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情報のインプット(入力)、アレンジメント(整理)、アウトプット(出力)が日頃のトレーニングの三本柱!
「小論文」入試のために日頃はどんな勉強をしたらよいでしょうか?
「小論文」の日頃の勉強は、以下の3つの柱から成り立っています。
- 情報のインプット(入力)
- 情報のアレンジメント(整理)
- 情報のアウトプット(出力)
つまり、
- 小論文の内容となる情報を収集し、
- それを自分の知識として使えるよう整理し、
- 整理した自分の知識を使って、要求にあわせて自分の意見を表現すること
が、小論文の日頃のトレーニングなのです。
毎日新鮮な「ネタ」を仕入れ、それをいつでも使えるように下ごしらえし、客の好みに合わせて出す…、小論文の日頃のトレーニングはお寿司屋さんの仕事に似ています。
しかし、小論文のトレーニングがお寿司屋さんの仕事と違う点は、この三本柱が、別々に存在しているのではなく、密接に関係している、という点です。
つまり、この柱のどれか一つを行おうとすると、同時に他の柱の訓練もすることになる、ということなのです。
たとえば、インプットとアレンジメントは同時に進むことが多いですし、アレンジメントの過程で自分の意見を言葉にしようとすることは、アウトプットの練習になっています。アウトプットの過程で必要な情報をインプットしたり、それについてアレンジメントをおこなったりすることはよくあることです。
ですから、あなたは、この三本の柱を順番どおり、一つずつ行おうとする必要はありません。次の頁から紹介するトレーニングの具体的な方法を読んだなら、あなたは、できるところからどんどんトレーニングを始めてみて下さい。
情報のインプット(入力)
書くためには「ネタ」が必要。そのためにはあらゆる手段で情報をインプットし、新鮮な「ネタ」を多くたくわえよう!
「小論文」を書くためには、最初に「ネタ」となる情報を「インプット」しなければなりません。そして、情報のインプットのための代表的な方法は以下の4つです。
- 本を読む
- 新聞・雑誌を読む
- インターネットで情報を得る。
- いろいろな社会的経験を積む
なにをいまさら、と思われるかもしれません。しかし、これらの方法は本当に大事なのです。以下、私なりのアレンジを加えて一つずつ説明します。
(1)本を読む
情報をインプットするための一番オーソドックスな方法は、いろいろな本を読むことです。”小論文を書く”という視点から見た場合、本を読むことの利点には以下の4点があります。
- 小論文の「ネタ」となる知識を得ることができる。
- 小論文で使用されることの多い、抽象的なことばを覚えられる。
- 良い文体の本を読むことで、自分が小論文を書くときの文体のお手本を得ることができる。
- 何度も繰り返して読むことができ、本に書かれている内容に関してじっくり考えることができる。
ですから、とりあえず、志望領域に関係する本は、最低10冊は読んでおくことをお勧めします。専門書でなくてもかまいません。最近は新書のシリーズが数多く出版されていますので、志望領域で現在起こっている問題点をそれらの本で確認しておきましょう。
その時、注意すべきなのは、かならず異なった意見を主張している複数の本を読む、ということです。主張の異なる複数の本を読むことによって、一つの問題を、さまざまな角度で考えることができます。そしてその過程で自分の意見を作り上げることができるのです。
(2)新聞・雑誌を読む
情報をインプットするための第2の方法は、新聞を読むことです。小論文入試に出題されるテーマは、意外と時事ネタが多いものです。
いずれにしろ、どのような事件であれ、それがどんな事件だったかを知らなければ話しになりません。ですから、新聞には毎日目を通すようにしましょう。
さて、毎日、新聞を読むことにして、では、どの新聞を読んだらよいでしょうか。それに関しては、一応このように覚えておいてください。
- 大学入試用なら「朝日」
- 就職試験用なら「日経」
大学入試に出題される新聞記事は、圧倒的に朝日新聞から引用されています。ですので、まず一紙めは「朝日」、そして対立する意見を知るために二紙めを「讀賣」にしましょう。そうすることで一つの事件に対する異なった意見を知ることができます。
また、就職試験用にはやはり「日経」(日本経済新聞)を読んでおくことをおすすめします。採用担当官が読んでいる新聞のトップがやはり「日経」でした。敵を知るためにも、「日経」を読むことをおすすめします。
しかし、新聞を理解するためには、ある程度の基礎知識が必要となります。それら基礎知識がない場合は、新聞は読んでも理解できません。
そのような場合は、雑誌の特集記事を読むことをおすすめします。「アエラ」や「Yomiuri Weekly」「ニューズウィーク日本語版」などを、立ち読みでもかまいませんので、一通り目を通しておくと良いでしょう。
この場合も、複数の雑誌に目を通すのがポイントです。
(3)インターネットで情報を得る。
志望する領域に関する情報や、小論文の資料文に関する情報をインターネットで収集するという方法も非常に有効です。代表的な方法は以下の3つです。
- Yahoo!Japanなどの検索エンジンを利用する
- 掲示板・メーリングリストなどに参加する
- 新聞記事のクリッピングサービスを利用する
とりあえず、わからないことがあったら検索エンジンにキーワードを入れて検索してみましょう。たいがいのことに関しては、必要十分な情報が得られるはずです。
そして、ある特定のトピックを深く知りたいときは、掲示板やメーリングリストに参加するのも有効です。
また、各新聞社では、登録メンバーに、その人の興味ある記事だけを配送してくれる新聞記事のクリッピングサービスを行っているものもあります。特定領域に関する記事を網羅して読みたい人にはお勧めです。
(4)いろいろな社会的経験を積む
(1)から(3)まで、すべて言葉を使って間接的に情報を得る方法を述べてきました。しかし、直接的に自分の体で得た情報はなんといっても一番説得力があります。
いろいろなことを経験しましょう。その経験が他人の文章の理解を助け、自分の小論文の説得力を高める、最高の「ネタ」を提供してくれます。「経験」は「言葉」より広く、深いのです。いろいろな経験をしましょう。
情報のアレンジメント(整理)
「情報のアレンジメント」とは、入力した情報を整理して、「自分の意見」を作り上げること! キーワードは「つっこみ」です。
情報をインプットしたら、次はアレンジメント(整理)です。そして情報のアレンジメントにおいて大切なのは、技術ではなく態度です。その態度とは、
すべてのことに”つっこみ”を入れようとする
態度です。
なぜ、つっこみを入れることが情報のアレンジメントにつながるのでしょうか?
それは、つっこみを入れるということが、相手の意見に対して異論を唱えることだからです。そして、異論を唱えるということは、まさに相手の意見とは違う「自分の意見」をいうことなのです。
論文型小論文の基本の型の説明で述べましたが、自分の意見は、他人の意見との違いを考えることで生まれます。そのためには他人の意見を鋭く疑い、どこかおかしなところがあるのではないか?もっと違う見方があるのではないか?と何ごとにも”つっこみ”を入れる気持ちで接する必要があるのです。
そして、そういう態度で接することが、じつは一番誠実に相手の考えを理解しようとする態度なのです。
しかし、ただ漫然と”つっこもう”と心がけているだけでは、なかなかつっこめません。具体的なつっこむ相手とつっこむ方法が必要です。以下に代表的なつっこむべき相手とそれらにどのようにつっこむかを説明します。以下の4つです。
- 文章をつっこみを入れながら読む
- 気に入らない相手につっこみを入れる(心の中で)
- 友達とつっこみを入れあいながら議論する
- 自分の常識につっこみを入れる
以下、詳しく説明します。
(1)文章をつっこみを入れながら読む
われわれには、活字で書かれた文章は、つい信じてしまう、という癖があります。とくに新聞や教科書など、エラそうにしている文章に対してはなおさらです。
ですから、文章を読むときには、常に「ほんまかいな?」「うそちゃうか?」とつっこみを入れながら(別に関西弁でなくてもいいですが…)読むようにしましょう。
たとえば「健全な肉体に健全な精神はやどる」という文を見たとき、私の中には「健全な精神って何?誰が決めるの?」「肉体的に障害を持った人には健全な精神が宿らないの?」といったつっこみが生まれてきます。そして、このつっこみを、他人にもわかるように「根拠」を挙げながら丁寧に説明すると、新たな自分自身の「理論」ができあがるのです。たったいまから、すべての文章(この本の文章も例外ではありません)につっこみを入れながら読むようにしましょう。
(2)気に入らない相手につっこみを入れる(心の中で)
「いやな親」「いやな教師」「いやな友達」などなど、世の中には「いやなヤツ」がいっぱいです。でもなぜ、そいつはそんなに「いやなヤツ」なのでしょう。それはそいつが持っている考えと、自分の持っている考えがことごとく対立しているからなのです。
しかし、そんな「いやなヤツ」に「言葉」で反論しようとすることも、小論文のよい訓練です。 別に面と向かっていう必要はありません(いってもいいですが責任は持ちません)。「いやなヤツ」と意見の上で衝突したときは、反論をきちんと構築してみましょう。
「ムカツク!」と思ったら、「ムカツク!」といって終わりにするのではなく、「なぜムカツクのか」「相手を打ち負かし、スカッとするにはどういい返したらよいのか」等を冷静に考えます。できれば文章にするとなおさら良いでしょう。きっとその文章を書き終える頃にはムカツキもとれ、スッキリとした気分になり、おまけに小論文の力も付いているはずです。まさに一石三鳥の方法といえるでしょう。
(3)友達とつっこみを入れあいながら議論する
友達と共同で何かをするときは、つっこみを入れあいながら、なるべく「よりよい方法」を見つけ出すよう議論しましょう。「旅行の計画」や、「部活動など組織の運営方法」、「夕飯に何を食うか」など、何でもかまいません。意見をいい合い、意見が食い違ったときは、対立を恐れずに、言葉を尽くして議論しましょう。
この方法は、小論文でいえば、「部分否定」の「判断」や、よりよい「提案」を生み出すための訓練といえます。
基本的には相手の立場を認めつつ、自分の意見を「たしかに…だが、しかし…ではないか」という形で主張します。まさに小論文の「部分否定」の定型で自分の意見を述べていくのです。そうやってお互いの意見をやり取りする過程で、お互いの意見の対立を解消する、より良い第三の意見を見つけ出せれば、こんなに良いことはありません。
(4)自分の常識につっこみを入れる
もっとも頑固で、一番つっこむのが難しいのは、なにあろう「自分の常識」です。
疑う余地がないと思われる、自分にとっての「当たり前」をこそ疑いましょう。そして、他の人にとっての「当たり前」のほうが、じつは本当の「当たり前」なのではないか、と一度は自分に問うてみることです。
たとえば、新聞の投書の意見に対して「そのとおり!」「つっこむところなし!」と思うことがあるかも知れません。しかしそんなときこそ、立ち止まって考えて欲しいのです。そこに書かれていたことは、真実なのではなく、もしかしたら自分の「常識」と同質なだけかも知れないのです。別な考え方がないかどうか、もしかしたら別な「常識」のほうが正しいのではないか、と一度自分に問うてみてください。
情報のアウトプット(出力)
基礎訓練をしたら、とにかく書いて慣れること!書き直しと他の人に見てもらうことも忘れずに。
インプットとアレンジメントが終われば、あとは、アウトプット、つまり書くことだけです。アウトプットで重要なのは、「とにかく書くこと」そして「信頼のおける指導者に添削してもらうこと」さらに「納得がいくまで書き直すこと」です。 しかし、すぐに小論文の問題に取りかかるのには抵抗がある、という人もいるでしょう。また、もう少し基礎訓練をしてから問題に取り組みたい、という人もいるかもしれません。そのような人には、以下のような基礎訓練をお薦めします。
- 新聞の投書や、コラムなどを視写する。
- 視写した記事を要約してみる
- 視写した記事について論文を書いてみる。
以下、詳しく説明します。
(1)新聞の投書や、コラムなどを視写する。
「視写」というのは、新聞記事などを、一字一句違わず「視ながら」「写す」ことです。「えっ、ただ視ながら写すだけ?」と思われるかも知れませんが、じつは、この方法は小論文の訓練という観点からみると、以下の二つの点で非常に有効な手段なのです。
- 記事の内容を注意深く読むことができる。
- 自分が小論文を書くときのリズムや感覚がつかめる
1は、読解力の養成という点から見た利点です。他人の文章を視ながら写すことで、その人がどのようなつもりで、その文章を書いたのかがわかるようになります。なぜここでこの言葉を使うのか、なぜここに読点をおくのか、この事例は何のために書かれているのか、などその文章を書いた人になったつもりで、注意深く読むことで、その文章の内容を深く理解できるようになります。
2は実際に小論文を書くという点から見た利点です。投書は原稿用紙1.5~3枚の長さです。これらの長さはほぼ、標準的な小論文の制限字数と同じです。ですから、この分量の文章を視写することは、実際に自分が小論文を書くときの予行演習にもなるのです。
この方法の良い点は、「小論文を勉強するのだぞ」という構え無しに、小論文を勉強することができることです。小論文の基礎訓練は、新聞記事の視写から始めてみましょう。
(2)視写した記事を要約してみる
読解力に自信のない人、過去問で要約を求められることがわかっている人は、視写した記事を要約してみましょう。
要約は、文章の大意をつかむ良い訓練です。長い文章のどこが大事で、どこが大事でないかを見極めることは、そのまま読解力の向上につながります。論文型小論文の説明で、「要約はなるべく避けて引用をすること」と説明しましたが、読解力アップのために、基礎訓練ではどんどん要約をしてみましょう。
その際、注意すべきことは、いろいろな文字数で要約を作成してみるということです。私は200字、100字、50字、20字、の要約を作らせるようにしています。異なった文字数で要約を作ることで、どのくらいの文字数で、どの程度書けるかがわかり、本番でも文字数が足らなくなったり、逆にあまったりということがなくなります。
(3)視写した記事について論文を書いてみる。
せっかく視写をして、注意深く文章を読みとったのですから、次の段階として、視写した文章について、小論文を書いてみましょう。つまり、視写した文章が小論文入試で出題されたと仮定して、その文章に関して小論文を書いてみるのです。
あなたは視写した段階で、すでに矛盾点や問題点を探しながら文章を読んでいます。ですからそれら視写した時に見つけた矛盾点や問題点を「引用」し、それに対して「問題提起」して「判断」を下し、「根拠」を挙げて、自分の論文を書いていくのです。
この論文で合否が判定されるわけではありません。投書の場合、相手も素人です。投書の主と議論するつもりで気楽に書きましょう。そうするうちに自然と論文型小論文の型にはまった、論文が書けるようになります。
さて、基礎訓練が終われば、あとは実戦形式で小論文の過去問を練習するだけです。書いて書いて書きまくりましょう。その際は、以下の三点に気をつけてください。
(4)ネタの転用を練習しよう
いくら周到に情報をインプットし、アレンジメントをしていても、すべての小論文に別々の「ネタ」を用意するわけには行きません。また、その必要もありません。なぜなら、おなじ「ネタ」を使い回せばいいからです。この「ネタ」の使い回しを、「ネタの転用」といいます。
このように、論文を書くことに慣れてきたら、自分の得意ネタをさまざまな課題に使い回す訓練をしてみて下さい。
(5)他人に自分の小論文を読んでもらおう
情報のアウトプットにおいて、実際に書くことと同じくらい大事なことに、書いたものを他の人に見てもらうというのがあります。
練習の論文を書き上げたら周りにいる人に読んでもらいましょう。自分では十分わかりやすく書いたつもりでも、他人の目で見ると、わかりずらいということはよくあることです。
じつは、この本を書いている私自身も、書きかけの原稿をまわりの友人たちに読んでもらい、コメントをもらいながらこの本を執筆しました。あなたも論文を書き上げたら、まわりの人に見てもらいコメントをもらいましょう。もし、まわりに適当な人がいない場合は、通信添削講座という手もあります。
(6)納得がいくまで書き直そう
小論文の実力は、書き直しの際に養われます。前回の答案の問題点を反省し、どこを直せばよりわかりやすくなるか、どのように論を展開すればより説得力が増すか、などを考えながら、納得がいくまで、何回も書き直しましょう。
また、これも信頼の置ける指導者に見てもらうことが肝心です。指導者が学校の先生の場合は、たとえいやがられても何回も書き直しの答案を持っていくようにしましょう。また、指導を受けているのが、通信添削の講座であれば、書き直しの制度のない通信添削は、受講する価値がありません。かならず、書き直しの制度のある通信添削講座を受講するようにしましょう。
家で小論文の問題に挑戦するときの注意点
初回は制限時間を守って、書き直しはじっくり時間をかける。かならず手書きで練習しよう!
「小論文」を自宅で書く場合、どんなことに気をつけたらいいでしょうか?
「小論文」を自宅で書く場合に最も気をつけなければならないことは、
初回は制限時間を守って、書き直しはじっくり時間をかけて
ということです。
実際の小論文入試に制限時間がある以上、ある程度の時間内で小論文を書けるようにする訓練は必要不可欠です。ですから最初に小論文の問題に挑戦するときは、なるべく制限時間を守って書いてください。最初はなかなか制限時間内では書けないかも知れませんが、何回も繰り返すうちに感覚がつかめてきます。
そして、この最初の演習を繰り返す中で、自分なりの時間配分をつかんでください。特に自分が物理的に制限字数を埋めるのに何わかかるかはかならず把握しましょう。
反対に書き直しの時は、あせってはいけません。じっくり時間をかけて、構成の洗練、内容の吟味、推敲による文章のレベルアップに時間をかけてください。場合によっては途中で関連書籍を読んだり、インターネットで情報を集めたりしながら、ゆっくり執筆してくれてもかまいません。初回の執筆が実戦演習だとすれば、書き直しは実力アップのための実力養成訓練だと思ってください。
また、ふだんパソコン等を使って文章を書いている人も、小論文の練習のときは、
かならず手書きで練習
しましょう。
現在、試験場でパソコンをつかって小論文を書かせてくれる学校や会社はありません(将来はわかりませんが)。ですからかならず手書きで練習し、自分の手で文章を書くことになれておきましょう。
さて、これで小論文Web講座は閉講です。ここまで読んでくださった方、ほんとうにおつかれさまでした。
この講座で学んだことを、ぜひ実践に生かしてください。また、そのお手伝いをさせていただければ、とってもうれしいです。
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