2-5:作文型小論文を「どう」書いたらよいか?その2(未来の自分中心型)


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「未来の自分」中心型では、具体的に将来自分が何をしたいのかを述べよう。語るべきは、大きな夢にむかう小さな一歩!

「未来の自分」中心型の作文型小論文は、あなたの未来について重点的に聞いてくる問題です。典型的な例は「将来どんな○○になりたいか」「大学で学びたいこと」などです。そして、標準的な「〈志望動機中心型〉作文型小論文」の構成は以下のようなものになります。

これが「未来の自分」中心型の基本の型だ!

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それでは、この型に従って書かれた小論文を挙げます。課題は以下のものです。「過去の自分」中心型と同じく、できればあなたもこの演習課題に挑戦してみてください。

演習2:「私の夢」(制限字数800字 家庭電器メーカー)

型どおりに書いてみよう(2) 型にもとづく解答例と注意事項

それでは演習2の解答例を挙げ、注意事項を述べます。

《解答例》
第1部 「夢」の宣言
(=「未来の自分」を端的に答える)
私は将来、本当にユーザーの立場に立って機械を設計できるエンジニアになりたい。これが私の夢である。

第2部 その「夢」を抱いたいきさつを述べる。
(=「過去の自分」)
先日、音楽好きの祖父がいままで使っていたレコードプレーヤーが故障してしまった。祖父は修理したがったのだが、部品が製造中止となっており、修理は不可能であった。その後父が、最新式のCDプレーヤーと祖父の好きな音楽のCDを与えたのだが、祖父はぷっつりと音楽を聞かなくなってしまった。原因はCDプレーヤーのスイッチ類が英語で書かれていること、たくさんの機能が付いて操作が複雑になりすぎたことであった。便利な高機能の機械が、祖父を大好きな音楽から遠ざけてしまったのだ。このとき私は、ユーザーの要求に沿わない高機能の機械は単なるがらくたにすぎないこと、ユーザーの求めるものをきちんと反映させた機械を設計することがいかに大事であるかを痛感したのである。

第3部 「目標」とそれ達成するための具体的方法
(=「未来の自分」)
本当にユーザー本位の機械を設計できるようになるためには、まず、人間のことをよく知らなければならない。そのために私は、大学と大学院時代に人間工学や認知心理学などを学んできた。しかし、人間の研究には終わりがない。この領域はこれからも私が勉強し続けなければならない領域である。
また、いくら大学で学んだとはいえ、私は社会人としての実務経験はゼロである。志望は開発のエンジニアとはいえ、御社の仕事内容を一日でも理解するために、配属先の仕事を精一杯行いたいと思う。

第4部 まとめ(=「課題」の決定とそれを達成する決意表明)
将来の夢を実現させるために、いま自分がやらねばならないことは、いままで以上に人間をよく観察し、人間と機械の理想的な関係を考えることである。そして一日も早く、仕事を覚え、将来の夢を実現させたいと思う。

《注意事項》

「未来の自分」中心の「作文型小論文」を書くときのポイントは、

「夢」「目標」「課題」を段階的にはっきりと把握しているか

ということです。以下にそれぞれを解説します。

「夢」とは?
「夢」とは「自分が一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」です。
その意味では、高校生のあなたがよく書く「弁護士になりたい」「医者になりたい」という「夢」は「夢」ではありません。なぜならそれらになったとたんに「夢」が「夢」でなくなってしまうからです。

これらを「夢」にするには「○○な弁護士になりたい」「○○な医者になりたい」という「○○」の部分を考えてください。「○○」の部分を加えることで、それは「夢」になります。

たとえば上記の「夢」を簡単に「人の気持ちがわかる弁護士になりたい」とか「患者の気持ちがわかる医者になりたい」とするだけで、それは「一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」になります。もちろん、「○○な××になりたい」という「夢」の形でなくてももかまいません。「○○がしたい」という具体的な行動の形であってもかまいません。とにかく「一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」を掲げることが「夢」のポイントです。

「目標」とは?
「目標」というのは「『夢』に向かう上で、近い将来かならず克服しなければならない課題」のことです。

しかし、ここでも「そのためには弁護士にならねばならない」や「そのためには医者にならねばならない」は「目標」として失格です。

ここでは「夢」のところで付け加えた「○○な」の部分を達成するための「目標」を掲げなければなりません。演習2でいえば、「本当にユーザーの立場に立って機械を設計できるエンジニアにな」る、という「夢」の「本当にユーザーの立場に立って機械を設計できる」という部分を達成するために「人間工学や認知心理学などを学ぶ」という「目標」が立てられています。

とにかく、たとえ、その資格を取るのが非常に難しいものだとしても「○○になる」という「目標」以外の「目標」を立てましょう。

「課題」とは?
最後に「課題」とは、「「夢」や「目標」に到達するために、いますぐに始めなければならないこと、あるいは、いますでにやっていること」です。

ここには、志望している学校や会社で、まず自分がするべきことが含まれる場合が多くなります。演習2でいえば、「人間をよく観察すること」「人間と機械の理想的な関係を考えること」そして「一日も早く、仕事を覚え」ることが「課題」になっています。

このように「課題」を決定するときには「いますぐに始めなければならないこと」そして「いますでにやっていること」を挙げることが重要です。

「未来の自分」中心型の小論文の場合、「遠くの大きな目標に向かって近くの小さな一歩が踏み出せているか」が評価のポイントになります。その意味でも、自分自身の「夢」「目標」「課題」をしっかり把握することが大事なのです。

以上が「作文型小論文」の基本の二つの型による、小論文の書き方です。では、つぎに「論文型小論文」の基本の型を解説しましょう。



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