作成者別アーカイブ: 石井 秀明

2-8:論文型小論文を「どう」書いたらよいか?その1(資料付き)

「資料読みとり型」は小論文入試の主流派。資料を疑いながら読むことで、資料文の主張をきちんと把握しよう!

「資料読みとり型小論文」は、最近の大学入試用小論文の主流派です。あらかじめ資料が与えられ、それについて自分の考えを述べていきます。自分の意見を述べる以前に、資料文(英文や図表も含む)の読解力が試されますので、慎重に資料文を疑いながら読み、資料文の主張を読みとった上で、自分の意見を構築する必要があります。

そして、標準的な「資料読みとり型小論文」の構成は以下のようなります。

これが資料読みとり型の基本の型だ!

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それでは、この型に従って書かれた小論文を挙げます。課題は以下のものです。「作文型小論文」の演習と同じく、できれば次のページをめくる前に、あなたもこの演習課題に挑戦してみてください。


演習3:次の文章は、医療関係者からのひとつの発言です。これを読んで「死の教育」についてあなたの考えを論述しなさい。(八百字)

資料文
現代は死を否定した時代だといわれる。強さと生産性に価値を置き、人々はあたかも永遠に生き続けるとでもいうように、死を思うことを避けて毎日を過ごしている。しかし、死は確実に訪れる。死は不可避であり、厳粛な事実である。ところが死という現実を、家族内での出来事として経験したことのない若者が増えている。核家族化と、病院での死の増加がその理由だ。若い医師や看護婦の中にも、身内の死を経験したことのない者が多い。初めて遭遇する死が、受け持ち患者の死であるわけだ。

我々がに日常接する死は劇化され、着色された死である。その典型例がテレビの画面に現れる死だ。アニメやドラマの中で人はいとも簡単に死ぬ。ある心理学者が、夕方以降のテレビ番組を一週間調査したら死者が五百五十七人も出た、と報告していた。劇化された死には、現実の死が持つ厳しさや重さがない。

(中略:石井)

現代社会では、死を自然に体験し、みずから学習していくことが困難になってきている。死は教育されるべきものなのである。欧米諸国では、「死」が学校の教育プログラムの中に組み込まれている。そして「死の教育」(Death Education)という専門雑誌が定期的に刊行されている。

(中略:石井)

先日、子どもたちと見ていたテレビ番組で、まだ小さい二人の子どもを残して両親が事故で死亡する場面があった。私はその直後の夕食の時に、「もしお父さんとお母さんが同時に事故で死んだらどうするか」を、三人の子どもたちに尋ねてみた。はっきりとした答えは返ってこなかった。しかし、子どもたちはもしそうなったらどうしようかということを真剣に考えたようだった。

死の教育は家庭でも、学校でも、もっと真剣に取りくまれるべき重要な問題である。

(柏木哲夫『生と死を支える』より)〈九十分〉(長崎大・教育学部・幼稚園・小学・養護)


型どおりに書いてみよう(3) 型にもとづく解答例と注意事項

それでは演習3の解答例を挙げ、注意事項を述べます。

《解答例》
第1部 資料文からの「引用」
筆者は次のようにいう。「死の教育は家庭でも、学校でも、もっと真剣に取りくまれるべき重要な問題である」

第2部 「問題提起」+「判断」
はたして筆者のこの主張は妥当なものであろうか。たしかに「死の教育」は本来は家庭でも学校でも行われるべきものであろう。しかし、現在の学校教育では行われるべきものではない。

第3部 「根拠」
なぜなら現在の学校教育で「死の教育」が行われた場合、筆者の主張する「現実の死が持つ厳しさや重さ」を生徒に教えることはできないからだ。

 もし仮に、現在の学校教育の中に「死の教育」が採り入れられたとしたら、どのような授業が行われるであろうか。「道徳」の授業の例を挙げるまでもなく、そこには副読本と新聞記事の切り抜き、「死の教育」用のテレビ番組と、「劇化され、着色された死」が勢揃いするであろう。ことによると「死の教育」のペーパーテストが行われ、生徒たちは点数を取るために「死」を”お勉強”することになりかねない。

 また、学校教育で死の教育が行われた場合、生徒に偏った死生観を植え付ける危険性もある。

 戦前の学校では「お国のためにはよろこんで死ななければならない」という「死生観」が肯定され、それ以外の考え方は否定された。その結果、先の大戦で多くの悲劇が引き起こされた。これは極端な失敗例である。しかし、どのような「死生観」にせよ、学校教育で、ある一定の「死生観」を生徒に押しつけることは、非常に有害である。

第4部 「まとめ」(「判断」の反復+「提案」)
理想をいえば筆者のいうとおり、「死の教育は家庭でも、学校でも、もっと真剣に取りくまれるべき」ものであろう。しかし、現状では学校で「死の教育」を行うことには慎重にならざるを得ない。もし、学校で「死の教育」を扱う場合には、現在の学校教育の根本的見直しが必要であろう。

《注意事項》
 「資料読みとり型」の小論文を書くときには、以下の3点に気をつけなければなりません。

  • 資料文の読みとりをしっかりおこなう。疑いながら読み、問題提起できそうな部分を探す。
  • 資料文を正確に「引用」する(「要約」は要求されない限りしない)。
  • 「判断」には「たしかに~しかし~」パターンを使うとよい(このパターンに固執しすぎるのもよくない)。

(1)資料文の読みとりをしっかりおこなう。疑いながら読み、問題提起できそうな部分を探す。

「資料読みとり型」の答案を成功させるためには、与えられた資料を正確に読みとり、そこから論ずる価値のある問題を見つけだすことが必要になります。

そのためには、文章を疑いながら読み、問題提起できそうな場所を探しましょう。これを「文章につっこみを入れながら読む」といいます。

課題3の資料文でいえば、「いまの学校で死の教育がおこなわれたらどうなるだろう?」「いままで死の教育はしていなかっただろうか?」という”つっこみ”から「『死の教育』は現在の学校教育では行われるべきものではない」という判断が導き出されました。

このようにつっこみを入れながら、資料文を読むことで、自分自身の判断を生み出すことができます。

また、同じことは、図表や写真などにたいしてもいえます。図表や写真も、資料文と同じく何ごとかを主張しています。その主張を注意深く読みとり、答案の最初に引用するようにしましょう。

(2)資料文を正確に「引用」する(「要約」は要求されない限りしない)。

資料文はなるべくカギカッコ付きでそのまま「引用」しましょう。「要約」は相手の主張をねじ曲げたり、論点を曖昧にしてしまうおそれがあるため、設問で要求されない限りしてはいけません。

また、「引用」するのですから、資料文は一字たりとも変えてはいけません。問題となりそうな部分をそのまま正確に写しましょう。

もし、引用したい部分が長すぎる場合は、「中略」を使ってください。「我々がに日常接する死は劇化され、着色された死である。(中略)劇化された死には、現実の死が持つ厳しさや重さがない」(演習3の第2段落)のように使うのです。

このとき、たとえ「中略」を使っても、その部分で何をいっているのかは、わかるようにすることがポイントです。

(3)「判断」には「たしかに~しかし~」パターンを使うとよい(このパターンに固執しすぎるのもよくない)。

多くの場合、「資料読みとり型」の小論文で出題される資料文の主張は、全体としては納得できるものです。たとえば今回の課題3も、「死の教育が行われるべき」という大きな主張には多くの人が賛成できるでしょう。

このように大きな主張には賛成できるが、一部認められない点や気をつける点もある、という判断は前にも述べたように、「部分否定」の判断になります。そして、この「部分否定」を端的に表せるのが、「たしかに~しかし~」パターンなのです。課題3でいえば、「たしかに『死の教育』は本来は家庭でも学校でも行われるべきものであろう。しかし、現在の学校教育では行われるべきものではない」という部分です。

「たしかに~しかし~」パターンの良い点は、思考のバランスの良さを試験官にアピールすることができる点です。つまり、相手の主張に理解を示す柔軟さを示しつつ、それにとりこまれない独自性も示すことができるのです。ですから、バランスの良さをアピールしたい学部、業種の論文型小論文のときは、「たしかに~しかし~」パターンを使うとよいでしょう。


2-9:論文型小論文を「どう」書いたらよいか?その2(テーマのみ)

テーマ型小論文は就職試験の主流派。日頃の問題意識が問われる。幅広い知識で的確に社会的文脈を押さえよう!

「テーマ型小論文」は、最近は大学入試ではほとんど見かけなくなりました。しかし、就職試験ではいまだに論文型小論文の主流派となっています。テーマだけが与えられていますので、自分の知識の中から社会的文脈(みなが知っている事実・意見)を引用し、そこから論ずる問題を限定して自分の意見を述べていかなければなりません。その意味で「資料読みとり型」よりも難しいといえるでしょう。

そして、標準的な「テーマ型小論文」の構成は以下のようなります。

これがテーマ型の基本の型だ!

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それでは、この型に従って書かれた小論文を挙げます。課題は以下のものです。これまでの演習と同じく、できれば次のページをめくる前に、あなたもこの演習課題に挑戦してみてください。

演習4:携帯電話やPHS、電子メール等、新たなコミュニケーションの手段が増えている。これらのコミュニケーションの手段の持つ功罪について述べよ。(800字 前橋工科大 社会人入試)

型どおりに書いてみよう(4) 型にもとづく解答例と注意事項

それでは演習4の解答例を挙げ、注意事項を述べましょう。

《解答例》
第1部 「社会的文脈」の「引用」
インターネット等の普及により、いま、社会は急速に情報化している。この流れを支えているのが、携帯電話やPHS、電子メール等、新たなコミュニケーションの手段である。 

第2部 (「問題提起」)+「判断」
これら新たなコミュニケーションの手段の持つ功罪とはなにか。「功」は、いままでは作ることができなかった、人と人とのネットワークをすばやく作り上げることができる点である。そして「罪」は、人々を否応無しに情報の洪水にさらしてしまう点である。

第3部 「根拠」
以前、私は、電子メールで一通のチェーンメールを受信した。RH(-)ABという特殊な血液型を持つ女性の手術のために、現在、同じ血液型の人を探していること、そして、このメールを読んだら複数の友人にそのメールを転送してほしいという内容である。

 このチェーンメールは内容が内容だけに、非常に速く広がり、このメールに書かれていた連絡先の病院には、一日に何百件もの問い合わせの電話がかかり、業務が停滞してしまったそうである。この事件は情報化社会におけるデマの問題として、新聞紙上で取り上げられ、結局、大きなニュースとなってしまった。

 しかし、その一方で、この事件は意外な副産物を生み出した。このメールをきっかけに、事実、この特殊な血液型を持つ人たちが、お互いを助け合うために新たなネットワークを作り出したのである。

 この事件は、情報化社会を支える新たなコミュニケーションの手段が持つ功罪を、鮮明に浮かび上がらせた。つまり、これらの手段は不特定多数の人々をいやおうなしに虚偽の情報にさらし、そして同時に、新たな価値あるネットワークを生み出したのである。

第4部 まとめ(「判断」の反復or「提案」)
社会の情報化は不可逆的な流れである。我々は今後、この流れを支える新たなコミュニケーション手段の持つ功罪をしっかり認識して、それらと付き合うべきであろう。

《注意事項》
 「テーマ型」小論文の場合は、以下の2点に気をつけなければなりません。

  • 社会的文脈は後ろの展開にあわせて引用する。分量と「鮮度」にも気をつけて。
  • 問題提起は設問に従って。とくに何も要求されていないときは自分で論述する範囲を限定すること。

(1)社会的文脈は後ろの展開にあわせて引用する。分量と「鮮度」にも気をつけて。

テーマ型小論文の悪い例でよく見られるのが、社会的文脈(みんなが知っている事実や意見)だけを延々と書いて、最後に「われわれはこれらのことを深く考えなければならない」と書いて終わり、という答案です。

「引用」部分の社会的文脈は、資料読みとり型小論文における引用された資料文と同じ働きをするためのものです。つまり、自分の意見を展開する前提となる部分であり、大事なのは、そこを元に展開される「判断」と「根拠」、そして「提案」の方なのです。

その意味で、社会的文脈は後ろの展開にあわせて引用されなければなりません。社会的文脈を引用するときは、自分はそれを元にどういうことを主張するつもりなのか、を考えながら引用しましょう。

そして当然のことながら、引用に費やす分量にも注意してください。制限字数600字ならば、100字前後、全体の6分の1から5分の1に押さえましょう。

また、引用する社会的文脈の「鮮度」にも気をつけてください。テーマ型小論文は、あなたがどの程度社会的な出来事に興味関心を持ち、考えているかを計る問題でもあります。あまりに古い例や、いつの時代にも通用してしまう普遍的内容を引用したのではあなたの情報に対するアンテナの感度を疑われてしまいます。「ネタはなるべく鮮度の良いものを」と覚えておいてください。(ちなみに、この答案で挙げている例は、今では古くなってしまっています)

(2)問題提起は設問に従って。とくに何も要求されていないときは自分で論述する範囲を限定すること。

最近のテーマ型小論文の傾向として、問題提起がすでにふくまれている設問が設定される傾向があります。

たとえば、課題4では「これらのコミュニケーションの手段の持つ功罪について述べよ」と設問は要求しています。ですから、必然的に問題提起は「これら新たなコミュニケーションの手段の持つ功罪とはなにか」となります。そして、これ以外の問題提起は許されません。

このように設問にすでに問題提起が含まれている場合は、その問題提起に従うようにしてください。

また、とくに問題提起が指定されていない場合は、自分で論述する範囲を限定し、それについて判断を下すようにしてください。どのように論述範囲を限定するかは「これが典型的な論文型小論文だ!」の「教育について」の答案を参照してください。

最後に論文型小論文の型の話のまとめとして大事なことを述べておきます。

論文型小論文の基本の型は、すべて「引用」→「判断」→「根拠」→「まとめor提案」の順番で構成されています。しかし実際、小論文の構成を考えるときは、この4つのステップは、あなたの頭の中で同時に進むのです。

つまり、「引用」→「問題提起」→「判断」→「根拠」→「まとめor提案」と順番に考えて、論文を組み立てていくのではなく、設問を読んで思いついたところをもとに、それ以外の部分を考えていくのです。

たとえば、今回私は、「死の教育」に関する演習3では、「引用」部分を先に決めて、そこからそれ以外の部分を考えていきました。また、「新たなコミュニケーションの手段の持つ功罪」の演習4では、「根拠」となるべき事実(チェーンメールの件)を先に思いついて、そこからそれ以外の部分を考えていきました。

ですから、あまり、この「引用」→「問題提起」→「判断」→「根拠」→「まとめor提案」という順序にとらわれすぎないようにしてください。与えられた設問に関して柔軟に思考し、自分の内側にどのような素材があるかをよく考えるのです。そして、「引用」「判断」「根拠」「提案」のどこからでも、縦横無尽に論文の構成を考えられるようになりましょう。

さて、以上で、基本的な小論文の型の説明は終了です。それではいよいよ実際の小論文の問題に挑戦しましょう。でも、その前に質問です。

 いま、あなたは小論文の問題を解こうとしています。あなたがまず最初にしなければならないことは何でしょう?


3-1:設問をキッチリ分析し、試験官の要求を把握しよう

まずは、設問をしっかり分析。書くべき論文の型と、「プロット」づくりの方針が決まらなければ話にならない!まず、あなたが求められているのはなにかを考えよう。

実際の小論文の答案作成で、あなたがしなければならないことは、以下の四つです。

  1. 設問の分析
  2. プロット(=あらすじ・構成)の作成
  3. 執筆
  4. 推敲

そして、この四つのステップの最初の部分であなたが行わなければならないことが(1)の「設問の分析」です。

小論文の問題を前にしたら、まず最初に、設問をじっくり分析しましょう。そして、試験官が自分に何をもとめているのかをしっかりと把握するのです。

最初に確認しなければならないのは以下の2点です。

  1. 書くべき小論文の型は何か?
  2. 基本の型にはめて書くべきか、設問の指示に従ってプロットを作成するべきか?

まず、自分がこれから書こうとしている課題が、小論文の型のどれに当てはまるかを確認します。

おそらくあなたの問題は、内容上の分類としては「作文型」「論文型」「随筆型」「創作型」などに、形式上の分類としては、「テーマ型」「資料読みとり型」「三題噺型」などにわかれるでしょう。

書くべき「型」を確認したら、それぞれの型に関する注意事項を思い出しましょう。たとえば、「作文型小論文」なら「過去の自分」と「未来の自分」、「テーマ型」の論文型小論文なら「社会的文脈」の「引用」と「判断」「根拠」といった具合です。(その他の小論文の型を忘れた人は【形式から見た小論文の「型」】をもう一度参照しましょう)

その上で、設問が特定のプロットを要求しているかを見極めます。

テーマだけが与えられているものや、「○○について思ったことを自由に述べよ」といった単純な設問が与えられたなら、基本の型に当てはまめてプロットを作ればよいでしょう。

しかし、「二つの方法のメリット、デメリット双方を挙げ、あなただったらどちらの方法を採るのかを、根拠を挙げて説明しなさい」というような細かい指示のある設問の場合は、設問の要求するようにプロットを作らなければなりません。

以上の二点を確認した上で、具体的なプロットづくりに入ります。

しかし、そのまえに考えておくべきことがあります。それは「時間配分」です。

時間配分を考えよう

時間配分を考えるとき、まず知っておかなければならないことは、自分が原稿用紙を制限字数分埋めるのに必要な時間です。そしてそれをもとに、その他の時間配分を考えます。

日頃の訓練で、自分が制限字数を埋めるのにどれくらい時間がかかるかを計測してみましょう。

こうして得られた時間を制限時間から差し引きます。あなたはこの残り時間を、(1)設問の分析、(2)プロットの作成、(4)推敲、の3つに配分しなければなりません。

この中でなるべく多く時間を取るべきなのは、(2)プロットの作成、です。なぜならプロットをきちっと作っておけば、実際に論文を書き出してから、途中で詰まったり、推敲の際に大幅に修正が必要になったりしないからです。

ですから、制限時間をなるべく(2)に回せるような時間配分を日々の練習でつかんでおきましょう。

では次は、いよいよプロットの作成です。


3-2:小論文の設計図であるプロットを作成しよう

プロット(あらすじ・構成)は小論文の命。設問の要求に従い、きっちりとプロットを作成しよう!

設問が要求する型どおりにプロットを立てよう

つぎはいよいよ「プロット」の作成です。

「プロット」というのは、「あらすじ」あるいは「構成」という意味です。小説などで言えば、登場人物の設定や事件の流れなどを書いたもの、論文で言えば、章立てや段落構成の計画書を意味します。

そしてプロットの作成で気をつけるべきポイントは以下の三つです。

  1. 段落数
  2. 字数配分
  3. トピックセンテンス

型どおりに小論文を書けばよい人は、基本の型どおりにプロットを作成すれば問題ありません。段落数、文字配分もおのずから決まるでしょう。

しかし、設問が独自のプロットを要求している場合は、注意が必要です。

たとえば、以下の設問を見てみましょう。


(資料文を読んで)
問 現在、様々な地球環境の変化が問題となっています。あなたはその中で特にどのようなことに関心を持っているか記述しなさい。あなたがその環境変化を調べるためのモニタリング(広範囲で長期間にわたって行う調査)を実施するチームのリーダーになるとしたら、どのような目的でモニタリングをしますか。調査対象、調査地など実施方法を添えて、あわせて600字以内で記述しなさい。
(秋田大学 00年度 後期 人間環境 資料読みとり型小論文 ※カッコ内は石井)


この設問で出題者が要求していることは、

  1. 環境の変化に関する問題の中で、自分がどのようなことに興味を持っているかを述べること
  2. モニタリングの目的を書くこと
  3. 調査対象、調査地など実施方法を述べること。
  4. すべてを600字以内で述べること

の四つです。あなたはこの四つの要求をすべて満たす形で答案を作成しなければなりません。すると、この設問から考えられる段落構成と字数の割り振りは、必然的に以下のようになります。



第1段落: 自分が興味を持っている環境の変化を述べる。
(50字~100字)
第2段落: なぜ自分がその問題に興味を持っているかの理由
(100字)
第3段落: その問題を調査するためにどのようなモニタリングを行うべきか
(50字~100字)
第4段落: モニタリングの目的
(100字)
第5~
最終段落: モニタリングの具体的な方法。
(200字~300字)


 このように、設問にきちんと答えようとすると、自然に段落数と字数の割り振りが決まってくることが非常に多いのです。ですから設問をしっかり読み、そして設問が要求している論文の構成はどのようなものなのかよく考えましょう。

そうして、段落数と字数の割り振りが決まったら、今度は、各段落で何をいうかを、簡潔に書き込みます。そしてその文がそのままその段落のトピックセンテンス(その段落の核となる文)になるのです。

以下に、上記の段落構成にトピックセンテンスを加えたものを挙げます。ここまで書けてプロットは完成です。


第1段落:自分が興味を持っている環境の変化(50字~100字)
〈トピックセンテンス〉
環境の変化に関する問題で、私が一番興味を持っているのは酸性雨の問題である。
第2段落:なぜ自分がその問題に興味を持っているかの理由(100字)
〈トピックセンテンス〉
なぜなら、酸性雨は二酸化炭素を吸収する森林を減らしてしまうからだ。

また、酸性雨の問題は一国だけの対応では問題の解決に結びつかないからだ。

第3段落:その問題を調査するためにどのようなモニタリングを行うべきか(50字~100字)
〈トピックセンテンス〉
酸性雨の実態を調査するために現在のアメダス装置に成分分析の機能を付け、雨が降るごとにその中に含まれる物質とph値を調べる。
第4段落:モニタリングの目的(100字)
〈トピックセンテンス〉
全国的、かつ長期間にわたる酸性雨の実態を調べ、酸性雨の予報や防止対策に必要な情報を得る。
第5~最終段落:モニタリングの具体的な方法。(200字~300字)
〈トピックセンテンス〉
全国にあるアメダス装置に成分分析の装置を取り付ける。

同種の装置を世界中に設置し、酸性雨の発生状況を世界規模で把握する。

→実施に伴う問題点と対策も書く。


どうでしょう。プロットの作成方法がおわかりいただけたでしょうか。


3-3:小論文の執筆時に気をつけること

プロットが完成したらいよいよ執筆。下書きは書いちゃダメ!プロットに忠実にじっくり丁寧に書こう!

ぜったいにプロットを変更しないこと!

プロットが決まれば、あとは実際に執筆します。プロットにしたがって、執筆していきましょう。 このとき注意すべきなのは、「ぜったいにプロットを変更しないこと」です。執筆がうまくいかないと、ついついプロットを変更したくなります。あるいは、執筆中に別なアイディアが浮かんできて、そちらのほうが良いように思われてくることもよくあることです。 しかし、それらの誘惑は退けて、最初のプロットをしっかり守って書くようにしましょう。

下書きはするな!

参考書によっては、「下書きを書け」と指導している本もあります。しかし、これはお勧めできません。「下書きはしてはいけない」のです。

なぜなら、下書きを書いてから清書をしようとすることは、一回でいいはずの答案作成を、二回しようとすることだからです。ふつうの制限時間では、制限字数二回分の原稿用紙を埋めるのには短すぎます。

また仮に、二回原稿用紙が埋められたとしても、プロット作成にかけられる時間は大幅にカットされてしまいます。しっかりとしたプロットなしでは、いくら下書きをしても、提出用の論文の質が良くなるわけではありません。できぞこないの論文が二つできるだけです。そんな時間があるのなら、しっかりとしたプロットを立てるほうに時間をかけましょう。

下書きはしてはいけません。そんな時間があるのなら、プロット作成に時間をかけましょう。

美しくなくてもよいから、とにかく丁寧に

小論文の答案における字は、面接における服装や身なりとおなじです。乱暴な字や小さすぎる字はそれだけで、大きなマイナス点です。

美しい字を書こうとする必要はありません「丁寧にはっきりと読みやすい字で書く」ことを肝に銘じておいてください。


3-4:他人の目で冷静に推敲しよう

小論文を書き上げたら、かならず推敲しよう!他人の目になって冷静に。ただし、変更は最小限に。

もう一人の自分の登場

小論文の答案を書き上げたら、最後にあなたがするべきことは、推敲です。この段階では、誤字脱字、不適切な表現などを最小限修正します。

そして、推敲するときは、あたかも他人の文章を読むような気持ちで、自分の文章をつき放して読むようにしましょう。もう一人の自分が冷静に答案をチェックするのです。そうすることで、自分の答案の問題点が見えてきます。

修正は最小限に。ふたたびぜったいにプロットを変更しないこと!

推敲の際、まず、覚えておかなければならないことは、「修正は最小限にする」ということです。

だれでも、修正だらけの汚い原稿は読みたくありません。誤字、脱字等、明らかな間違いは消しゴムで丁寧に消して訂正し、あまり長い文章の修正は行わないでください。

まして、推敲段階にいたって、プロットを変えるなどの大きな変更はぜったい禁止です。

追いつめられた状況下では、新しく思いついたプロットのほうがよく見えてしまうものです。しかし、後で冷静に見直すと最初のプロットと大した差がないことが多いのです。ですから書き直したくなってもグッとこらえて、細かいミスだけをつぶすつもりで推敲を行ってください。

それでは以下に、推敲のときここだけは確認して欲しいチェックポイントを挙げます。推敲のとき、参考にしてください。

ここだけはかならずチェック!推敲の絶対確認ポイント

  • 推敲のポイント 起こしやすいミス
  • 誤字・脱字はないか 単純な誤字・脱字がある
  • 表現におかしなものはないか 主述がねじれている
  • カッコを閉じ忘れている
  • 副詞が呼応していない
  • 読点が多すぎる/少なすぎる
  • 文体が統一されていない
  • 表記上の誤りがある
  • 用字用語の表記が統一されていない
  • 字数制限を守っているか 最低字数を下回っている/最高字数を超えている
  • 原稿用紙の使い方は間違っていないか 【原稿用紙の使い方】を守っていない

さて、以上で実戦的な小論文の書き方の説明は終わりです。


4-1:原稿用紙の使い方 これだけは覚えておこう! 

原稿用紙の使い方は自分のいいたいことを伝えるためのフォーマット(ひな形)。正しく理解しよう!

原稿用紙の使い方をマスターすることは、相手に自分のいいたいことを伝えるための「フォーマット」(ひな形)をマスターすることです。
以下の表はみんなが間違えやすい原稿用紙の使い方をまとめたものです。注意しましょう。

  • マス目

1字で1マス。拗音(「ゃ」など)、促音(「っ」)、句読点(、。)なども同じ。ただし、閉じカギカッコ(」)と句点(。)は同じマスに入れる。

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  • 字下げ

段落の初めは1マス空ける。

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  • 行の先頭

閉じカッコ(」』など)や中黒(・)、長音(ー)、拗音、促音、句読点などは、行の先頭に書かない。前の行の末尾のマスに一緒に入れる。

ただし、字数制限がある場合は例外。最後の行の最後のマスに複数の字や記号を入れると字数オーバーとなるので書けない。

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  • 行の末尾

開きカッコ(「『など)などは、行の末尾に書かない。
末尾のマスを空け、次の行の先頭に書く。

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  • 疑問符・感嘆符

疑問符(?)や感嘆符(!)の後ろは1マス空ける。ただし、論文では原則として用いない。

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  • 点やダッシュ

点(……)は、1マスに点を3つ入れ、2マス続ける。
ダッシュ(――)は、2マス分書く。

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  • 数字

縦書きの場合は漢数字、横書きの場合は算用数字で書く。

なお、横書きの数字の時は、原則的に一マスに二文字入れる。

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  • カギカッコ

会話や気持ちを表す場合は一重カギカッコ(「」)を用いる。

カギカッコの中にもう一組カギカッコを書くときは、二重カギカッコ(『』)を用いる。

なお、会話文であれば、閉じカギカッコと同じマスに句点(。)を入れる。それ以外であれば、句点は必要ない。

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それでは、次に「わかりやすい文章」を書くためのポイントを説明します。でも、その前に質問です。「わかりやすい文章」を書くために注意しなければならないことは何でしょう?なるべく詳しく考えてください。


4-2:わかりやすい文章を書くための10ヶ条

わかりやすい文章を書くために守らなければならい十ヵ条。すべてマスターしてわかりやすい文章を書こう!

次にぜひ覚えておいて欲しいのは、わかりやすい文章を書くためのポイントです。そのポイントを「わかりやすい文章を書くための十ヶ条」として説明します。

この「十ヵ条」の説明では、まず「悪い例文」を読んでもらい、その上で「解説」を読んでもらいます。そしてそれから「書き直し例」を読んでもらうことで、これらのポイントを守ることがいかに重要であるかを理解していただきます。

また、すべての「悪い例文」は、以下の新聞投書に対して意見を書いてもらった小論文から採っています。あなたも、もし可能ならば、同じように以下の新聞投書に対して自分の小論文を書いてみましょう。その上で自分の文章を読みながら、「十ヵ条」の説明を読んでみてください。自分の文章がどのような傾向を持っているかを実感することができるでしょう。


問題
以下の新聞の投書を読んで、自分が思ったことを書きなさい。(400字以内)

だらしなくていいじゃない
(千葉県 中学校教員 男性 43歳)

最近の生徒たちの服装は、だらしない。私の勤めている中学校も、ご多分に漏れないところがある。多くの先生たちは、そのことを良くないこと、恥ずかしいことと思い、一生懸命指導している。

でも、ちょっと待てよ、と私は思う。だらしなくてもいいじゃない。気持ちの問題だと思う。服装の乱れは心の乱れなんて言うのは、頭の固いだれかさんの言うこと。ワイシャツを出している子もいる。カラーTシャツを着ている子もいる。それでいいじゃない。気持ちが優しくて、勉強も、運動も頑張っていれば、それで十分だと思う。

日本の学校は、あまりに形式的なことが多すぎる。起立、礼に始まり、起立、礼に終わる。競技大会といえば、整列行進。形だけできていれば、気持ちが伴わなくても問題にされないようだ。

いま問題になっている「日の丸」「君が代」法制化もそうだ。卒業式に日の丸が掲げられ、君が代を歌えば、教育委員会は満足するものらしい。問題は気持ちだ。心から国を愛する気持ちで歌わなければ意味がないことだし、法制化しても形式的な要件が整うだけで、無意味なことと思う。

服装一つをとってみても、もっと彼・彼女たちの気持ちを尊重してあげられないものだろうか。先生たちの意識の変革を強く望みたい。


 

  • 第一条 一文はできるだけ短く、一文一義で。

悪い例文
 私が思ったことは、確かに今の学校は細かい服装の規則をやかましく言って守らせようとしたり、起立、礼などの形式的なことを徹底して守らせるなど直接勉強に関係ないことまで我々を管理しようとしていると思うし、実際に私も同じような経験を受けたことがあるのでよく分かる。

一文に複数の事柄を入れようとすると、主語と述語のねじれや、呼応の副詞(けっして~ない)や係り受け(なぜなら~だからだ)の混乱などが起こり、大変読みづらくなります。

一文一義とは、「一つの文で一つのことをいう」ことです。つまり、一つの文で一つのことだけをいい、そうした短い文の積み重ねで文章を組み立てていくことが、わかりやすい文章への第一歩なのです。

書き直し例
 確かに今の学校は、細かい服装の規則をやかましく言って守らせようとしている。また、起立、礼などの形式的なことを徹底して守らせるなど、直接勉強に関係ないことまで我々を管理しようとしている。

実際に私も同じような経験を受けたことがあるのでよく分かる。
 

  • 第二条 接続助詞「が」はなるべく使わない。

悪い例文
 このようなことは誰しもが思うことであるが、私も同じような経験をしたことがあるが、そのときはやはりいい気持ちはしなかったが、それは私の友人も同じであった。だが、これはやはり学生時代誰もが経験しているはずだ。

 一文が長くなる現場には、かならずといっていいほど、この接続助詞の「が」が現れます。接続助詞の「が」は万能接着剤のように、様々な文をつなげてしまうのです。
 ですから、なるべく接続助詞の「が」は使わないようにしましょう。その代わり、文と文ををつなぐ言葉を適切に入れましょう(第四条を参照)

書き直し例
 このようなことは誰しもが思うことである。
 私も同じような経験をしたことがある。そのときはやはりいい気持ちはしなかった。それは私の友人も同じであった。
 これはやはり、学生時代誰もが経験しているはずだ。
 

  • 第三条 主語をなるべくあらわに書きこむ

悪い例文
 個人の人権を尊重する現代に、服装や形式のことばかりを厳しく規制することは許されるのでしょうか。こんなことがあってもよいのでしょうか。
 たしかに、子どものころはしつけの一環として行うこともあるでしょう。しかし、ただ「ためにする」のであれば、むしろやらない方がよいのではないでしょうか。

主語がない文は、書き手の主体がない文です。このような主語なし文は、自分と他人の区別があいまいなときに生まれます。

例えば、上記例文の「許されるでしょうか」という一文では、「誰が誰を許すのか」「筆者はなぜ、許さないのか」「我々ははなぜ、許さない、と思うべきなのか」といった事柄はわかりません。「小論文」を書くときはなるべく主語をあらわに書くようにしましょう。

書き直し例
 個人の人権を尊重する現代に、学校が服装や形式のことばかりを厳しく規制することは適切な対応でしょうか。
 たしかに、子どものころは親がしつけの一環として行うこともあるでしょう。しかし、ただ「ためにする」のであれば、むしろやらない方がよいのです。
 

  • 第四条 文と文をつなげる語句をなるべく使う

悪い例文
 生徒一人一人の気持ちを尊重することは大切である。学校ではそこまで保障する必要があるのだろうか。 学校は教育の場である。勉強を教えるのは当然だ。一定の社会のルールを教える必要がある。気持ちが尊重されないとしても、やむを得ない。

第二条で、なるべく接続助詞の「が」はつかうべきではない、と説明しました。その代わり、適切に使いこなすべきなのが、接続詞をはじめとする、文と文をつなげる語句なのです。

これらの語句を使用することによって、文と文の関係が明確になり、読み手に自分の主張が伝わりやすくなります。また、そうすることで、自分自身のいいたいことが、論理的に飛躍していないか、自分で確認することも出来ます。

書き直し例
 生徒一人一人の気持ちを尊重することは大切である。しかし、学校ではそこまで保障する必要があるのだろうか。
 たしかに、学校は教育の場である。勉強を教えるのは当然だ。そして、一定の社会のルールを教える必要がある。だから、気持ちが尊重されないとしても、やむを得ない。
 

  • 第五条 文末はできるだけ簡潔に

悪い例文
 筆者の言うことも、わからなくもない。たしかにその通りといえるだろう。
 私も同じ教育の現場に立つ者として、学校の「校則」と「個性」の問題には常々考えさせられないわけにはいかない。

文末はなるべく端的にいい切るようにしましょう。例えば次のようにです。

…この例は特殊であるとはいえない。

…この例は特殊ではない。

…この例は普通のことである。

このように、意識的に文末を簡潔にし、いいたいことを明確に表しましょう。ことに「論文型小論文」を書くときには、この原則は非常に重要になります。

書き直し例
 筆者の言うことも、理解できる。たしかにその通りだ。
 私も同じ教育の現場に立つ者として、学校の「校則」と「個性」の問題には常々考えさせられている。
 

  • 第六条 同じ概念は同じ語で表し続ける

悪い例文
 生徒と先生の間柄は、ある面においては対等である。それは、「自由に意見を言いあえること」ということである。
 教師は、子どもの言うことに耳を傾けなくてはならない。たとえ子どもであろうとも、意見はその生徒の個性の表れとも言えるからである。

概念(がいねん)というのは、あるものについてみんなが共通に持っている考えの集合体です。例えば、「犬」の概念は、「四本足で毛むくじゃらで、ワンワンと吠え、人なつっこい動物」といったものです。

そして、言葉が違えば、それが指し示す概念も変わるのが原則です。逆に、同じ概念は同じ言葉で表されるのが原則です。その原則に従えば、上記例文における「生徒」「子ども」、「教師」「先生」は、どれか一つの言葉に統一すべきです。

書き直し例
 生徒と教師の間柄は、ある面においては対等である。それは、「自由に意見を言いあえること」ということである。
 教師は、生徒の言うことに耳を傾けなくてはならない。たとえ生徒であろうとも、意見はその生徒の個性の表れとも言えるからである。
 

  • 第七条 「と思う」「と感じる」「と考える」はなるべく使わない

悪い例文
 私はこの人のいうとおりだと思います。
 私の高校生活も、校則に縛られたものだったと思います。そのときは、早くこんなところを卒業したいとばかり考えていました。そのことは、今でも間違っていなかったと思っています。

「小論文」、特に「論文型小論文」では、思った「内容」を書くべきで、“思った”という「事実」は書く必要はありません。“感じる”と“考える”も同様です。

ただし、「作文型小論文」ではこの限りではありません。文末の単調さを避けるためにも、適度に使用してください。でも使いすぎは逆に幼い印象を与えるので注意しましょう。

書き直し例
 筆者の言うとおりです。
 私の高校生活も、校則に縛られたものでした。そのときは、早くこんなところを卒業したいとばかり考えていました。そのことは、今でも変わっていません。
 

  • 第八条 一段落一義で適切に段落分けする

悪い例文
 筆者の言うことは納得がいかない。私の中学校の生活を思い出すと、服装が乱れていた人たちは、やはりいわゆる「不良」だった。高校でもそうだった。やはり、服装にはその人の心のようすが表れると思う。

第一条で述べましたが、文は「一文一義」が原則です。それと同じく、段落は「一段落一義」つまり、一つの段落で一つのことをいうのが原則です。特に「論文型小論文」の場合は、一段落がどんなに短くなっても、この原則を守るようにします。

しかし、この原則も「作文型小論文」のときは少しゆるめてもらってもかまいません。また、論文型小論文の時も、200字程度のごく短い文章の時は、段落をつける余裕がないので、この原則の適応外になります。

書き直し例
 筆者の言うことは納得がいかない。
 私の中学校の生活を思い出すと、服装が乱れていた人たちは、やはりいわゆる「不良」だった。高校でもそうだった。
 やはり、服装にはその人の心のようすが表れる。
 

  • 第九条 他者の文章は正確に引用する

悪い例文
 筆者は、服装の乱れについていちいち注意する人は結局、形式が守られることだけを求めていると書いている。そして、「日の丸」や「君が代」の問題も、結局は服装についての注意と同じで無意味であると書いている。

上記の例文は、投書を正確に引用していないため、ピントのずれた、投書の内容から離れた文章になっています。このような事態を避けるためにも、他者の文章は正確に引用しましょう。

引用を行うことで、(1)他者の意見と自分の意見をきちんと分けてとらえられ、(2)資料文から目が離れてしまうのを防ぐ、ことができます。

ですから設問に、「要約せよ」と書かれている場合をのぞき、資料文は正確に引用しましょう。

書き直し例
 筆者は、「だらしなくてもいいじゃない。気持ちの問題だと思う。」と述べている。また、「『日の丸』『君が代』法制化も、(中略)法制化しても形式的な要件が整うだけで、無意味なことと思う。」と述べている。
 

  • 第十条 他者の文章に対し、文章の内容を越えてその人の人格に言及してはならない

悪い例文
 この人は、「起立、礼」という挨拶を無意味であるように書いているが、きっと毎時間の授業のはじめとおわりには、必ず「起立、礼」をやらせているにちがいない。結局は口先だけできれい事を言っているだけで、「生徒の気持ちを尊重」などといいながら、注意するのがいやな臆病者なのだ。

「文は人なり」といいます。確かに文章を読むとその人の人柄や、性格などを感じることが出来ます。しかし、文は文であって、その人本人ではありません。人間は奥深いものです。一片の文章でその人を断定してはいけません。

それにその人の性格までを問題にしてしまっては、物事を正確に論じることが出来なくなってしまいます。他者の意見を論ずるときは、文の内容に限定して論じましょう。

書き直し例
 筆者は、形式的なことの例として、「起立、礼」を挙げている。しかし、果たして筆者は、毎回気持ちのこもった「起立、礼」をさせているのだろうか。または、形式だけならばいらないと、廃止しているのだろうか。
形式だけのことを問題視するのであれば、まず自らの行動が伴わなくてはならない。筆者はまず、自らの行動を書いて報告すべきだ。

以上が、わかりやすい文章を書くための十ヵ条です。自分がどんなことに気をつけて文章を書いたらよいか、おわかりいただけましたでしょうか?

わかりやすい文章を書くための十ヶ条

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4-3:小論文のための日頃のトレーニング

情報のインプット(入力)、アレンジメント(整理)、アウトプット(出力)が日頃のトレーニングの三本柱!

「小論文」入試のために日頃はどんな勉強をしたらよいでしょうか?
「小論文」の日頃の勉強は、以下の3つの柱から成り立っています。

  1. 情報のインプット(入力)
  2. 情報のアレンジメント(整理)
  3. 情報のアウトプット(出力)

つまり、

  1. 小論文の内容となる情報を収集し、
  2. それを自分の知識として使えるよう整理し、
  3. 整理した自分の知識を使って、要求にあわせて自分の意見を表現すること

が、小論文の日頃のトレーニングなのです。

毎日新鮮な「ネタ」を仕入れ、それをいつでも使えるように下ごしらえし、客の好みに合わせて出す…、小論文の日頃のトレーニングはお寿司屋さんの仕事に似ています。

しかし、小論文のトレーニングがお寿司屋さんの仕事と違う点は、この三本柱が、別々に存在しているのではなく、密接に関係している、という点です。

つまり、この柱のどれか一つを行おうとすると、同時に他の柱の訓練もすることになる、ということなのです。

たとえば、インプットとアレンジメントは同時に進むことが多いですし、アレンジメントの過程で自分の意見を言葉にしようとすることは、アウトプットの練習になっています。アウトプットの過程で必要な情報をインプットしたり、それについてアレンジメントをおこなったりすることはよくあることです。

ですから、あなたは、この三本の柱を順番どおり、一つずつ行おうとする必要はありません。次の頁から紹介するトレーニングの具体的な方法を読んだなら、あなたは、できるところからどんどんトレーニングを始めてみて下さい。

情報のインプット(入力)

書くためには「ネタ」が必要。そのためにはあらゆる手段で情報をインプットし、新鮮な「ネタ」を多くたくわえよう!

「小論文」を書くためには、最初に「ネタ」となる情報を「インプット」しなければなりません。そして、情報のインプットのための代表的な方法は以下の4つです。

  1. 本を読む
  2. 新聞・雑誌を読む
  3. インターネットで情報を得る。
  4. いろいろな社会的経験を積む

なにをいまさら、と思われるかもしれません。しかし、これらの方法は本当に大事なのです。以下、私なりのアレンジを加えて一つずつ説明します。

(1)本を読む
情報をインプットするための一番オーソドックスな方法は、いろいろな本を読むことです。”小論文を書く”という視点から見た場合、本を読むことの利点には以下の4点があります。

  • 小論文の「ネタ」となる知識を得ることができる。
  • 小論文で使用されることの多い、抽象的なことばを覚えられる。
  • 良い文体の本を読むことで、自分が小論文を書くときの文体のお手本を得ることができる。
  • 何度も繰り返して読むことができ、本に書かれている内容に関してじっくり考えることができる。

ですから、とりあえず、志望領域に関係する本は、最低10冊は読んでおくことをお勧めします。専門書でなくてもかまいません。最近は新書のシリーズが数多く出版されていますので、志望領域で現在起こっている問題点をそれらの本で確認しておきましょう。

その時、注意すべきなのは、かならず異なった意見を主張している複数の本を読む、ということです。主張の異なる複数の本を読むことによって、一つの問題を、さまざまな角度で考えることができます。そしてその過程で自分の意見を作り上げることができるのです。

(2)新聞・雑誌を読む
情報をインプットするための第2の方法は、新聞を読むことです。小論文入試に出題されるテーマは、意外と時事ネタが多いものです。

いずれにしろ、どのような事件であれ、それがどんな事件だったかを知らなければ話しになりません。ですから、新聞には毎日目を通すようにしましょう。

さて、毎日、新聞を読むことにして、では、どの新聞を読んだらよいでしょうか。それに関しては、一応このように覚えておいてください。

  • 大学入試用なら「朝日」
  • 就職試験用なら「日経」

大学入試に出題される新聞記事は、圧倒的に朝日新聞から引用されています。ですので、まず一紙めは「朝日」、そして対立する意見を知るために二紙めを「讀賣」にしましょう。そうすることで一つの事件に対する異なった意見を知ることができます。

また、就職試験用にはやはり「日経」(日本経済新聞)を読んでおくことをおすすめします。採用担当官が読んでいる新聞のトップがやはり「日経」でした。敵を知るためにも、「日経」を読むことをおすすめします。

しかし、新聞を理解するためには、ある程度の基礎知識が必要となります。それら基礎知識がない場合は、新聞は読んでも理解できません。

そのような場合は、雑誌の特集記事を読むことをおすすめします。「アエラ」や「Yomiuri Weekly」「ニューズウィーク日本語版」などを、立ち読みでもかまいませんので、一通り目を通しておくと良いでしょう。
この場合も、複数の雑誌に目を通すのがポイントです。

(3)インターネットで情報を得る。
志望する領域に関する情報や、小論文の資料文に関する情報をインターネットで収集するという方法も非常に有効です。代表的な方法は以下の3つです。

  • Yahoo!Japanなどの検索エンジンを利用する
  • 掲示板・メーリングリストなどに参加する
  • 新聞記事のクリッピングサービスを利用する

とりあえず、わからないことがあったら検索エンジンにキーワードを入れて検索してみましょう。たいがいのことに関しては、必要十分な情報が得られるはずです。

そして、ある特定のトピックを深く知りたいときは、掲示板やメーリングリストに参加するのも有効です。

また、各新聞社では、登録メンバーに、その人の興味ある記事だけを配送してくれる新聞記事のクリッピングサービスを行っているものもあります。特定領域に関する記事を網羅して読みたい人にはお勧めです。

(4)いろいろな社会的経験を積む
(1)から(3)まで、すべて言葉を使って間接的に情報を得る方法を述べてきました。しかし、直接的に自分の体で得た情報はなんといっても一番説得力があります。

いろいろなことを経験しましょう。その経験が他人の文章の理解を助け、自分の小論文の説得力を高める、最高の「ネタ」を提供してくれます。「経験」は「言葉」より広く、深いのです。いろいろな経験をしましょう。

情報のアレンジメント(整理)

「情報のアレンジメント」とは、入力した情報を整理して、「自分の意見」を作り上げること! キーワードは「つっこみ」です。

情報をインプットしたら、次はアレンジメント(整理)です。そして情報のアレンジメントにおいて大切なのは、技術ではなく態度です。その態度とは、

すべてのことに”つっこみ”を入れようとする

態度です。

なぜ、つっこみを入れることが情報のアレンジメントにつながるのでしょうか?

それは、つっこみを入れるということが、相手の意見に対して異論を唱えることだからです。そして、異論を唱えるということは、まさに相手の意見とは違う「自分の意見」をいうことなのです。

論文型小論文の基本の型の説明で述べましたが、自分の意見は、他人の意見との違いを考えることで生まれます。そのためには他人の意見を鋭く疑い、どこかおかしなところがあるのではないか?もっと違う見方があるのではないか?と何ごとにも”つっこみ”を入れる気持ちで接する必要があるのです。

そして、そういう態度で接することが、じつは一番誠実に相手の考えを理解しようとする態度なのです。

しかし、ただ漫然と”つっこもう”と心がけているだけでは、なかなかつっこめません。具体的なつっこむ相手とつっこむ方法が必要です。以下に代表的なつっこむべき相手とそれらにどのようにつっこむかを説明します。以下の4つです。

  • 文章をつっこみを入れながら読む
  • 気に入らない相手につっこみを入れる(心の中で)
  • 友達とつっこみを入れあいながら議論する
  • 自分の常識につっこみを入れる

以下、詳しく説明します。

(1)文章をつっこみを入れながら読む
われわれには、活字で書かれた文章は、つい信じてしまう、という癖があります。とくに新聞や教科書など、エラそうにしている文章に対してはなおさらです。

ですから、文章を読むときには、常に「ほんまかいな?」「うそちゃうか?」とつっこみを入れながら(別に関西弁でなくてもいいですが…)読むようにしましょう。

たとえば「健全な肉体に健全な精神はやどる」という文を見たとき、私の中には「健全な精神って何?誰が決めるの?」「肉体的に障害を持った人には健全な精神が宿らないの?」といったつっこみが生まれてきます。そして、このつっこみを、他人にもわかるように「根拠」を挙げながら丁寧に説明すると、新たな自分自身の「理論」ができあがるのです。たったいまから、すべての文章(この本の文章も例外ではありません)につっこみを入れながら読むようにしましょう。

(2)気に入らない相手につっこみを入れる(心の中で)
「いやな親」「いやな教師」「いやな友達」などなど、世の中には「いやなヤツ」がいっぱいです。でもなぜ、そいつはそんなに「いやなヤツ」なのでしょう。それはそいつが持っている考えと、自分の持っている考えがことごとく対立しているからなのです。

しかし、そんな「いやなヤツ」に「言葉」で反論しようとすることも、小論文のよい訓練です。 別に面と向かっていう必要はありません(いってもいいですが責任は持ちません)。「いやなヤツ」と意見の上で衝突したときは、反論をきちんと構築してみましょう。

「ムカツク!」と思ったら、「ムカツク!」といって終わりにするのではなく、「なぜムカツクのか」「相手を打ち負かし、スカッとするにはどういい返したらよいのか」等を冷静に考えます。できれば文章にするとなおさら良いでしょう。きっとその文章を書き終える頃にはムカツキもとれ、スッキリとした気分になり、おまけに小論文の力も付いているはずです。まさに一石三鳥の方法といえるでしょう。

(3)友達とつっこみを入れあいながら議論する
友達と共同で何かをするときは、つっこみを入れあいながら、なるべく「よりよい方法」を見つけ出すよう議論しましょう。「旅行の計画」や、「部活動など組織の運営方法」、「夕飯に何を食うか」など、何でもかまいません。意見をいい合い、意見が食い違ったときは、対立を恐れずに、言葉を尽くして議論しましょう。

この方法は、小論文でいえば、「部分否定」の「判断」や、よりよい「提案」を生み出すための訓練といえます。

基本的には相手の立場を認めつつ、自分の意見を「たしかに…だが、しかし…ではないか」という形で主張します。まさに小論文の「部分否定」の定型で自分の意見を述べていくのです。そうやってお互いの意見をやり取りする過程で、お互いの意見の対立を解消する、より良い第三の意見を見つけ出せれば、こんなに良いことはありません。

(4)自分の常識につっこみを入れる
もっとも頑固で、一番つっこむのが難しいのは、なにあろう「自分の常識」です。

疑う余地がないと思われる、自分にとっての「当たり前」をこそ疑いましょう。そして、他の人にとっての「当たり前」のほうが、じつは本当の「当たり前」なのではないか、と一度は自分に問うてみることです。

たとえば、新聞の投書の意見に対して「そのとおり!」「つっこむところなし!」と思うことがあるかも知れません。しかしそんなときこそ、立ち止まって考えて欲しいのです。そこに書かれていたことは、真実なのではなく、もしかしたら自分の「常識」と同質なだけかも知れないのです。別な考え方がないかどうか、もしかしたら別な「常識」のほうが正しいのではないか、と一度自分に問うてみてください。

情報のアウトプット(出力)

基礎訓練をしたら、とにかく書いて慣れること!書き直しと他の人に見てもらうことも忘れずに。

インプットとアレンジメントが終われば、あとは、アウトプット、つまり書くことだけです。アウトプットで重要なのは、「とにかく書くこと」そして「信頼のおける指導者に添削してもらうこと」さらに「納得がいくまで書き直すこと」です。 しかし、すぐに小論文の問題に取りかかるのには抵抗がある、という人もいるでしょう。また、もう少し基礎訓練をしてから問題に取り組みたい、という人もいるかもしれません。そのような人には、以下のような基礎訓練をお薦めします。

  1. 新聞の投書や、コラムなどを視写する。
  2. 視写した記事を要約してみる
  3. 視写した記事について論文を書いてみる。

以下、詳しく説明します。

(1)新聞の投書や、コラムなどを視写する。
「視写」というのは、新聞記事などを、一字一句違わず「視ながら」「写す」ことです。「えっ、ただ視ながら写すだけ?」と思われるかも知れませんが、じつは、この方法は小論文の訓練という観点からみると、以下の二つの点で非常に有効な手段なのです。

  • 記事の内容を注意深く読むことができる。
  • 自分が小論文を書くときのリズムや感覚がつかめる

1は、読解力の養成という点から見た利点です。他人の文章を視ながら写すことで、その人がどのようなつもりで、その文章を書いたのかがわかるようになります。なぜここでこの言葉を使うのか、なぜここに読点をおくのか、この事例は何のために書かれているのか、などその文章を書いた人になったつもりで、注意深く読むことで、その文章の内容を深く理解できるようになります。

2は実際に小論文を書くという点から見た利点です。投書は原稿用紙1.5~3枚の長さです。これらの長さはほぼ、標準的な小論文の制限字数と同じです。ですから、この分量の文章を視写することは、実際に自分が小論文を書くときの予行演習にもなるのです。

この方法の良い点は、「小論文を勉強するのだぞ」という構え無しに、小論文を勉強することができることです。小論文の基礎訓練は、新聞記事の視写から始めてみましょう。

(2)視写した記事を要約してみる
読解力に自信のない人、過去問で要約を求められることがわかっている人は、視写した記事を要約してみましょう。

要約は、文章の大意をつかむ良い訓練です。長い文章のどこが大事で、どこが大事でないかを見極めることは、そのまま読解力の向上につながります。論文型小論文の説明で、「要約はなるべく避けて引用をすること」と説明しましたが、読解力アップのために、基礎訓練ではどんどん要約をしてみましょう。

その際、注意すべきことは、いろいろな文字数で要約を作成してみるということです。私は200字、100字、50字、20字、の要約を作らせるようにしています。異なった文字数で要約を作ることで、どのくらいの文字数で、どの程度書けるかがわかり、本番でも文字数が足らなくなったり、逆にあまったりということがなくなります。

(3)視写した記事について論文を書いてみる。
せっかく視写をして、注意深く文章を読みとったのですから、次の段階として、視写した文章について、小論文を書いてみましょう。つまり、視写した文章が小論文入試で出題されたと仮定して、その文章に関して小論文を書いてみるのです。

あなたは視写した段階で、すでに矛盾点や問題点を探しながら文章を読んでいます。ですからそれら視写した時に見つけた矛盾点や問題点を「引用」し、それに対して「問題提起」して「判断」を下し、「根拠」を挙げて、自分の論文を書いていくのです。

この論文で合否が判定されるわけではありません。投書の場合、相手も素人です。投書の主と議論するつもりで気楽に書きましょう。そうするうちに自然と論文型小論文の型にはまった、論文が書けるようになります。

さて、基礎訓練が終われば、あとは実戦形式で小論文の過去問を練習するだけです。書いて書いて書きまくりましょう。その際は、以下の三点に気をつけてください。

(4)ネタの転用を練習しよう
いくら周到に情報をインプットし、アレンジメントをしていても、すべての小論文に別々の「ネタ」を用意するわけには行きません。また、その必要もありません。なぜなら、おなじ「ネタ」を使い回せばいいからです。この「ネタ」の使い回しを、「ネタの転用」といいます。

このように、論文を書くことに慣れてきたら、自分の得意ネタをさまざまな課題に使い回す訓練をしてみて下さい。

(5)他人に自分の小論文を読んでもらおう
情報のアウトプットにおいて、実際に書くことと同じくらい大事なことに、書いたものを他の人に見てもらうというのがあります。

練習の論文を書き上げたら周りにいる人に読んでもらいましょう。自分では十分わかりやすく書いたつもりでも、他人の目で見ると、わかりずらいということはよくあることです。

じつは、この本を書いている私自身も、書きかけの原稿をまわりの友人たちに読んでもらい、コメントをもらいながらこの本を執筆しました。あなたも論文を書き上げたら、まわりの人に見てもらいコメントをもらいましょう。もし、まわりに適当な人がいない場合は、通信添削講座という手もあります。

(6)納得がいくまで書き直そう
小論文の実力は、書き直しの際に養われます。前回の答案の問題点を反省し、どこを直せばよりわかりやすくなるか、どのように論を展開すればより説得力が増すか、などを考えながら、納得がいくまで、何回も書き直しましょう。

また、これも信頼の置ける指導者に見てもらうことが肝心です。指導者が学校の先生の場合は、たとえいやがられても何回も書き直しの答案を持っていくようにしましょう。また、指導を受けているのが、通信添削の講座であれば、書き直しの制度のない通信添削は、受講する価値がありません。かならず、書き直しの制度のある通信添削講座を受講するようにしましょう。

家で小論文の問題に挑戦するときの注意点

初回は制限時間を守って、書き直しはじっくり時間をかける。かならず手書きで練習しよう!

「小論文」を自宅で書く場合、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?

「小論文」を自宅で書く場合に最も気をつけなければならないことは、

初回は制限時間を守って、書き直しはじっくり時間をかけて

ということです。

実際の小論文入試に制限時間がある以上、ある程度の時間内で小論文を書けるようにする訓練は必要不可欠です。ですから最初に小論文の問題に挑戦するときは、なるべく制限時間を守って書いてください。最初はなかなか制限時間内では書けないかも知れませんが、何回も繰り返すうちに感覚がつかめてきます。

そして、この最初の演習を繰り返す中で、自分なりの時間配分をつかんでください。特に自分が物理的に制限字数を埋めるのに何わかかるかはかならず把握しましょう。

反対に書き直しの時は、あせってはいけません。じっくり時間をかけて、構成の洗練、内容の吟味、推敲による文章のレベルアップに時間をかけてください。場合によっては途中で関連書籍を読んだり、インターネットで情報を集めたりしながら、ゆっくり執筆してくれてもかまいません。初回の執筆が実戦演習だとすれば、書き直しは実力アップのための実力養成訓練だと思ってください。

また、ふだんパソコン等を使って文章を書いている人も、小論文の練習のときは、

かならず手書きで練習

しましょう。

現在、試験場でパソコンをつかって小論文を書かせてくれる学校や会社はありません(将来はわかりませんが)。ですからかならず手書きで練習し、自分の手で文章を書くことになれておきましょう。

さて、これで小論文Web講座は閉講です。ここまで読んでくださった方、ほんとうにおつかれさまでした。

この講座で学んだことを、ぜひ実践に生かしてください。また、そのお手伝いをさせていただければ、とってもうれしいです。