もやもや表現の添削屋、石井秀明のブログです。

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リライトは”ハガレン”に学べ! 「ダメな文章」を「伝わる文章」に錬成しなおすための「3+1のステップ」【小論文お悩み相談室】

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Q.効果的なリライトの方法を教えてください!

先日リライトでお世話になりましたMです。大変読みやすい文章にしていただき感謝しております。さて、本日は部下の文章添削について質問させていただきます。仕事柄、部下の文章を添削することも多く、時には私が代わりにリライトをしたりするのですが、どうしても表面的な修正に終わってしまい、本質的な改善になっていないような気がします。そもそもどこまで変えてよいかも分からず、石井先生のようにはいかないなと痛感している次第です。なにかリライトのコツなどありますでしょうか。(Mさん。50代会社員)

A.リライトのポイントは「理解」「分解」「再構築」+「調律」です。

Mさん、ご質問いただきありがとうございました。

今回、ご質問をいただいて自分がリライトにおいて何をしているかを再認識することができました。感謝いたします。

「錬金術の基本は、理解、分解、再構築だ」

さて、唐突ですが、Mさんは「鋼の錬金術師」という漫画をご存じでしょうか?

もし、ご存じなければ上記のリンク先をご覧いただきたいのですが(そして、本当に素晴らしい漫画なのでぜひ、大人買いして一気読みしていただきたいのですが(笑))、今回あらためてリライトという行為を考えたとき、「ああ、これはこの漫画の中の錬金術と同じだな」と思い当たったのです。

作中、主人公のエルリック兄弟をはじめ、さまざまな個性をもった「錬金術師」たちが、ある物質を「等価交換」して、別な物質に「錬成」しなおすのですが、その錬成過程である物質の「理解」「分解」「再構築」が、まさにリライトと同じなのです。

つまり、もとの文章のいわんとすることを「理解」し、それをいったんバラバラに「分解」して、伝わりやすい文章に「再構築」するのがリライトという行為の基本ステップというわけです。

悪文を探したければ官公庁のサイトに行けw

では、ここから先は実例を挙げながら話を進めましょう。

「悪文」として受講生の文章を挙げるのはさすがに忍びないので、公になっている国の文書に素材になってもらいます。

文部科学省のWebサイトを開いて最初に目についた文章です。(悪文を探すのにぜんぜん苦労しませんでしたw)

簡単に補足しておくと、平成16年にOECD各国で行われたPISA調査の結果、日本の子どもたちの「読解力」が低かったため、これはなんとかしなければならん、という意図で書かれた「読解力向上に関する指導資料―PISA調査(読解力)の結果分析と改善の方向―」という文書の一部です。

以下、読みづらいのでざっと目を通してください(笑)

「もとの文章」

2 PISA調査(読解力)の結果を踏まえた指導の改善

1 指導の改善の方向
(1) 基本的な考え方

ア PISA調査のねらいとするところは、現行学習指導要領で子どもに身に付けさせたいと考えている資質・能力と相通じるものであることから、学習指導要領のねらいとするところの徹底が重要である。

 PISA調査は、義務教育修了段階の15歳児が、その持っている読解の知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題においてどの程度活用できるかを評価することを目的としている。
 一方、学習指導要領では、子どもたちに「生きる力」をはぐくむことが求められており、それを知の側面からとらえた「確かな学力」は、知識や技能に加え、学ぶ意欲や、自分で課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断し、行動し、よりよく問題を解決する資質や能力などである。
 また学習指導要領国語は、言語の教育としての立場を重視し、国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに、豊かな言語感覚を養い、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点を置いて内容の改善が図られている。特に、文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることが重視されている。
 中学校国語の「話すこと・聞くこと」の領域では、目的や方向に沿って効果的に話したり、相手の意図を理解しながら聞いたりする能力の育成を重視している。そのため、説明や討論などの言語活動例が示されている。
 「書くこと」の領域では、相手や目的に応じて効果的な文章を書くことのできる能力の育成を重視している。そのため、通信文を書くこと、記録や報告をまとめること、資料を作成することなどの言語活動例が示されている。
 「読むこと」の領域では、目的や意図に応じて的確に読みとる能力や進んで読書に親しむ態度の育成を重視している。そのため、学校図書館を活用して様々な形態の文章を読み自分の考え方を深めるなどの言語活動例が示されている。
このように、学習指導要領国語のねらいとするところも、ここまで述べてきたPISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたものと相通じるものがあることから、指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいとするところを一層徹底することが重要である。

ステップ1:理解

さあ、まずはこの文章の「理解」から始めましょう。

私がこの文章を読んだ時の最初の感想は、「流れが悪いなぁ」というものでした。

一文が長いのは官公庁の文書の特徴なので驚きもしませんが(笑)、内容が羅列されているだけで大きな流れが感じられず、筆者が言いたいことが頭にすっと入ってきません。

また「PISA調査は・・・」「学習指導要領は・・」と引用っぽい表現がたくさんあるのに括弧がないのも気になりました。

そこでまずは引用元の文書を調査してみたところ、驚きました。

この文書、じつはトンデモない「コピペ文」だったのです。

以下の「 」内のリンクになっている部分がコピーされた(そして「もとの文章」では微妙に変形されてしまった)文章です。(リンクをたどるとコピー元の文書に飛びます。お暇な方はご確認ください)

「もとの文」(正確に引用したもの)

 PISA調査の目的は、「義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る」ことである。

 「学習指導要領では、子どもたちの「生きる力」をよりいっそう育むことを目指し」ており、「「生きる力」を知の側面からとらえた「確かな学力」」は、「知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの」である。

 また学習指導要領国語は、「言語の教育としての立場を重視し、国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに、豊かな言語感覚を養い、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点を置いて内容の改善を図」ることとし、「特に、文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることを重視する。」としている。

 学習指導要領中学校国語の「話すこと・聞くこと」の領域では、「目的や方向に沿って効果的に話したり、相手の意図を考えながら聞いたりする能力を高めるようにすること」が重視されている。そのため、「説明や発表」「対話や討論」などの言語活動例が示されている。
 「書くこと」の領域では、「相手や目的に応じて効果的な文章を書くことのできる能力を高めるようにすること」が重視されている。そのため、「説明や記録を書く」「手紙や感想を書く」や、「報告や意見発表などのために簡潔で分かりやすい文章や資料などを作成する」などの言語活動例が示されている。
 「読むこと」の領域では、「目的や意図に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てるようにすること」が重視されている。そのため、「様々な文章を比較して読んだり、調べるために読んだりすること」「目的や必要に応じて音読や朗読をすること」といった言語活動例が示されている。
 このように、学習指導要領国語のねらいとするところも、ここまで述べてきたPISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたものと相通じるものがある。ゆえに指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいの実現に向けた取り組みを一層層徹底する必要がある。

言葉の大切さを説く立場にある文部科学省の文章が、ここまで他者の文章を大切にしていないのは驚きですが(笑)、このように正確に引用部分をあぶりだすと、この文章で伝えたいことが書かれている部分が見えてきます。

それは、以下の文章です。

このように、学習指導要領国語のねらいとするところも、ここまで述べてきたPISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたものと相通じるものがある。ゆえに指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいの実現に向けた取り組みを一層層徹底する必要がある。

これもわかりづらい文章ではあるのですが、平たく言いたいことをまとめれば以下のようになるでしょう。

【この文章が伝えたいこと】

PISAでの評価は、学習指導要領の内容をしっかり教えれば上がるはずだから指導要領に沿ってしっかり教えてね。(我々の方針は間違ってないんだからね。現場がしっかりやればいいんだかんね)

まあ、後半の( )内は邪推なので無視していただくとして(笑)、ここで大事なのは、このように言いたいことをざっくり、なおかつなるべくシンプルな形で「理解」することです。

つまり、「要するに何が言いたいのか」をしっかりつかみ、それを最大限伝えるためにここから先の作業を行う心構えを作ることがこのステップでのポイントとなります。

細かい表現に気を取られず、「何が一番言いたいか」をしっかり把握すること、そしてそれを最大限伝えるためにどう書き直したらよいかを考える。

これが効果的なリライトの出発点となるのです。

ステップ2:分解

無事にもとの文章のいわんとすることを「理解」したら、今度はそれをいったんバラバラに「分解」します。

「わかりやすい文章のための7箇条」を適宜適応して、短文の積み重ねにし、最小の要素にまで分解するのです。

たとえば以下のようにします。

・PISA調査の目的は、「義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る」ことである。

・「学習指導要領では、子どもたちの「生きる力」をよりいっそう育むことを目指し」ている。

・「「生きる力」を知の側面からとらえた「確かな学力」」とは、「知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの」である。

・学習指導要領国語は、以下のように述べる。

・「言語の教育としての立場を重視し、国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに、豊かな言語感覚を養い、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点を置いて内容の改善を図」る。

・「特に、文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることを重視する。」

・学習指導要領中学校国語の各領域の重視するものと具体的な方法論は以下のとおり。

・「話すこと・聞くこと」の領域で重視するもの:「目的や方向に沿って効果的に話したり、相手の意図を考えながら聞いたりする能力を高めるようにすること」

・具体的な方法論:「説明や発表」「対話や討論」

・「書くこと」の領域で重視するもの:「相手や目的に応じて効果的な文章を書くことのできる能力を高めるようにすること」

・具体的な方法論:「説明や記録」「手紙や感想」を書く。「報告や意見発表などのために簡潔で分かりやすい文章や資料などを作成する」

・「読むこと」の領域で重視するもの:「目的や意図に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てるようにすること」

・具体的な方法論:「様々な文章を比較して読んだり、調べるために読んだりすること」「目的や必要に応じて音読や朗読をすること」

・学習指導要領国語のねらいには、ここまで述べてきたPISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたものと相通じるものがある。

・ゆえに指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいの実現に向けた取り組みを一層層徹底する必要がある。

このように分解すると、この文章の「構成」が見えてきます。

今回の場合、このような構成であると言えるでしょう。

1,PISA調査が測ろうとしていること

2,学習指導要領の「生きる力」と「確かな学力」

3,学習指導要領国語の目指すもの

4,学習指導要領国語の各領域の重視するものと具体的な方法論

5,結論

そしてこのように捉え直すと、この文章に対する疑問の形でこの文章に「足りない部分」が見えてきます。以下のようにです。

疑問1:「PISA調査が測ろうとしていること」と、「生きる力」の関係は?
疑問2:「PISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたもの」とは何か?
疑問3「学習指導要領国語のねらい」と「PISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたもの」のどこがどのように「相通じ」ているのか?

そこで、ここ以前の文書(【こちら】と【こちら】)をたどって必要な内容を探し、おそらくこれが言いたいのであろうとという内容を、もとの文章に書き足してみます。

するとこうなります。

(1,PISA調査が測ろうとしていること)
・PISA調査の目的は、「義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る」ことである。(2,学習指導要領の「生きる力」と「確かな学力」)
・「学習指導要領では、子どもたちの「生きる力」をよりいっそう育むことを目指し」ている。
・「「生きる力」を知の側面からとらえた「確かな学力」」とは、「知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの」である。

(書き足し部分その1)

・つまり、PISA調査で評価される学力を学習指導要領でも育もうとしている訳であり、目指すところは一緒なのである。

・しかし、読解力に関しては日本の生徒はいまだ課題を抱えている。

・平成17年度のPISAの「調査結果を、正答率や無答率を基にして分析すると、特に、読解プロセスにおいて「テキストの解釈」「熟考・評価」に、出題形式において「自由記述(論述)」に課題がある。」

・具体的には次のような内容の問題に課題があるのではないかといわれている。
 ア テキストの表現の仕方に着目する問題
 イ テキストを評価しながら読むことを必要とする問題
 ウ テキストに基づいて自分の考えや理由を述べる問題
 エ テキストから読み取ったことを再構成する問題
 オ 科学的な文章を読んだり、図やグラフをみて答える問題」

・そしてこれらの問題点はすでに「国立教育政策研究所が実施した平成13年度小中学校教育課程実施状況調査」でも指摘されている。

・たとえば小学校において「相手や目的などに応じ、自分の考えを明確にして書く力が十分身に付いていない。」こと、中学校において「根拠を明確にしながら、自分の考え方を述べる力や説明的な文章において展開や構成を正確にとらえる力が十分身に付いていない。」と指摘されている。

・そこで現行の学習指導要領ではこれらの課題を解決するために以下の方針を立てている。

(3,学習指導要領国語の目指すもの)
・学習指導要領国語は、以下のように述べる。
・「言語の教育としての立場を重視し、国語に対する関心を高め国語を尊重する態度を育てるとともに、豊かな言語感覚を養い、互いの立場や考えを尊重して言葉で伝え合う能力を育成することに重点を置いて内容の改善を図」る。
・「特に、文学的な文章の詳細な読解に偏りがちであった指導の在り方を改め、自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力、目的に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てることを重視する。」

(4,学習指導要領国語の各領域が重視するものと具体的な方法論)
・学習指導要領中学校国語の各領域の重視するものと具体的な方法論は以下のとおり。
・「話すこと・聞くこと」の領域で重視するもの:「目的や方向に沿って効果的に話したり、相手の意図を考えながら聞いたりする能力を高めるようにすること」
・具体的な方法論:「説明や発表」「対話や討論」
・「書くこと」の領域で重視するもの:「相手や目的に応じて効果的な文章を書くことのできる能力を高めるようにすること」
・具体的な方法論:「説明や記録を書く」「手紙や感想を書く」を書く。「報告や意見発表などのために簡潔で分かりやすい文章や資料などを作成する」
・「読むこと」の領域で重視するもの:「目的や意図に応じて的確に読み取る能力や読書に親しむ態度を育てるようにすること」
・具体的な方法論:「様々な文章を比較して読んだり、調べるために読んだりすること」「目的や必要に応じて音読や朗読をすること」

(書き足し部分その2)

・このようにPISA評価を向上させるための「ねらい」と具体的な方法論はすでに学習指導要領に書いてあるのである。

・たとえば、「様々な文章を比較して読んだり、調べるために読んだりすること」を行った上で、「報告や意見発表などのために簡潔で分かりやすい文章や資料などを作成する」を実践することで、PISA調査の問題「エ」や「オ」は確実に向上するであろう。

・同様に、「説明や発表」や「対話や討論」をしっかり行った上で、「説明や記録を書く」や「手紙や感想を書く」を行うことで「ウ」の問題が、「目的や必要に応じて音読や朗読をすること」や「説明や発表」を行うことで、「ア」や「イ」の解答率の向上が見込まれる。

(5,結論)
・学習指導要領国語のねらいには、ここまで述べてきたPISA調査、教育課程実施状況調査の結果からみたものと相通じるものがある。
・ゆえに指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいの実現に向けた取り組みを一層層徹底する必要がある。

いかがでしょう?

これでこの文章がいわんとする「大きな流れ」が見えてきました。

「書き足し部分その1」は、今回の文章より前の部分の内容をまとめて書きました。

また「書き足し部分その2」は、PISA調査での課題(具体的な問題)と、「学習指導要領の各領域で重視するもの」や「具体的な方法論」を対応させて書いています。

こうして「書いた人が本当に言いたかったこと」を「読者が分かる形」で「復元」するまでが「分解」の仕事だと思うとよいでしょう。

ただ、このままだと必要の無い情報も多く含まれており、また今回の文章の場合、結論が最後に出てくるため、時間の無い人には最後まで読んでもらえない恐れがあります。

まあ、簡単に言うと「読んでてダルい」わけですね(笑)。

だからこそ、もっと分かりやすく、シンプルに、でもインパクトのある形に「再構築」しましょう。

ステップ3:再構築

さて、いよいよ文章の再構築です。

すでに素材は揃っていますので、あとは慎重、かつ大胆に「もとの文章が言いたいこと」を保持したまま、書き直しましょう。

具体的には必要に合わせて以下の4つの作業を行います。

1,記述の順番を入れ替える
2,必要の無い情報・言葉を刈り込む
3,ナンバリング、小見出し等のテクニックを使う
4,求められる文章の長さになるよう字数調整する

それでは、やってみましょう。最初の文章と読み比べてみて下さい。

「リライト後の文章」

2 PISA調査(読解力)の結果を踏まえた指導の改善

1 指導の改善の方向
(1) 基本的な考え方

ア PISA調査の「読解力」の評価を向上させるには、学習指導要領の内容の徹底が重要である。

 今後のPISA調査の読解力の評価を向上させるための指導の方向は、現在の学習指導要領の内容の徹底である。なぜならPISA調査が測ろうとしていることと、学習指導要領で育もうとしている「確かな学力」は同じ特徴を持つものであり、実現するための具体的な方法も、すでに学習指導要領内に記載されているからだ。
 PISA調査の目的は、「義務教育修了段階(15歳)において、これまでに身に付けてきた知識や技能を、実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを測る」ことである。
 そして、学習指導要領のいう「確かな学力」とは、「知識や技能はもちろんのこと、これに加えて、学ぶ意欲や自分で課題を見付け、自ら学び、主体的に判断し、行動し、よりよく問題解決する資質や能力等まで含めたもの」である。
 つまり、学習指導要領も実生活に即した問題解決能力を育もうとしており、この点においてPISA調査で評価される学力と学習指導要領でも育もうとしている学力はほぼ同じなのである。
 しかし、前述の通り日本の生徒は「テキストの解釈」「熟考・評価」「自由記述(論述)」に課題を抱えている。
 そしてこれらの問題点はすでに国立教育政策研究所が実施した平成13年度小中学校教育課程実施状況調査でも指摘されたものである。
 そこで学習指導要領では、これらの課題を解決するために「自分の考えをもち、論理的に意見を述べる能力、目的や場面などに応じて適切に表現する能力(中略)を重視する」という方針を立てている。
 また学習指導要領中学校国語では「話すこと・聞くこと」「書くこと」「読むこと」それぞれの領域で以下の7つの具体的な指導法を挙げている。
 「①説明や発表」「②対話や討論」(「話すこと・聞くこと」)
 「③説明や記録を書く」「④手紙や感想を書く」「⑤報告や意見発表などのために簡潔で分かりやすい文章や資料などを作成する」(「書くこと」)
 「⑥様々な文章を比較して読んだり、調べるために読んだりする」「⑦目的や必要に応じて音読や朗読をする」(「読むこと」)
 このようにPISA評価を向上させるための具体的な方法は、すでに学習指導要領に書いてあるのである。
 たとえば、⑥を行った上で、⑤を実践することで、PISA調査の「科学的な文章を読んだり、図やグラフをみて答える問題」の評価は確実に向上するであろう。同様に、①や②をしっかり行った上で、③や④を行うことで「テキストに基づいて自分の考えや理由を述べる問題」、⑦や①を行うことで、「テキストを評価しながら読むことを必要とする問題」などの解答率の向上が見込まれる。
 ゆえに指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいの実現に向けた取り組みを一層層徹底する必要があるのである。

いかがでしょう?

欠落部分が多かったため、もとの文章881文字が、リライト後に1135文字と254文字増量になってしまったのですが、読みやすいためリライト後の文章の方が短く感じられると思います。

冒頭に結論をもっていき、それ以降を結論を納得させるための根拠の記述に当てています。

接続詞を意識的に使って論理の流れを明確にし、引用も正確に行って、ナンバリング等で記述にメリハリをつけています。

ついでに長くてたるんでいたタイトルも、短くすっきりさせました。

これで再構築の完了です。

おまけステップ:調律

以上が、リライトにおける「理解」「分解」「再構築」のステップですが、最後にもう1ステップ入れると、文章がさらに輝きます。

それが「調律」です。

くわしくは【こちら】を参照していただきたいのですが、文章を美しく、流れるようにするために、文末表現を多彩にしたり、口調がよくなるように音数を調整したりします。

たとえば、上記リライト文の最後の2段落は、もとはこのようになっていました。

「調律前」
 たとえば、⑥を行った上で、⑤を実践することで、PISA調査の「科学的な文章を読んだり、図やグラフをみて答える問題」の評価は向上する。同様に、①や②を実践した上で、③や④をすることで「テキストに基づいて自分の考えや理由を述べる問題」の評価も向上する。そして⑦や①を行うことで、「テキストを評価しながら読むことを必要とする問題」などの解答率が向上するだろう。
 ゆえに指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいの実現に向けた取り組みを一層層徹底する必要がある。

「調律後」
 たとえば、⑥を行った上で、⑤を実践することで、PISA調査の「科学的な文章を読んだり、図やグラフをみて答える問題」の評価は確実に向上するであろう。同様に、①や②をしっかり行った上で、③や④を行うことで「テキストに基づいて自分の考えや理由を述べる問題」、⑦や①を行うことで、「テキストを評価しながら読むことを必要とする問題」などの解答率の向上が見込まれる。
 ゆえに指導の改善に当たっては、学習指導要領のねらいの実現に向けた取り組みを一層層徹底する必要があるのである。

ほんのちょっとの違いで受ける印象ががらりと変わることがおわかりいただけるのではないでしょうか。

具体的な「調律」の作業は、とにかく「音読」をして文章の奏でる「音楽」を聴くことです。

自分で聴いて気持ちよくなるように(かつ、正確さは損なわないように)言葉を彫琢(ちょうたく)してください。

錬金術の限界=リライトの限界

さて、以上が「ダメな文章を伝わる文章に錬成し直す3+1のステップ」ですが、最後に一つ、忘れてはいけないポイントを指摘しておきます。

それは、「リライトは創作ではない。」ということです。

たしかに、「分解」のステップで、もとの文章の欠落部分を推測で補うことはあるのですが、それはあくまでも筆者が言いたいことを伝えるためであることを忘れてはいけません。

ハガレンで言えば、「質量が1のものからは同じく1のものしか、水の性質のものからはおなじく水属性のものしか錬成できないってこと」ですねw。(文の量は変えることができますけど)

姿形は変われども、伝える内容は「等価交換」。

これを忘れないようにしてください。

 

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