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添削屋日乗

小論文お悩み相談室

将来の夢がない人のための「将来の夢」作文の書き方【小論文お悩み相談室】

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Q.「将来の夢」作文の書き方を教えてください。

私には将来の夢がありません。それなのに学校の宿題で「将来の夢」という題で作文を書けと言われています。どうしたらよいでしょうか? (高校1年:鶴丸)

A.「将来の夢」作文を書くことで将来の夢を作りましょう。気負わず、しかし真剣に向き合うのがポイントです。

鶴丸さん、お気持ちはよく分かります。高校1年で「将来の夢」を書くのって大変ですよね。

じつは、今の中・高生に「将来の夢」という題で作文を書かせるのは、ある意味残酷な行為だと私自身は思ってます。

まだ自分が何者であるか分かっていない。なのに世間では少子高齢化で国の財政が破綻するだのAIの台頭で仕事が奪われるだの暗い未来予測ばかり喧伝されてる。

それでも学校の先生は、明るく、前向きで、希望に満ちた「将来の夢」を書けと暗に要求してくる。つらいですよね。

でも、だからこそ長く「将来の夢」作文を添削しているおじさん(私のことです)は、鶴丸さんのような若い人にこそ「将来の夢」作文を書いて欲しいと思うのです。

「将来の夢」作文が書けない4つの理由

鶴丸さんの「夢がない」がどのような状況かがわからないのですが、私の経験から類推すると「将来の夢」作文が書けない理由は以下の4つのいずれかに当たることが多いようです。

①「将来の夢」はあるけどそれをどう書いたらよいかわからない。
②「将来の夢」と言えるほど大きな希望がない。
③「将来の夢」を含めて未来のことを考えられない、考えたくない。
④「将来の夢」が持てない極限状態にいる。

①は、もっとも軽症でこれは書き方が分かればすんなり書けるでしょう。

②は、「夢」といえるほどキラキラした大きな希望が描けないと思っている場合が多く、これはこのあと説明する「夢の作り方」が分かると書けるようになるはずです。

③は、けっこうやっかいで、まずは心理的な障壁を取り除き、なおかつ自身で「腹をくくる」必要があります。

このパターンに陥っている人は、心の底で「自分の未来を限定したくない」「なるべく現状に留まりたい」と思っています。

つまり、自分の未来に対して「ビビって」いるわけで、こうなると作文より前に、心のあり方を整える必要があるわけです。

しかし逆に言えば、心の問題さえ解決すれば作文も書けるようになるのがこのパターンです。

最後に④ですが、これは極度の貧困状態にいたり、虐待やいじめなどで精神的に追い詰められてしまっている人の場合です。

「遠い将来のことなど考えられない。」「今を生きるので精一杯で。」という人が多く、この場合は、通常の「将来の夢」とはちょっと異なった「夢」を設定して作文を書く必要があります。

鶴丸さんは、「夢がない」とおっしゃっているので、②から④のいずれかにあたるのだと思います。ですので②から④の人(もちろん①の人も)書けるよう、以下に「将来の夢」作文の書き方を説明してみますね。

「将来の夢」作文を書く前に心理的な障壁を取り払おう

まず実際に作文に移る前に、心理的障壁を取り除いておきましょう。

私自身は、「将来の夢」作文を書けなくしている心理的障壁が2つあると思っています。それは、

【心理的障壁その1】:自分の夢が他人に笑われるのではないかという恐怖
【心理的障壁その2】:自分の未来が限定されてしまうのではないかという恐怖

です。

そして私は、この障壁を乗り越えるための鍵が「3つ」あると思っています。

一つ目の鍵は、

「将来の夢」作文の最大の読者は自分自身である。(=だれもあなたの夢になど興味は無い)

です。

自分の夢を語ってもバカにされるのではないか。
誰かにばらされて笑いものにされるのではないか。

こういう思いを持っていると、なかなか「将来の夢」作文は書けません。

でも、安心してください。他人はあなたの夢にそれほど興味・関心を持ってくれません。持つとすれば、あなたの夢がその人の夢と共振するか、その人の利益に繋がるときだけです。

学校の先生もそれほど大きな意味を持たせてこの作文を書かせているわけではありませんので、それほど読者を意識して書く必要はありません。

それよりも、この場合の読者は自分自身である、と考えた方がよいでしょう。

未来を考える自分自身のために書く。

こう考えた方が書きやすくなります。

つぎに心理的障壁を乗り越えるための二つ目の鍵は、

「将来の夢」は一つではない。(=同時にいくつも「夢」を持っていてもよい)

です。

「ミュージシャンとして活躍したい」でも「安定した生活が送りたい」
「医者として体の病気を治したい」と同時に「作家として読者の魂をいやしたい」

人はいとも簡単に両立が難しい夢を同時に持つことがあります。

どちらが本物でどちらがニセものという訳ではない。両方とも同じくらいの真剣さで実現を願っている。

これは普通のことです。

だから一遍の「将来の夢」作文を書いたからと言ってあなたの夢が限定されるわけではありません。

書きたければあなたがもつ夢の数だけ、いくら書いてもよいのです。

遠慮せずにいくつでも夢を持ちましょう。

そして最後の心理的障壁を乗り越えるための鍵ですが、これについては、この文章の最後に解説しますね。ちょっと待っててください。

「将来の夢」作文を書いて将来の夢を作ろう。

さて、前置きが長くなりました。ここからいよいよ、誰でも書ける「将来の夢」作文の書き方です。

さっそく種明かし的に典型的な「将来の夢」作文の構成を示すと、以下のようになります。

1,「将来の夢」の宣言
   ↓
2,1,を抱いた「きっかけ」「理由」
   ↓
3,1,をどう実現していくか「行動計画」
   ↓
4,決意表明

まず最初に自分の「将来の夢」を端的に宣言してしまいましょう。自分の未来像を作文の冒頭で明らかにしてしまいます。

そうしたら次に、どうしてその夢を抱いたのか「きっかけ」や「理由」を書いてください。ここで読者(自分を含む)はその夢の「根拠」を知ることになります。

その後は、夢を実現するための「行動計画」を書きましょう。ここを書くことで夢は現実に近づきます。

そして、最後に簡単に決意表明して作文を締めくくるのです。

では「論より証拠」。上記構成に則った典型的な(=学校に提出するのに適した)「将来の夢」作文をご覧ください。

「将来の夢」
 生徒の話をとことん聞ける教師になりたい。これが私の将来の夢である。
 中学2年の時、私は軽い不登校になった。学校には何とか行けるのだが、教室に行けない。このとき私を受け入れてくれたのは学校の保健の先生だった。その先生は私の「教室へ行きたくない」という気持ちを認めてくれ、ひたすら私の話を聞いてくれたのである。高校2年で進路を決めるとき、ふと思い出したのがその先生のことであった。そして、私は生徒の話をよく聞くことのできる教師になろうと思ったのである。
 将来の夢の実現ために、私は大学でカウンセリングとコーチングの技法を学びたい。カウンセリングは、心の問題を抱えた児童・生徒のために、そしてコーチングは将来の進路や勉強の方法に悩む児童・生徒のために役立つだろう。
 また、生徒との信頼関係はテクニックだけでは築けない。自身の人間としての幅を広げるために、さまざまなことに挑戦したい。まず機会を見つけて世界中を旅してみたい。特に教育先進国である北欧は必ず訪れたい。また不登校児の支援ボランティアにも参加し、「現場」での経験を積んでいきたい。そして中学の時にお世話になった、あの保健の先生に少しでも近づきたいと思う。
 生徒の話をとことん聞くのは大変なことだろう。しかし、いつの日か、この夢を実現したいと思う。

ポイントその1:「夢」の作り方

それではここから、具体的な作文のポイントを解説します。

まずは「夢」の作り方から。

じつは、「夢」にも効果的な「作り方」があるのです。

それは、

▲▲な●●になる。
●●になって■■する。

という形で「夢」を表すことです。

「夢」に関してよくある思いこみの一つに、「夢」とはなにかの職業について、なにかに「なる」ことだ、というものがあります。

「私の夢は医者になることです」「弁護士になることです」「公務員になることです」etc.

しかし、このようにある職種について何者かに「なる」のは、あくまでも夢の出発地点に立つことであり、じつは重要なのは、「どのような」者になるのか、そうなって「何をするか」の方なのです。(例外として「プロ野球選手になる」や「総理大臣になる」など実現が極めて困難なものに「なる」ことが挙げられますが、それらはあくまでも特殊例です)

「私の夢は患者の気持ちの分かる医者になることです」
「私の夢は弁護士になって女性の権利を守ることです」
「私の夢は公務員になって生まれ故郷の経済を活性化することです」

このように「どのような」者になるのか、そうなって「何をするか」をきちんと書くことで、「夢」は夢らしく、また追求する価値のあるものになります。

(逆に言えば、何かの職業に就く(=「なる」)はそれほど重要ではありません。上記の「将来の夢」例文であれば、「生徒の話を聞ける”教師”になる」は、”養護教諭” ”スクールカウンセラー” ”塾講師” ”学校事務員” ”ソーシャルワーカー”などに十分置き換え可能です。20年後には今ある職業の半数がなくなると言われるほど変化の早い現代にあって既存の職業一覧から「夢」を選ぶのはまったくもってナンセンスです)

そしてこのように考えられれば、上記「書けない理由」の②に該当する人(「将来の夢」と言えるほど大きな希望がない人)は、楽に書けるようになるでしょう。

そして③に該当する人(「将来の夢」を含めて未来のことを考えられない、考えたくない人)は、ぜひこのような形で自分の将来の状態を思い描けないか考えてみてください。どのような存在に自分はなりたいか、具体的な方法が見えなくても何がやりたいか、まずはそこを考えましょう。

すこし注意がいるのが④の人(「将来の夢」が持てない極限状態にいる人)です。

こういう人は、今の状況から抜け出すための「夢」、それも思いっきり利己的な「夢」を持ちましょう。

「経済的に自立して毒親と縁を切る。」
「幸せになって、いじめている奴らを見返す。」

これらも十分立派な「夢」です。胸を張ってください。

ポイントその2:「きっかけ」「理由」の書き方

「夢」を宣言したら、次に書くのがその夢を抱いた「きっかけ」や「理由」です。

ですが、身も蓋もないことを言えば、ここはあっても無くても問題ありません。

学校に提出するのであれば、字数を稼ぎ、読者である先生を納得させるために必要ではあるのですが、自分自身のためにかくのであれば、ここは「書けたら書く」くらいの気持ちでいてもかまいません。(それよりも次の「行動計画」の方が重要です)

ただ、自分自身のために書く場合でも、ここがしっかり書けると「気持ちがいい」という声を受講生からよく聞きます。

これは結局、人間は自分のことがよく分かっているようで分かっておらず、よく分かっていなかった自分を言葉にできたことで、くっきりとした自分の輪郭を得たような気持ちになるからでしょう。

なぜ、自分はこうなりたいのか、なぜ自分はこれがしたいのか、その理由を自らの過去に問うことで、ぜひはっきりとした自分の輪郭を見つけてください。

ポイントその3:「行動計画」の作り方

最後に「行動計画」の作り方のポイントを説明しましょう。

この「夢」に至る「行動計画」をしっかり書くことで、「夢」までの階段ができあがり、「夢」は「絵に描いた餅」から現実的な「到達目標」になります。

コツは、「夢」と「目標」と「課題」を以下のように分けて考えること。

「夢」とは「自分が一生をかけても到達できるかわからないくらい遠くにある目標」です。

「目標」というのは「『夢』に向かう上で、近い将来かならず克服しなければならない課題」です。

「課題」とは、「「夢」や「目標」に到達するために、いますぐに始めなければならないこと、あるいは、いますでにやっていること」です。

これらを細かく階段状に考えることで、「将来の夢」作文は説得力を持つようになるのです。

そして、これら「夢」「目標」「課題」を段階的に考えるためのツールとしてお薦めなのが、あの大谷翔平選手が高校生の時に記入して自身の夢を実現したと言われる「マンダラート」です。

上記が大谷選手が記入したマンダラートなのですが、縦横3マス、合計9マス(マンダラ)の中心に自身の「夢」を書き、その周りの8マスに、それを実現させるための「目標」を書きます。

そしてその周囲に、さらに8個のマンダラを書き、それぞれのマンダラの中心のマスに最初のマンダラで記入した8個の「目標」を書き込んで、さらにその周囲の8マスに、今度は「目標」を達成するための「課題」を記入します。

結果的に9×9マス=81マスに「夢」を中心とした「目標」と「課題」が緊密に絡み合った行動計画ができあがり、ここまでくればもう「将来の夢」作文で書くことが見つからないなどということはなくなるでしょう。

「将来の夢 Ver.1.0」を書こう!

さて、ずいぶん長くなってしまいました。

それではおしまいに「将来の夢」を書くのを阻む心理的な障壁を乗り越えるための最後の鍵を紹介しましょう。

それは、

「将来の夢」は、何度も書き直すことになるから今は気楽に書こう。(=今回の作文は決定稿ではない)

です。

残念なことですが、今回がんばって「将来の夢」作文を書き上げたとしても、その作文の通りに夢を実現できる可能性はごくごく低いものでしょう。

おそらく、途中で進路変更を余儀なくされたり、別な夢を見つけたりして、いつのまにか今回書き上げた「将来の夢」とは似ても似つかぬ人生を送ることが多いと思います。つまり、我々の多くは、大谷翔平選手のようには生きられないということです。(彼の今後の人生も同様に分からないわけですが)

だからといって「将来の夢」作文を書く意味が無いわけではありません。なぜなら何度もそれを書き直すうちに、「これだ!」というものにぶつかる確率が高くなるからです。

偉人伝を読めば分かるように、どんなに偉い人でも若いうちにさまざまな試行錯誤を重ねているものです。当初描いていた夢が破れて、思わぬ方向に人生が曲がり、そこでまた新たな夢に出会って、いつしか自分の使命を知る。そしてその領域で努力して一流になったのが彼らです。

だから、鶴丸さんも、肩の力を抜いて、でも真剣に「将来の夢」作文に向き合ってください。

もし、今までしっかり「将来の夢」作文を書いたことが無かったならば、これから何度もバージョンアップを重ねていくための「 Ver.1.0」を書くつもりで、書いてみましょう。

そうして何度も書き直すうちに、いつかきっと「これだ!」という「将来の夢」に突き当たるはずです。

それまでぜひ、がんばってください。応援しています。

 

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