2-1:内容から見た小論文の種類


【ご注意!】 このサイトの記述内容は、本が発行された2002年の状況が元となっております。小論文を巡る状況は大きく変わりましたので、最新の知見につきましては「論文オンライン」の公式Webサイトをご覧ください。

二大柱は「作文型小論文」と「論文型小論文」。この二つを押さえるところからすべては始まる。

次に知っておくべきことは、自分がどのような小論文を書いたらよいか、ということです。

なお、ここから先は、できれば、自分の志望する学校や会社の過去問を手に入れてから読むようにしてください。過去問を分析しながら以下の部分を読むことで、自分が書くべき小論文の種類がわかります。

まず最初は、書くべき内容による小論文の型を説明します。(カッコ内は入学試験・就職試験どちらに出題されるかを表します)

(1)作文型小論文(入試・就職)

本来の意味での「作文」を書くべき試験問題。
主に、受験生の人柄や性格を見るのに使われる。
入学試験における推薦入試の問題や人柄的な学部適性を見る問題、就職試験における志望動機を問う問題や熱意を計る問題に多く使われ、受験生がどういう人間なのかを見るために使われることが多い。

〈評価の観点〉

  • 人柄
  • 性格
  • 態度
  • 熱意
  • 基本的な読み書き能力
  • 人生観・発想力

〈出題例〉

  • 自分の出会った最も感動的で興味深いできごと(武蔵野美術大学造形学部映像学科、1998年度)
  • 「私がかいた赤っ恥」(北海道放送、2000年度)
  • 「私の人生設計」(慶應義塾大学医学部、1998年度)
  • 「21世紀の私は」(世界文化社、1999年度)
  • 「普通」(日本大学芸術学部放送学科、1998年度)
  • 「私の職業観」(日本オリベッティ)

(2)論文型小論文(入試・就職)

本来の意味での「論文」を書くべき試験問題。受験生の論理的記述力を見る目的で使われ、文字通り「論文」を書かなければならない。あらゆる入試で使用され、幅広い知識と正確な文章表現を要求される。

〈評価の観点〉

  • 資料文や図表の読みとり能力
  • 論理的思考力
  • 社会常識
  • 時事問題に対する感受性
  • 論理的な文章を書く能力
  • 自分の意見を構築する能力

〈出題例〉

  • 「マスコミと暴力」(江戸川大学社会学部マス・コミュニケーション、2001年度)
  • 今後の自動車産業への提言(日産自動車)
  • 劇場のパフォーマンスという観点から「いじめ」の構造を分析した文章を読み、要旨をまとめた上で、様々なタイプのある「いじめ」を、具体例を挙げながら分析する。(京都大学教育学部教育科学科、1999年度)
  • 誤報であった松本サリン事件での報道のあり方をめぐって書かれた文章を読み、犯罪報道において実名を出すことの是非を論じる。(熊本大学法学部、1998年度)
  • 放射能汚染されたチェルノブイリに生きる人びとを描いた文章Aと、失われゆくアイヌ世界を描いた文章Bとを読み、両者をふまえてテーマを設定し、タイトルをつけ、それについて自分の考えを論述する。(立教大学文学部B方式、2000年度)
  • 「あなたは、21世紀の日本は、どのような国であってほしいと思いますか。次の中から、3つまであげてください」という質問をした世論調査の回答結果のグラフを読み、その結果について論述し、次に自分の考えを論述する。(富山大学教育学部生涯-人間環境、2001年度)
  • 与えられたモチーフで自分をモデルとして撮影し、その写真作品の意図を文章で表現する。(東京工芸大学芸術学部写真学科、2001年度)

(3)随筆型小論文(入試)

「作文型小論文」と「論文型小論文」の中間に位置する小論文。個人的な経験と社会的事実を関連づけて述べる小論文で、人文系や芸術系の問題、国公立大学の後期試験などにこの種の論文が多い。早稲田大学の一文・二文はこの種の問題の典型。論理的記述力に加え、文学的な発想も必要とされるため、ある意味ではもっとも難しい問題。

〈評価の観点〉

  • 資料文や図表の読みとり能力
  • 資料文や社会的事象から問題を発見する能力
  • 社会常識
  • 時事問題に対する感受性
  • ある程度文学的で抽象的な文章を書く能力
  • 自分の経験を社会的事象と結びつける能力・読者を引きつける構成力など

〈出題例〉

  • ある父親が大学生のわが子に「若い君に、いまだ固まらない熱い岸辺[アジア]を歩くことを、私はすすめたい」とメッセージを送る手紙を読んで、この手紙に答えるかたちで返信を書く。(早稲田大学第一文学部、1996年度)

(4)創作型小論文(入試・就職)

与えられた課題(文章・写真・絵など)に関して、小説や、戯曲、キャッチコピーなどを作成する問題。おもに発想力を見るのに使われる。広告業界やマスコミなど独創的な発想が要求される部署の就職試験や、日大の芸術学部等、芸術系の大学などで出題される。

〈評価の観点〉

  • 柔軟な思考力
  • ユニークな発想力
  • 文学的文章力
  • 企画力など

〈出題例〉

  • 「コンピューター・再生紙・盆踊り」のうち二つを使って物語を論述する。(日本大学芸術学部演劇学科、1999年度)
  • 「一瞬の……」ということばを使って作文を書く。(日本大学芸術学部放送学科、2001年度)
  • ユニークな写真を題材にショートストーリーを作成(集英社、2000年度)
  • 「離婚・ガーデニング・食べ放題」(小学館、1999年度)
  • 「殺人・祈り・手紙」(日本大学芸術学部文芸学科、2001年度)
  • 「流転・フィルター・爛熟」(学習研究社)

(5)その他の小論文

現代文型(入試)
「小論文」とは名ばかりの、どちらかといえば「現代文」の問題に近い問題。大学等の入学試験に出題される。漢字の読み書きや空所補充、要約、表題付けなど、まとまった分量の文章を書かせる問題ではない。受験生は「小論文」の問題を解く、と考えるよりも「現代文」の問題を解く、と思った方がよい。

理系教科型(入試)
「現代文型」と同様、「小論文」とは名ばかりの問題。受験生は「小論文」の問題を解く、と考えるよりも「理科」あるいは「数学」の問題を解くと思った方がよい。

総合問題型(入試)
小論文を書くのに、その領域の専門知識がないと論述できないような問題。まず、その専門知識に関する普通の問題を解いて、その答えを元に論述する形の問題である。



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