2-9:論文型小論文を「どう」書いたらよいか?その2(テーマのみ)


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テーマ型小論文は就職試験の主流派。日頃の問題意識が問われる。幅広い知識で的確に社会的文脈を押さえよう!

「テーマ型小論文」は、最近は大学入試ではほとんど見かけなくなりました。しかし、就職試験ではいまだに論文型小論文の主流派となっています。テーマだけが与えられていますので、自分の知識の中から社会的文脈(みなが知っている事実・意見)を引用し、そこから論ずる問題を限定して自分の意見を述べていかなければなりません。その意味で「資料読みとり型」よりも難しいといえるでしょう。

そして、標準的な「テーマ型小論文」の構成は以下のようなります。

これがテーマ型の基本の型だ!

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それでは、この型に従って書かれた小論文を挙げます。課題は以下のものです。これまでの演習と同じく、できれば次のページをめくる前に、あなたもこの演習課題に挑戦してみてください。

演習4:携帯電話やPHS、電子メール等、新たなコミュニケーションの手段が増えている。これらのコミュニケーションの手段の持つ功罪について述べよ。(800字 前橋工科大 社会人入試)

型どおりに書いてみよう(4) 型にもとづく解答例と注意事項

それでは演習4の解答例を挙げ、注意事項を述べましょう。

《解答例》
第1部 「社会的文脈」の「引用」
インターネット等の普及により、いま、社会は急速に情報化している。この流れを支えているのが、携帯電話やPHS、電子メール等、新たなコミュニケーションの手段である。 

第2部 (「問題提起」)+「判断」
これら新たなコミュニケーションの手段の持つ功罪とはなにか。「功」は、いままでは作ることができなかった、人と人とのネットワークをすばやく作り上げることができる点である。そして「罪」は、人々を否応無しに情報の洪水にさらしてしまう点である。

第3部 「根拠」
以前、私は、電子メールで一通のチェーンメールを受信した。RH(-)ABという特殊な血液型を持つ女性の手術のために、現在、同じ血液型の人を探していること、そして、このメールを読んだら複数の友人にそのメールを転送してほしいという内容である。

 このチェーンメールは内容が内容だけに、非常に速く広がり、このメールに書かれていた連絡先の病院には、一日に何百件もの問い合わせの電話がかかり、業務が停滞してしまったそうである。この事件は情報化社会におけるデマの問題として、新聞紙上で取り上げられ、結局、大きなニュースとなってしまった。

 しかし、その一方で、この事件は意外な副産物を生み出した。このメールをきっかけに、事実、この特殊な血液型を持つ人たちが、お互いを助け合うために新たなネットワークを作り出したのである。

 この事件は、情報化社会を支える新たなコミュニケーションの手段が持つ功罪を、鮮明に浮かび上がらせた。つまり、これらの手段は不特定多数の人々をいやおうなしに虚偽の情報にさらし、そして同時に、新たな価値あるネットワークを生み出したのである。

第4部 まとめ(「判断」の反復or「提案」)
社会の情報化は不可逆的な流れである。我々は今後、この流れを支える新たなコミュニケーション手段の持つ功罪をしっかり認識して、それらと付き合うべきであろう。

《注意事項》
 「テーマ型」小論文の場合は、以下の2点に気をつけなければなりません。

  • 社会的文脈は後ろの展開にあわせて引用する。分量と「鮮度」にも気をつけて。
  • 問題提起は設問に従って。とくに何も要求されていないときは自分で論述する範囲を限定すること。

(1)社会的文脈は後ろの展開にあわせて引用する。分量と「鮮度」にも気をつけて。

テーマ型小論文の悪い例でよく見られるのが、社会的文脈(みんなが知っている事実や意見)だけを延々と書いて、最後に「われわれはこれらのことを深く考えなければならない」と書いて終わり、という答案です。

「引用」部分の社会的文脈は、資料読みとり型小論文における引用された資料文と同じ働きをするためのものです。つまり、自分の意見を展開する前提となる部分であり、大事なのは、そこを元に展開される「判断」と「根拠」、そして「提案」の方なのです。

その意味で、社会的文脈は後ろの展開にあわせて引用されなければなりません。社会的文脈を引用するときは、自分はそれを元にどういうことを主張するつもりなのか、を考えながら引用しましょう。

そして当然のことながら、引用に費やす分量にも注意してください。制限字数600字ならば、100字前後、全体の6分の1から5分の1に押さえましょう。

また、引用する社会的文脈の「鮮度」にも気をつけてください。テーマ型小論文は、あなたがどの程度社会的な出来事に興味関心を持ち、考えているかを計る問題でもあります。あまりに古い例や、いつの時代にも通用してしまう普遍的内容を引用したのではあなたの情報に対するアンテナの感度を疑われてしまいます。「ネタはなるべく鮮度の良いものを」と覚えておいてください。(ちなみに、この答案で挙げている例は、今では古くなってしまっています)

(2)問題提起は設問に従って。とくに何も要求されていないときは自分で論述する範囲を限定すること。

最近のテーマ型小論文の傾向として、問題提起がすでにふくまれている設問が設定される傾向があります。

たとえば、課題4では「これらのコミュニケーションの手段の持つ功罪について述べよ」と設問は要求しています。ですから、必然的に問題提起は「これら新たなコミュニケーションの手段の持つ功罪とはなにか」となります。そして、これ以外の問題提起は許されません。

このように設問にすでに問題提起が含まれている場合は、その問題提起に従うようにしてください。

また、とくに問題提起が指定されていない場合は、自分で論述する範囲を限定し、それについて判断を下すようにしてください。どのように論述範囲を限定するかは「これが典型的な論文型小論文だ!」の「教育について」の答案を参照してください。

最後に論文型小論文の型の話のまとめとして大事なことを述べておきます。

論文型小論文の基本の型は、すべて「引用」→「判断」→「根拠」→「まとめor提案」の順番で構成されています。しかし実際、小論文の構成を考えるときは、この4つのステップは、あなたの頭の中で同時に進むのです。

つまり、「引用」→「問題提起」→「判断」→「根拠」→「まとめor提案」と順番に考えて、論文を組み立てていくのではなく、設問を読んで思いついたところをもとに、それ以外の部分を考えていくのです。

たとえば、今回私は、「死の教育」に関する演習3では、「引用」部分を先に決めて、そこからそれ以外の部分を考えていきました。また、「新たなコミュニケーションの手段の持つ功罪」の演習4では、「根拠」となるべき事実(チェーンメールの件)を先に思いついて、そこからそれ以外の部分を考えていきました。

ですから、あまり、この「引用」→「問題提起」→「判断」→「根拠」→「まとめor提案」という順序にとらわれすぎないようにしてください。与えられた設問に関して柔軟に思考し、自分の内側にどのような素材があるかをよく考えるのです。そして、「引用」「判断」「根拠」「提案」のどこからでも、縦横無尽に論文の構成を考えられるようになりましょう。

さて、以上で、基本的な小論文の型の説明は終了です。それではいよいよ実際の小論文の問題に挑戦しましょう。でも、その前に質問です。

 いま、あなたは小論文の問題を解こうとしています。あなたがまず最初にしなければならないことは何でしょう?



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