第2講 「何を」「どう」書いたらよいか?

2-8:論文型小論文を「どう」書いたらよいか?その1(資料付き)

投稿日:2013年12月15日 更新日:


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「資料読みとり型」は小論文入試の主流派。資料を疑いながら読むことで、資料文の主張をきちんと把握しよう!

「資料読みとり型小論文」は、最近の大学入試用小論文の主流派です。あらかじめ資料が与えられ、それについて自分の考えを述べていきます。自分の意見を述べる以前に、資料文(英文や図表も含む)の読解力が試されますので、慎重に資料文を疑いながら読み、資料文の主張を読みとった上で、自分の意見を構築する必要があります。

そして、標準的な「資料読みとり型小論文」の構成は以下のようなります。

これが資料読みとり型の基本の型だ!

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それでは、この型に従って書かれた小論文を挙げます。課題は以下のものです。「作文型小論文」の演習と同じく、できれば次のページをめくる前に、あなたもこの演習課題に挑戦してみてください。


演習3:次の文章は、医療関係者からのひとつの発言です。これを読んで「死の教育」についてあなたの考えを論述しなさい。(八百字)

資料文
現代は死を否定した時代だといわれる。強さと生産性に価値を置き、人々はあたかも永遠に生き続けるとでもいうように、死を思うことを避けて毎日を過ごしている。しかし、死は確実に訪れる。死は不可避であり、厳粛な事実である。ところが死という現実を、家族内での出来事として経験したことのない若者が増えている。核家族化と、病院での死の増加がその理由だ。若い医師や看護婦の中にも、身内の死を経験したことのない者が多い。初めて遭遇する死が、受け持ち患者の死であるわけだ。

我々がに日常接する死は劇化され、着色された死である。その典型例がテレビの画面に現れる死だ。アニメやドラマの中で人はいとも簡単に死ぬ。ある心理学者が、夕方以降のテレビ番組を一週間調査したら死者が五百五十七人も出た、と報告していた。劇化された死には、現実の死が持つ厳しさや重さがない。

(中略:石井)

現代社会では、死を自然に体験し、みずから学習していくことが困難になってきている。死は教育されるべきものなのである。欧米諸国では、「死」が学校の教育プログラムの中に組み込まれている。そして「死の教育」(Death Education)という専門雑誌が定期的に刊行されている。

(中略:石井)

先日、子どもたちと見ていたテレビ番組で、まだ小さい二人の子どもを残して両親が事故で死亡する場面があった。私はその直後の夕食の時に、「もしお父さんとお母さんが同時に事故で死んだらどうするか」を、三人の子どもたちに尋ねてみた。はっきりとした答えは返ってこなかった。しかし、子どもたちはもしそうなったらどうしようかということを真剣に考えたようだった。

死の教育は家庭でも、学校でも、もっと真剣に取りくまれるべき重要な問題である。

(柏木哲夫『生と死を支える』より)〈九十分〉(長崎大・教育学部・幼稚園・小学・養護)


型どおりに書いてみよう(3) 型にもとづく解答例と注意事項

それでは演習3の解答例を挙げ、注意事項を述べます。

《解答例》
第1部 資料文からの「引用」
筆者は次のようにいう。「死の教育は家庭でも、学校でも、もっと真剣に取りくまれるべき重要な問題である」

第2部 「問題提起」+「判断」
はたして筆者のこの主張は妥当なものであろうか。たしかに「死の教育」は本来は家庭でも学校でも行われるべきものであろう。しかし、現在の学校教育では行われるべきものではない。

第3部 「根拠」
なぜなら現在の学校教育で「死の教育」が行われた場合、筆者の主張する「現実の死が持つ厳しさや重さ」を生徒に教えることはできないからだ。

 もし仮に、現在の学校教育の中に「死の教育」が採り入れられたとしたら、どのような授業が行われるであろうか。「道徳」の授業の例を挙げるまでもなく、そこには副読本と新聞記事の切り抜き、「死の教育」用のテレビ番組と、「劇化され、着色された死」が勢揃いするであろう。ことによると「死の教育」のペーパーテストが行われ、生徒たちは点数を取るために「死」を"お勉強"することになりかねない。

 また、学校教育で死の教育が行われた場合、生徒に偏った死生観を植え付ける危険性もある。

 戦前の学校では「お国のためにはよろこんで死ななければならない」という「死生観」が肯定され、それ以外の考え方は否定された。その結果、先の大戦で多くの悲劇が引き起こされた。これは極端な失敗例である。しかし、どのような「死生観」にせよ、学校教育で、ある一定の「死生観」を生徒に押しつけることは、非常に有害である。

第4部 「まとめ」(「判断」の反復+「提案」)
理想をいえば筆者のいうとおり、「死の教育は家庭でも、学校でも、もっと真剣に取りくまれるべき」ものであろう。しかし、現状では学校で「死の教育」を行うことには慎重にならざるを得ない。もし、学校で「死の教育」を扱う場合には、現在の学校教育の根本的見直しが必要であろう。

《注意事項》
 「資料読みとり型」の小論文を書くときには、以下の3点に気をつけなければなりません。

  • 資料文の読みとりをしっかりおこなう。疑いながら読み、問題提起できそうな部分を探す。
  • 資料文を正確に「引用」する(「要約」は要求されない限りしない)。
  • 「判断」には「たしかに~しかし~」パターンを使うとよい(このパターンに固執しすぎるのもよくない)。

(1)資料文の読みとりをしっかりおこなう。疑いながら読み、問題提起できそうな部分を探す。

「資料読みとり型」の答案を成功させるためには、与えられた資料を正確に読みとり、そこから論ずる価値のある問題を見つけだすことが必要になります。

そのためには、文章を疑いながら読み、問題提起できそうな場所を探しましょう。これを「文章につっこみを入れながら読む」といいます。

課題3の資料文でいえば、「いまの学校で死の教育がおこなわれたらどうなるだろう?」「いままで死の教育はしていなかっただろうか?」という"つっこみ"から「『死の教育』は現在の学校教育では行われるべきものではない」という判断が導き出されました。

このようにつっこみを入れながら、資料文を読むことで、自分自身の判断を生み出すことができます。

また、同じことは、図表や写真などにたいしてもいえます。図表や写真も、資料文と同じく何ごとかを主張しています。その主張を注意深く読みとり、答案の最初に引用するようにしましょう。

(2)資料文を正確に「引用」する(「要約」は要求されない限りしない)。

資料文はなるべくカギカッコ付きでそのまま「引用」しましょう。「要約」は相手の主張をねじ曲げたり、論点を曖昧にしてしまうおそれがあるため、設問で要求されない限りしてはいけません。

また、「引用」するのですから、資料文は一字たりとも変えてはいけません。問題となりそうな部分をそのまま正確に写しましょう。

もし、引用したい部分が長すぎる場合は、「中略」を使ってください。「我々がに日常接する死は劇化され、着色された死である。(中略)劇化された死には、現実の死が持つ厳しさや重さがない」(演習3の第2段落)のように使うのです。

このとき、たとえ「中略」を使っても、その部分で何をいっているのかは、わかるようにすることがポイントです。

(3)「判断」には「たしかに~しかし~」パターンを使うとよい(このパターンに固執しすぎるのもよくない)。

多くの場合、「資料読みとり型」の小論文で出題される資料文の主張は、全体としては納得できるものです。たとえば今回の課題3も、「死の教育が行われるべき」という大きな主張には多くの人が賛成できるでしょう。

このように大きな主張には賛成できるが、一部認められない点や気をつける点もある、という判断は前にも述べたように、「部分否定」の判断になります。そして、この「部分否定」を端的に表せるのが、「たしかに~しかし~」パターンなのです。課題3でいえば、「たしかに『死の教育』は本来は家庭でも学校でも行われるべきものであろう。しかし、現在の学校教育では行われるべきものではない」という部分です。

「たしかに~しかし~」パターンの良い点は、思考のバランスの良さを試験官にアピールすることができる点です。つまり、相手の主張に理解を示す柔軟さを示しつつ、それにとりこまれない独自性も示すことができるのです。ですから、バランスの良さをアピールしたい学部、業種の論文型小論文のときは、「たしかに~しかし~」パターンを使うとよいでしょう。



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