いてくれたのである。高校2年で進路を決めるとき、ふと思い出したのがその先生のことであった。そして、私は生徒の話をよく聞くことのできる教師になろうと思ったのである。

 現在、学校には、悩みを誰にもうち明けられない生徒が数多く存在する。表面的なつきあいだけで親友と呼べる人もなく、いじめなど深刻な問題を抱えた生徒もいる。教師との関係も冷たい。「教師は生徒のことを一番理解していない人間だ」と私の周りの人たちも言っていた。しかし、だからこそ、私は、生徒の話を聞ける教師になりたいのだ。

 将来の理想の教師像に近づくために、私は大学でカウンセリングの技法を学びたい。同時に不登校児の支援ボランティアにも参加したい。そして、中学の時にお世話になった、あの保健の先生に少しでも近づきたいと思う。

 以上が私がこの学部を志望する理由である。

「過去の自分」と「未来の自分」、書くべきことはこの二つだけ。

「いままであなたは何をしてきたのか?」「これからあなたは何がしたいのか?」 問われているのはこの二つだけ!

典型的な「作文型小論文」はいかがだったでしょうか?
私ははじめに、「作文」とは、

「自分」のことを直接書く文章

と定義しました。前ページの典型的な作文型小論文も、たしかに「私」のことを書いています。

しかし、作文型小論文の試験において、「自分」を語るとは、「自分」のなにを語ることなのでしょうか? 家族構成? 血液型? 趣味? いえいえ違います。

じつは「作文型小論文」において、あなたが書くべきことは、たった二つのことなのです。それは、

  • 過去の自分(=いままで何をしてきたか)
  • 未来の自分(=これから何をしたいか)

です。

つまり、「作文型小論文」とは、「過去の自分(=いままで何をしてきたか)」をふまえ、これからの「未来の自分(=これから何をしたいか)」を述べる論文なのです。

「えっ、これだけ?」とあなたは思うかも知れません。しかし、これだけなのです。入学試験にせよ、就職試験にせよ、「作文型小論文」において「現在の私」を語る唯一の方法は、自分の過去の経験と将来の展望を語り、なぜ、その過去から未来へと通じる直線上で、その学校や会社に属すること選んだか、を述べることなのです。

しかし、だからといって自分の過去の経験と未来への抱負をすべて書くわけには行きません。

では、「過去の自分」と「未来の自分」の何を書けばよいのでしょう。

「過去の自分」として書くべきことは、以下の三つの条件を兼ね備えた「過去の経験」です。

  • いままでしてきたことの中で、
  • なるべく新しい、
  • 自分の内面を変えた出来事。

そして「未来の自分」として書くべきことは、以下の三つの条件を兼ね備えた「未来の計画」です。

  • 「過去の自分」をふまえた、
  • 自分の将来の「夢」に通ずる、
  • 志望先での具体的な計画。

ここで問題となるのは、「作文型小論文」では、「過去の自分と」と「未来の自分」が、連続性を持っていなければならないということです。

例えば、「寝たきりの祖母をずっと看病したことがある」という「過去の自分」から、「将来は、ヘルパーになりたい」、あるいは「福祉行政に携わりたい」という「未来の自分」を導くのならば納得がいきます。しかし、同じ「過去の自分」から「図書館の司書になりたい」という「未来の自分」を導き出すのは、あまりにも連続性がありません。「過去の自分」と「未来の自分」は読者が納得がいくように連続性を持たせるようにしましょう。(意外な「過去の自分」と「未来の自分」の結びつきで試験官の目を引く、という方法もありますが、最初はオーソドックスな結びつきで書くほうがいいでしょう)

“私の成長物語”としての「作文型小論文」

また、試験のための小論文という性格上、そこで語られる「私」は、「いままで良い方向に成長してきて、そしてこれからも良い方向に成長し続ける私」でなければなりません。

「いままでさえない人生をおくってきて、これからもろくなことは起きないであろう私」を合格させよう、採用しようとする試験官は、一人もいません。事実、いままでの人生でいいことが一つもなく、これからもろくなことは起きないであろう思っていたとしても、そのようなことは決して書いてはいけません。(バカ正直は正直なのではなく、バカなのです)

いくら連続性があり、事実であったとしても、自分の印象を悪くする「過去の自分」と「未来の自分」を書いてはいけません。「作文型小論文」では、過去の成長記録や、未来における成長予定など、“のびゆく私の成長物語”を書くようにしましょう。

抽象的な課題にどう対処するか?

さらに、作文型小論文には「壁」「眼」などといった一見何を書いたらいいのかわからない抽象的な課題が出題されることがあります。

この場合は、課題の前に「私にとっての」を入れて考えてください。つまり、「私にとっての『壁』」「私にとっての『眼』」と考えるのです。

そうすれば「私にとっては父が『壁』だった」とか「私の『眼』はあの本を読んだとき開かれたのだなあ」とか、いろいろと「過去の自分」で書くべき経験が出てくるでしょう。あとは、これらの「過去の自分」を元に、「未来の自分」と結びつけて論文にしていくのです。こうすれば、「何を書いたらいいのかわからない」ということもなくなります。

人生観を問う問題にはこう対処する

人生観を問う問題も同じように考えましょう。「私の人生観」(日本石油)のように直接聞いてくる場合も、「私を語る」(ミノルタカメラ)のように間接的に聞いてくる場合も、いまの私のあり方を決定づけた「過去の自分」の経験を語り、それをもとに今後はどう生きていきたいかという「未来の自分」を語りましょう。

「私の職業観」(日本オリベッティ、その他)「私の生活信条」(電源開発)も原則は同じです。なぜ、そういう職業観を持ったのか、なぜその生活信条を持ったのかを、「過去の自分」と「未来の自分」をむすぶ直線上で語ってください。

自分を知るために、自分自身に問いかけよう

さて、ここまで読んできて、あなたもお気づきでしょうが、どのようなパターンの「作文型小論文」を書くにせよ、「過去の自分」と「未来の自分」の両方を語る必要があります。あなたは語るべき「過去の自分」と明確な「未来の自分」像を持っていますか?

 「作文型小論文」における最大の難関は、この「過去の自分」と「未来の自分」をつかむこと(=「自己分析」)なのです。

「自己分析」とは、言葉で自分を説明できるようにすることです。「いままで自分は何をしてきたのか?」「これから自分は何がしたいのか?」このような問いに言葉で答えようとすることで「自己分析」は進んでいきます。

そして当然のことながら、これらの問いに、全員共通の正解などはありません。すべての答えはあなたの内側にあるのです。また、その答えは一人一人違ったものであるはずです。

「自己分析」をすることで、自分自身を言葉で語りましょう。そして、語るべき「過去の自分」と「未来の自分」をみつけるのです。


2-4:作文型小論文を「どう」書いたらよいか?その1(過去の自分中心型)

「過去の自分」中心型では、具体的に自分が何をしてきたのかを述べるのがポイント。事実にあなたを語らせよう!

「作文型小論文」は、設問の種類によって、「過去の自分」と「未来の自分」のどちらに重点を置くかが変わってきます。どちらに重点を置くかによって、それぞれ「過去の自分中心型」「未来の自分中心型」といいます。

そのなかでも「過去の自分」中心型の作文型小論文は、あなたの過去について重点的に聞いてくる問題です。典型的な例は「私の愛読書」「高校時代で一番印象に残っていること」などです。そして、標準的な「過去の自分」中心型の作文型小論文の構成は以下のようなります。

これが「過去の自分」中心型の基本の型だ!

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それでは、この型に従って書かれた小論文を挙げます。課題は以下のものです。できればあなたもこの演習課題に挑戦してみてください。

演習1:「高校/大学時代で一番印象に残っていること」
(制限字数600字。高校生のあなたはは高校時代の、大学生以上のあなたは大学時代の一番印象に残っていること、を書いてみてください)

型どおりに書いてみよう(1) 型にもとづく解答例と注意事項

それでは演習1の解答例を挙げ、注意事項を述べます。デザイン系の大学を志望する高校生が書いたもの、という設定です。

《解答例》
第1部 「過去の自分」の経験を端的に答える
高二の時に親と進路のことでひどいケンカをしたことが、私の高校生活で一番印象に残るできごとである。

第2部 その経験の詳しい説明
(=どんな経験だったか)
東京で家具のデザインの勉強がしたい、という私に、親は「将来が安定している公務員になりなさい」といって、地元の大学に進学することを要求してきた。どうしてもデザインが勉強したかった私は、両親と鋭く対立し、毎日けんかばかりしていた。そしてついに両親との関係は最悪になり、軽い家出まですることになってしまった。結局、私の叔母が間に入り、両親と徹夜で話し合った末、留年は絶対にしないことと、卒業後五年でものにならなかったら地元に戻ることを条件に、私は今回の受験を許してもらった。

第3部 経験の分析
(=その経験がどのように自分を変え、いまの自分にどのように影響を与えているか)
この経験を通じて、私は自分が本当にやりたいことを再確認できた。また、両親が私を思う気持ちも理解できた。そしてなにより、お互いの価値観をぶつけ合うことで一人の人間として、自分と両親を見つめられたと思う。いまでは両親は私の一番の理解者である。

第4部 まとめ
(「未来の自分」像と絡めてさりげなく決意表明)
私は将来、高齢者にも使いやすい日常器具のデザインをしたいと思っている。そしていつか両親にそれらの器具を使ってもらうことで、私のわがままを聞き入れてくれた両親にお恩返しをしたい。そのためにも入学後は一生懸命デザインの勉強をしたいと思う。

《注意事項》
「過去の自分」中心型の作文型小論文は、以下の三点に気をつけて書くようにしましょう。

  1. 具体的に経験を述べること
  2. 経験をポジティブに分析すること
  3. 自分の”最高の失敗”を思い出しておくこと

(1)具体的に経験を述べること

「過去の自分」中心の作文型小論文の命は、具体的な経験です。別にとっぴな経験でなくてもかまいません。与えられたテーマに関していままで自分が経験したことの中で、一番自分の内面を変えた経験を書きましょう。

例えば、就職試験であなたがよく書く答案に「さまざまなアルバイトをして人間関係をいろいろと学んだ」という文章があります。しかし、これでは漠然としすぎて、何を学んだのかわかりません。これをたとえば、「私は大学4年のとき、某牛丼チェーン店でアルバイトをした。私はそこで深夜店長を務め、初対面のアルバイトさんが三十分以内で私の下でリラックスして働けるようになるテクニックを学んだ。そのテクニックとは…」と書けば、話がぐっと具体的になり、読む方もその先を読みたくなります。

何百枚もある答案の中からあなたの答案を際だたせるには、ありふれていない個性的な経験を書かなければなりません。しかし、経験自体は個性的でなくてもかまわないのです。大事なのはそのありふれた経験をありふれていないものにする具体性なのです。

(2)経験をポジティブに分析すること

経験を具体的に書くことと同じくらい重要なのが、その経験がきちんと分析できているかどうかです。

いくら変わった経験を書いても、またいくら具体的に経験を書いても、その経験が自分にとって何だったのかを分析できない人の答案は高く評価されません。

なおかつ、「自分を売り込む」という小論文の性質上、その分析はポジティブ(前向き)なものでなければなりません。

そして自分がポジティブに経験を分析できることをアピールするためには、第2部の「経験の詳しい紹介」の部分にマイナス要素を入れておくこと、そしてそれを第3部でプラスに転換するテクニックが有効です。

たとえば、演習1の解答例の場合は、「親とケンカをし、関係を悪化させてしまったこと」がマイナス要素になっています。そしてそれを第3部で「自他を見つめ直す良い経験だった」とプラスに転換し、いまの自分の糧にしています。

このように、一見マイナスの経験をプラスに転化することで、試験官に「私はものごとをポジティブにとらえられ、自分で成長できる人間です」とアピールすることができるのです。

(3)自分の”最高の失敗”を思い出しておく

(1)と(2)の解説でおわかりのように、よい「過去の自分」中心の作文型小論文を書くためには、「具体的に思い出すことができ」「学ぶところが多い」「自分を内面から変えた」”最高の失敗”を思い出しておく必要があります。

「あなたのいままでの人生における最高の失敗はなんですか?」と聞かれて、あなたはどんな”最高の失敗”を挙げるでしょうか。そしてそれは、学ぶところの多い”最高の失敗”だったでしょうか。

失敗はそのままにしておいたら、単なる人生の汚点です。しかし、そこから学ぶことで、すばらしい宝にもなるものです。よい「過去の自分」中心の作文型小論文を書くためにも「自分を成長させてくれた最高の失敗」を思い出しておきましょう。

それでは次に、「未来の自分」中心型の作文型小論文の書き方を説明します。

でもその前に、もう一つおまけの質問です。でもこの質問が次の解説で重要な意味を持ちますので、かならず答えを出しておいてください。

  • あなたの「夢」は何ですか。
  • その前に達成すべき「目標」はなんですか?
  • さらにその前に果たすべきいまの「課題」はなんですか?

2-5:作文型小論文を「どう」書いたらよいか?その2(未来の自分中心型)

「未来の自分」中心型では、具体的に将来自分が何をしたいのかを述べよう。語るべきは、大きな夢にむかう小さな一歩!

「未来の自分」中心型の作文型小論文は、あなたの未来について重点的に聞いてくる問題です。典型的な例は「将来どんな○○になりたいか」「大学で学びたいこと」などです。そして、標準的な「〈志望動機中心型〉作文型小論文」の構成は以下のようなものになります。

これが「未来の自分」中心型の基本の型だ!

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それでは、この型に従って書かれた小論文を挙げます。課題は以下のものです。「過去の自分」中心型と同じく、できればあなたもこの演習課題に挑戦してみてください。

演習2:「私の夢」(制限字数800字 家庭電器メーカー)

型どおりに書いてみよう(2) 型にもとづく解答例と注意事項

それでは演習2の解答例を挙げ、注意事項を述べます。

《解答例》
第1部 「夢」の宣言
(=「未来の自分」を端的に答える)
私は将来、本当にユーザーの立場に立って機械を設計できるエンジニアになりたい。これが私の夢である。

第2部 その「夢」を抱いたいきさつを述べる。
(=「過去の自分」)
先日、音楽好きの祖父がいままで使っていたレコードプレーヤーが故障してしまった。祖父は修理したがったのだが、部品が製造中止となっており、修理は不可能であった。その後父が、最新式のCDプレーヤーと祖父の好きな音楽のCDを与えたのだが、祖父はぷっつりと音楽を聞かなくなってしまった。原因はCDプレーヤーのスイッチ類が英語で書かれていること、たくさんの機能が付いて操作が複雑になりすぎたことであった。便利な高機能の機械が、祖父を大好きな音楽から遠ざけてしまったのだ。このとき私は、ユーザーの要求に沿わない高機能の機械は単なるがらくたにすぎないこと、ユーザーの求めるものをきちんと反映させた機械を設計することがいかに大事であるかを痛感したのである。

第3部 「目標」とそれ達成するための具体的方法
(=「未来の自分」)
本当にユーザー本位の機械を設計できるようになるためには、まず、人間のことをよく知らなければならない。そのために私は、大学と大学院時代に人間工学や認知心理学などを学んできた。しかし、人間の研究には終わりがない。この領域はこれからも私が勉強し続けなければならない領域である。
また、いくら大学で学んだとはいえ、私は社会人としての実務経験はゼロである。志望は開発のエンジニアとはいえ、御社の仕事内容を一日でも理解するために、配属先の仕事を精一杯行いたいと思う。

第4部 まとめ(=「課題」の決定とそれを達成する決意表明)
将来の夢を実現させるために、いま自分がやらねばならないことは、いままで以上に人間をよく観察し、人間と機械の理想的な関係を考えることである。そして一日も早く、仕事を覚え、将来の夢を実現させたいと思う。

《注意事項》

「未来の自分」中心の「作文型小論文」を書くときのポイントは、

「夢」「目標」「課題」を段階的にはっきりと把握しているか

ということです。以下にそれぞれを解説します。

「夢」とは?
「夢」とは「自分が一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」です。
その意味では、高校生のあなたがよく書く「弁護士になりたい」「医者になりたい」という「夢」は「夢」ではありません。なぜならそれらになったとたんに「夢」が「夢」でなくなってしまうからです。

これらを「夢」にするには「○○な弁護士になりたい」「○○な医者になりたい」という「○○」の部分を考えてください。「○○」の部分を加えることで、それは「夢」になります。

たとえば上記の「夢」を簡単に「人の気持ちがわかる弁護士になりたい」とか「患者の気持ちがわかる医者になりたい」とするだけで、それは「一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」になります。もちろん、「○○な××になりたい」という「夢」の形でなくてももかまいません。「○○がしたい」という具体的な行動の形であってもかまいません。とにかく「一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」を掲げることが「夢」のポイントです。

「目標」とは?
「目標」というのは「『夢』に向かう上で、近い将来かならず克服しなければならない課題」のことです。

しかし、ここでも「そのためには弁護士にならねばならない」や「そのためには医者にならねばならない」は「目標」として失格です。

ここでは「夢」のところで付け加えた「○○な」の部分を達成するための「目標」を掲げなければなりません。演習2でいえば、「本当にユーザーの立場に立って機械を設計できるエンジニアにな」る、という「夢」の「本当にユーザーの立場に立って機械を設計できる」という部分を達成するために「人間工学や認知心理学などを学ぶ」という「目標」が立てられています。

とにかく、たとえ、その資格を取るのが非常に難しいものだとしても「○○になる」という「目標」以外の「目標」を立てましょう。

「課題」とは?
最後に「課題」とは、「「夢」や「目標」に到達するために、いますぐに始めなければならないこと、あるいは、いますでにやっていること」です。

ここには、志望している学校や会社で、まず自分がするべきことが含まれる場合が多くなります。演習2でいえば、「人間をよく観察すること」「人間と機械の理想的な関係を考えること」そして「一日も早く、仕事を覚え」ることが「課題」になっています。

このように「課題」を決定するときには「いますぐに始めなければならないこと」そして「いますでにやっていること」を挙げることが重要です。

「未来の自分」中心型の小論文の場合、「遠くの大きな目標に向かって近くの小さな一歩が踏み出せているか」が評価のポイントになります。その意味でも、自分自身の「夢」「目標」「課題」をしっかり把握することが大事なのです。

以上が「作文型小論文」の基本の二つの型による、小論文の書き方です。では、つぎに「論文型小論文」の基本の型を解説しましょう。


2-6:「論文型小論文」で「何を」書いたらよいか?その1

論理的思考力、記述力を評価する「論文型小論文」。まず「資料読みとり型」と「テーマ型」の二大パターンを制覇せよ!

「小論文」の二大柱のもう一方の柱である「論文型小論文」は、学部学科、業種を問わず多くの小論文試験に多く使われ、受験生の知識や日本語や英語の読解力、論理的思考力、などを見るために使われます。

そして、試験に出題される「論文型小論文」は、大きく分けると、資料文があらかじめ与えられ、それについて論ずる「資料読みとり型小論文」と「学歴社会について論ぜよ」などとテーマだけが与えられてそれについて論ずる「テーマ型小論文」に二分されます。

これが典型的な論文型小論文だ!

以下に、典型的な論文型小論文を挙げます。課題は「教育について」(ベネッセ)、制限字数を800字にして作成しました。

「教育について」(ベネッセ)
現代日本の教育は、現在、混迷の極みにある。いじめや学級崩壊、大学生の学力低下など、教育をめぐる問題はすべて一筋縄ではいかない問題だ。そのような現状に対し、文部科学省は、初等科教育において学習内容の精選、完全週休二日制などの導入で、「ゆとりの教育」を進める方針である。

 はたして、この方針は、本当に教育にゆとりをもたらすであろうか。

 たしかに、学習内容を精選すれば、授業に余裕が生まれるであろう。また、休日が増えれば児童生徒たちの時間的な余裕も増える。しかし、それだけでは本質的なゆとりを教育にもたらすことはできないのではなかろうか。

 なぜなら、現在の教育におけるの画一主義がなくならない限り、本質的な改善にはつながらないからである。

 私は中学時代、軽い不登校になったことがある。学校までは行けるのだが、教室に入ることができない。結局、毎日保健室に通うことになり、そこで保健の先生にいろいろと悩みを聞いてもらうことで、ふたたび教室に入れるようになった。

 いま考えると、中学生の私は、教室が息苦しかったのであろう。そこでは全員同じ行動を要求され、全員が同じ内容の授業を、同じレベルで理解することを要求された。中学時代の私は自分で自分の行動が選べないこと反抗していたのかもしれない。

 本質的なゆとりとは結局、行動の自由度のことである。中学時代の私は、保健室という避難所があるということを知っただけで、心にゆとりができ、教室に戻ることができた。学習も同じである。学習内容の精選もたしかに重要だろうが、各自がもっと自由に学習する科目と時間数を選べるようになれば、いまと同じ学習内容でも、もっとゆとりを感じて生徒たちは学べるのではなかろうか。そしてそれが、本当の意味でのゆとりを教育にもたらすことになるのである。


2-7:「論文型小論文」で「何を」書いたらよいか?その2(「引用」「判断」「根拠」)

「引用」「判断」「根拠」で自分の論を組み立てよう! 言質を取って(引用)、自分の意見をガツンとかまし(判断)、動かぬ証拠を挙げれば(根拠)、最強の「論文」のできあがり!

さて、典型的な「論文型小論文」はいかがだったでしょうか?

私は序章において、「論文」を、

「与えられている事実・意見の《引用》に基づき、その事実・意見に対する自分の《判断》の正当性を《根拠》を挙げて主張する文章」

と定義しました。

つまり、論文とは、引用されたある意見に対して自分の判断を下し、その判断がなぜ正しいのかを根拠を挙げて述べる文章なのです。そしてこれに必要に応じて「問題提起」と「まとめor提案」を付け加えると「小論文」の答案になります。

しかし、難しく考える必要はありません。じつはこの定義は、

「絶対に口げんかで負けない方法」

から私が編み出したものです。

自慢ではありませんが、私はいままでほとんど口げんかで負けたことがありません(数少ない例外がいまの奥さんです)。そしてある日、私は口げんかで勝つためには、ある一定の手続きをふめばよいことに気がついたのです。

そして、じつは「絶対に口げんかで負けない方法」は、そのまま「説得力のある論文の書き方」だったのです。

それでは以下に、「絶対に口げんかで負けない方法」を説明しながら、「引用」「判断」「根拠」による「説得力のある論文の書き方」を説明しましょう。

.「引用」…まずこれからものをいおうとする相手から言質(げんち)を取ろう

口げんかでは、まず最初に相手から「言質(げんち)」を取らなければなりません。つまり、「いまおまえ、○○っていったよな?」と相手がたしかに「○○」といったことを認めさせておくのです。そうしておかないと、すぐに相手は「○○なんていってない」といってきます。そうさせないように、まず冷静に相手に自分の発言を確認させるのです。

これと同じように「論文型小論文」を書く際は、まず、「与えられている事実・意見」を「引用」します。

さきほどの「典型的な論文型小論文」の例でいえば、第1段落が「引用」になります。
「与えられている事実・意見」とは、「資料読みとり型」の試験の場合は、「資料文で筆者の行った主張」ということになります。また、「テーマ型」の場合は、「社会的文脈」(みんなが知っている事実や意見)となります。

これら「筆者の主張」や「社会的文脈」を引用することで、これから、この部分に対してものをいうのだ、と読者と自分自身にいい聞かせることができます。そしてこの引用部分を元に「自分の意見」を作るのです。

そもそも、

「自分の意見」というものは「与えられている事実・意見」との関係の上に成り立っている

ものなのです。

たとえば、あなたも日頃、会議などで「自分の意見」を求められたとき、次のような思考や発言をしていないでしょうか。「Aさんの意見には全く賛成できない」「Aさんの意見のこの部分は賛成できるがこの部分は賛成できない」「Aさんの意見とはべつにこういう考え方もあるのではないだろうか」「Aさんの意見に賛成だ。Aさんを応援するために、こういう例も挙げられるのではないか」などです。

これらの思考や発言は、まさにあなた自身の「自分の意見」です。しかしもうおわかりのように、これら「自分の意見」は、「Aさんの意見」という、すでに「与えられている意見」を基準に形成されているのです。

また、自分の意見を主張する前に、自分の意見がどのような事実をもとに生み出されたのかを説明することもよくあることです。

ですから、「与えられている意見・事実」のどの部分に対して自分は意見をいうのかをはっきりさせ、自分の意見との違いを際だたせるためにも、「引用」をきちんと行いましょう。

「問題提起」…相手に自分の意見を疑わせよう

言質を取って、自分の発言を認めさせたら、次はその発言にゆさぶりをかけます。「おまえ本当に○○だと思ってんのか?」「○○っていったい何だ?」問いの形はどのようなものでもかまいません。とにかく、相手の意見に疑問をぶつけ、自分の発言を疑わせるのです。

「論文型小論文」を書く際も同じです。

自分の意見をいい出す前に「問題提起」をすることで、読者に引用部分を疑ってもらいましょう。「はたしてこの筆者の主張は妥当なものであろうか」や「果たしてこのような方法で事態の改善は図れるか」といった具合にです。

さきほどの「典型的な論文型小論文」の例でいえば、第2段落が「問題提起」になります。

このときのポイントは、この後に来る自分の「判断(=自分の意見)」ときちんと対応するように問題提起をしておくことです。その意味で、「問題提起」は「判断」と同時か、あるいは後で考えても良いでしょう。

しかし、「問題提起」はかならずしなければいけないものではありません。

なぜなら最近は、すでに内部に「問題提起」が含まれている設問が多いからです。そういう問題の場合は、わざわざ独自の「問題提起」をする必要はありません。あたえられた問題提起をそのまま書いて、その問題に対して「判断」を下せばよいのです(設問内部に問題提起が含まれている例は《《《リンク》》》「型どおりに書いてみよう(4)」を参照してください)。

しかし、その一方で、「問題提起」を含まない旧来型の設問もあります。テーマだけが与えられているものや、「以下の資料文を読んで思うところを書け」や「○○について自由に述べなさい」といった設問です。

このように、設問に「問題提起」がされていない場合にのみ、「判断」のまえに「問題提起」を自分で行う必要があるのです。

この場合は、「問題提起」で、これから論述することの範囲を限定するようにします。つまり、「問題提起」をすることで、自分が何についてこれから判断を下すのかを宣言するのです。

つまり、「問題提起」とは、

  • 設問に「問題提起」が含まれていない場合に、
  • 自分が何を論ずるかを限定するために、
  • 「判断」と一緒に行うもの

なのです。

「判断」…自分が最もいいたいことをガツンとかまそう

相手の発言にゆさぶりをかけたら、いよいよこちらの意見を相手にぶつけます。ハードな口げんかのときは、相手の発言を全否定するような意見をガツンとかましましょう。「説得」程度のソフトな口げんかの場合は、相手の立場を認めつつ、おだやかに自分の意見を主張しましょう。

「論文型小論文」でもまったく同じです。

このぶつけるべき「自分の意見」が「引用」部分を元に作られた「判断」なのです。

さきほどの「典型的な論文型小論文」の例でいえば、第3段落が「判断」になります。

そして、「判断」においてあなたがするべきことは、思考を柔軟にして様々な角度から「与えられた意見」を分析し、それをもとにして、しかしそれとは距離を置いた「自分の意見」を構築することなのです。

たとえば、以下のような「与えられた意見」に対して、あなたはどのように「判断」を下しますか?

「与えられた意見」
インターネット上のわいせつなポルノサイトは、国によってもっと規制されるべきである。

この意見に対して下せる「判断」は非常にたくさんあります。たとえば、少し考えただけでも、以下のようなパターンが考えられます。

「自分の意見」のパターン

パターン1:「全肯定」→「補足」
(1)「その通りである。さらに国家の安定を脅かすような反体制的なサイトも規制するべきである」

パターン2:「全否定」→「代案提示」
(2)「全面的に反対である。たとえ、どんなにわいせつなサイトであろうとも、国によって規制されるべきではない。インターネット使用者のモラルに任せるべきだ」

パターン3:「部分否定」→「修正案提示」
(3)「たしかに、あまりにもひどいサイトは取り締まられるべきであろう。しかし、国によって一方的に取り締まられるべきではない。できれば、インターネットに参加する人々によって構成される特別機関により、取り締まられるべきサイトが決定され、その勧告にしたがって国が取りしまる方法が理想である」

パターン4:「前提否定」→「新前提提示」
(4)このようなことを問題とすること自体がおかしいのである。インターネット上のサイトを「国が取り締まる」ことなど、技術的にいって不可能なのである。

どうでしょう? あなたは他にどのような「判断」を思いつきましたか?

さて、どのような「判断」にせよ、「判断」を下すときのポイントは、

「与えられた事実・意見」をなぞるだけでない、自分独自の考えを示す

ということです。

上記のパターンには、すべて、前提となった「与えられた意見」にはない、独自の「自分の意見」が付け加わっています。「全肯定」の意見でさえ、そのあとに、新たな論点を「補足」しています。

論文というのはいままでになかった自分の意見を他人に認めさせるために書く文章です。

ですからそこには、いままでにない何らかの新しい情報が含まれていなければなりません。つまり、論文型小論文における「判断」の基本は、与えられた意見にとりあえず「NO」をいおうとすること、そしてその過程で新しい「自分の意見」を発見しようとすることなのです。

「根拠」…「動かぬ証拠」を突きつけて、相手に自分の意見を認めさせよう

さて自分の意見をガツンとかましたら、間髪を入れずに「動かぬ証拠」を相手に突きつけましょう。「なぜ相手が間違っているのか」「なぜ自分の意見が正しいのか」の2点に絞って、証拠を挙げていきます。このとき「動かぬ」証拠を挙げることがポイントです。「動かぬ」証拠とは「客観的な事実」です。誰もが認める客観的事実を突きつけられたら、相手もこちらの意見を認めざるを得なくなります。

同じことが「論文型小論文」にもいえるのです。

「論文型小論文」も、自分の「判断」を下したら、次にその「根拠」を挙げなければなりません。なぜなら「根拠」がなければ、その「判断」が正しいか、正しくないかを確認できないからです。

さきほどの「典型的な論文型小論文」の例でいえば、第4・5段落が「根拠」になります。

では、読者が納得するような「根拠」はどのようにしたら挙げられるでしょうか。

「自分の意見」の正当性を証明する「根拠」を挙げる方法には、大きく分けて以下の二つの方法があります。

(1)「反例」を挙げる。
(「相手の意見」の非正当性を指摘する)
(2)「証例」を挙げる。
(「自分の意見」の正当性を指摘する)

以下、説明します。

(1)「反例」を挙げる。
(「相手の意見」の非正当性を指摘する)
「自分の意見」の正当性を証明するための方法として、与えられた「他者の意見」の非正当性を指摘するという方法があります。つまり、「他者の意見」のもつ問題点を指摘することによって、結果として「自分の意見」の方が正しいのだ、と主張する方法です。

たとえば、いま回挙げた「典型的な論文型小論文」の例でいえば、文部科学省の

「学習内容の精選、完全週休二日制などの導入で、「ゆとりの教育」を進める」

という方針に対して

「現在の教育におけるの画一主義がなくならない限り、本質的な改善にはつながらない」

と問題点を指摘しました。そうすることで「学習内容の精選と週休二日制だけでは本質的なゆとりを教育にもたらすことはできない」という「判断」に説得力を持たせています。

このように「相手の意見」の非正当性を指摘する「根拠」のことを「反例」といいます。「反例」を挙げることによって、「相手の意見」は否定され、「自分の意見」の正当性が間接的に証明されます。

(2)「証例」を挙げる。
(「自分の意見」の正当性を指摘する)
「自分の意見」の正当性を証明するためのもう一つの方法は、「自分の意見」の正当性を指摘するという方法です。つまり、「自分の意見」を支える有力な根拠を挙げて、結果として「相手の意見」よりも「自分の意見」の方が正しいのだ、と主張する方法です。先ほどのポルノサイトの例でいえば、

「このようなことを問題とすること自体がおかしいのである。インターネット上のサイトを国が取り締まる」ことなど、技術的にいって不可能なのである」

という「判断」に、

「なぜなら、オーストラリア在住の韓国人が、アメリカのサーバーを使って、日本人向けに日本語のサイトを立ち上げることもできるからだ」

というような根拠を挙げる方法です。

このように「自分の意見」の正当性を指摘する「根拠」のことを「証例」といいます。「証例」を挙げることによって、直接的に「自分の意見」の正当性が証明されるのです。

以上の2つの方法((1)「反例」を挙げる(2)「証例」を挙げる)で、「自分の意見」の正当性は証明されます。

そして、当然のことながら、「反例」と「証例」はどちらか一方しか使えないわけではありません。一度にその両方を使うこともできます。

また、「根拠」として一番説得力があるのは「具体的な社会的事実」です。

「社会的事実」は読者によっても検証可能な事実です。つまり、本当にこれらの事実があったのかどうか、またこれらの事実は「自分の意見」を支える根拠となりうるのか、を読者自身が実際の事実を調べることによって検証することができます。そして、これらの事実が読者に受け入れられたとき、「自分の意見」は「相手の意見」より正当性を持つ、と読者に評価されるのです。

また、自分の経験も十分「社会的事実」になります。「典型的な論文型小論文」の例としてあげた答案においては、自分が中学校時代に軽い不登校になった事実が、学校教育における画一主義の弊害を指摘する社会的事実になっています。

つまり、「根拠」において書くべきなのは、

  • 「相手の意見」の問題点を明らかにし、
  • 「自分の意見」の正当性を保証する、
  • 具体的な「社会的事実」

なのです。

「まとめor提案」…「だめ押し」をするか、「助け船」を出すか?それが問題だ。

さて、口げんかもそろそろ決着が付いてきました。あとは、今後の人間関係を考えて、相手を完膚無きまでにたたきのめすか、新たな改善策を一緒に考えて関係の修復をはかるか考えましょう。

小論文も同じです。「引用」「判断」「根拠」で自分の主張を展開したら、最後にもう一度自分の判断を繰り返し、自分の主張を再確認するか、相手の意見の問題を指摘した後の代替案を提案するかを決めましょう。つまり、「引用」「判断」「根拠」の三要素に加え、最後に「まとめor提案」を付け加えるのです。

これは、「小論文」として形式を整えるためのもので、「論文」本来の性格からいえば不必要なものです。しかし、「まとめ」を最後に書くことにより、小論文が形式的に整い、小論文全体に統一感が生まれます。また、自分が一番主張したいことを再度強調して読者に提示することができるので、その「小論文」でなにを主張したかったのか読者と自分自身にはっきりと印象づけることができます。

「まとめ」は特に新しいことを書く必要はありません。「判断」の再確認を「判断」とは別な表現で書いておけばよいでしょう。

また、ものごとに否定的な「判断」を下した場合は、最後に「提案」をする必要があります。

たとえば、「典型的な論文型小論文」の例でいえば、最終段落が「提案」になっています。この段落がなく、「文部科学省の方針は間違っている」とだけ主張したとしたら、内容的にあまりにも救いがありません。「じゃあ、どうしたらいいんだよ」と試験官に思われてしまいます。場合によっては試験官に「この受験生は主張だけして責任をとろうとしない人物である」と思われてしまう危険性もあります。

ですから、否定的な「判断」を下したら、できるだけ、代わりの考えを「提案」するようにしましょう。

以上が「絶対に口げんかで負けない方法」であり、かつ「説得力のある論文の書き方」でした。

それでは、次に「資料読みとり型」の論文型小論文の書き方を説明します。