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森元総理の発言、マスコミで言われているのと違うらしいよ。と聞いて
森喜朗 元総理の浅田真央さんに対するコメントが「ひどすぎる」とマスコミで騒がれて、まさに「火がボウボウ」という感じで炎上しています。
私も最初、「ひでぇこといいやがる」と思っていたのですが、時間が経つにつれ、「いや、それちょっと違うから」という記事が出てきました。
森元総理の発言報道に激怒して発言全文を読むと、ありゃりゃ???
で、リンク先の「書き起こし」をまとめて読んでみると、たしかにマスコミで報道されているのとニュアンスが違う。
該当箇所を長めに引用するとこんな感じです。
【もとの言葉】
あの子、大事なときには必ず転ぶんですよね。なんでなんだろうなと。僕もソチ行って、開会式の翌日に団体戦がありましてね、あれはね、出なきゃよかったんですよ日本は。あれは色んな種目があって、それを団体戦で。特にペアでやるアイスダンスっていうんですかね。あれ日本にできる人はいないんですね。あのご兄弟は、アメリカに住んでおられるんだと思います確か。ハーフ。お母さんが日本人で、お父さんがアメリカ人なのかな。そのご兄弟がやっておられるから、まだオリンピックに出るだけの力量ではなかったんだということですが、日本にはいないもんですから、あの方を日本に帰化させて日本の選手団で出して、点数が全然とれなかった。
あともう皆ダメで、せめて浅田さんが出れば3回転半をすると、3回転半をする女性がいないというので、彼女が出て3回転半をすると、ひょっとすると3位になれるかもしれないという淡い気持ちでね。浅田さんを出したんですが。また見事にひっくり返っちゃいまして、結局、団体戦も惨敗を喫したという。
その傷が浅田さんに残ってたとしたら、ものすごくかわいそうな話なんですね。団体戦負けるとわかってる、団体戦に何も浅田さんを出して、恥かかせることなかったと思うんですよね。その、転んだということが心にやっぱ残ってますから、今度自分の本番のきのうの夜はですね、昨日というか今朝の明け方は、なんとしても転んじゃいかんという気持ちが強く出てたんだと思いますね。いい回転をされてましたけど、ちょっと勢いが強すぎたでしょうかね。ちょっと転んで手をついてしました。だからそういうふうにちょっと運が悪かったなと思って見ております。
森元総理のコメントを「リライト」してみた。
さて、この書き起こしが、私の「添削屋魂」に火を付けました(笑)
たしかに、森元総理の発言は、浅田選手を貶めようとしたものではない。むしろ、浅田選手にムリをさせたスケート連盟に苦言を呈するのがその本意だったのだとは思います。
だが、しかし!
あまりにも言葉の使い方に「隙(つっこみどころ)」が多すぎる(笑)。
これでは、「つまみぐいして失言にして」といわんばかりです。
で、「こう言えば良かったんじゃない?」という代案を、もとの発言を「リライト(=書き直し)」する形で作ってみました。
【リライト後】
本当にかわいそうなんですけど、彼女はどういうわけか大事なときに転んでしまうことが多いんですよね。ホント、不思議なんですが。僕もソチ行って、開会式の翌日に団体戦がありましてね。結果論を言えば、団体戦に出場したことに少々問題があったのかもしれません。あれは色んな種目があって、それを団体で戦うんですけど、これに勝つには相当厚い選手層が必要でね。特にペアでやるアイスダンスっていうのがありますよね。あれ日本にできる人がいないんですよ。あのご兄弟は、アメリカに住んでおられるんだと思うんですが。お母さんが日本人で、お父さんがアメリカ人のハーフなのかな。そのご兄弟がアイスダンスをやっておられるから、わざわざ日本に帰化してもらって日本の選手団で出てもらったわけなんですけど、なかなか難しかったんでしょうねぇ。点数を思うように伸ばすことができなかった。
そんな混成部隊が苦戦する中で、せめて浅田さんに出場してもらって3回転半に成功してもらえば、ひょっとすると3位になれるかもしれないという気持ちでね。連盟も悩んだんだと思うんですが、浅田さんに出てもらって。それで彼女も頑張ったんだけど、結果は皆さんご存じの通りでね。結局、団体戦は残念な結果になったという。
その時のショックがね。浅田さんに残ってたとしたら、これはものすごくかわいそうな話なんですね。団体戦、苦戦するとわかってる。でも自分が出なければ上位入賞はない。そう思って出場したのに結果はあの通り。まあ、今から言ってもね。仕方のないことですし、連盟は連盟でね。よかれと思ってやったことだとは思うんだけど、何も団体戦で浅田さんを出してね。わざわざつらい思いをさせることはなかったのかもしれない。その、つらさはね。心にやっぱ残ってますから。自分の本番だったきのうの夜はですね、なんとしても成功させなければという気持ちが強く出すぎてしまったんだと思いますね。いい回転をなさってましたけど、あれがタイミングってやつなんでしょうかねぇ。ホント、かわいそうなことになってしまいました。今度の東京ではね。こんなことがなるべく起こらないようにしたいな、と思った訳なんですが。
リライトした時に気をつけたこと。あるいは「角を立てない言葉の選び方」
いかがでしょう?
最後の一文は付け加えてますが、それ以外は基本的に彼が言いたいことを別の言葉で表しただけです。
リライトした感想ですが、失礼を承知で言うと、森元総理の言葉は「がさつ」で「どぎつい」。
昨日の記事のモナリザでいったら、こんな感じ(笑)。
だから、もとの言葉をリライトする時には、つぎの4つのことに気をつけました。
1,関係各位を「性善説」で扱う。
「わざわざ日本に帰化してもらって日本の選手団で出てもらった」
「連盟も悩んだんだと思うんですが」
「連盟は連盟でね。よかれと思ってやったことだとは思うんだけど」
このあたりの表現は、関係者を「基本的に善意の人」、どんな行為も「善意の発露」として扱った結果して出てきたものです。
批判や非難したい対象であっても彼らには彼らの事情があるのかもしれない。
そういうスタンスで発言することで、非難される側も「救われる」。
結果的に彼らから憎まれることはなくなるわけです。
2,ネガティブな言葉はオブラートで包む。
「ダメ」「ひっくり返る」「転ぶ」「惨敗」「全然とれなかった」
これらの言葉はなるべく使わないようにしました。
「言霊」信仰ではありませんが、やはり言葉にはパワーがあります。
ネガティブな言葉はネガティブな感情を思い出させてしまう。
だから、
「なかなか難しかった」「結果は皆さんご存じの通り」「かわいそうなことになってしまった」
といった言葉を使って、「オブラートにつつんで」表現しました。
3,「共感」を呼ぶ言葉を使う。
今回の発言の時、日本全国に満ち満ちていた感情は、「真央ちゃん、かわいそう・・・」でした。
「本当にかわいそうなんですけど、」
「これはものすごくかわいそうな話」
「ホント、かわいそうなことになってしまいました」
こうやってこのキーワードを繰り返すことで、自らも同じ気持ちになっていることを会場にいる人や、その向こう側にいる国民に伝えることができます。
そして、「ああ、森さんも同じ気持ちなんだなぁ」と共感してもらえるのです。
4,「運命」に責任転嫁する。
「ホント、不思議なんですが」
「結果論を言えば」
「まあ、今から言ってもね。仕方のないこと」
「あれがタイミングってやつなんでしょうかねぇ」
これらの表現は、責任を「運命」に転嫁する、ある意味「ずるい」表現です。
誰が悪いわけじゃない。巡り合わせが悪かったんだよ。仕方ないよね。。。
日本人はこういう納得の仕方が大好きです(笑)
そうやってすべてを「運命」のせいにすることで、その場から誰も悪い人はいなくなり、残された人々の間に生ぬるい共犯関係が成立するのです。
悪い人ではないのかもしれないが・・・・。
たしかに「歯に衣を着せぬ」率直さでものごとをずばりと断ずる必要がある時もあります。
また、ふだん論文を指導する時は、私も「神になったつもりで言い切れ!」と受講生に指導しているのですが、森元総理の今回のこの発言がそうあるべき理由は見当たりません。
この発言は毎日新聞社主催の会合でのものらしく、彼もうちうちの発言だから大丈夫、と思ったのかもしれませんが、やはりちょっとうかつだったな、というのが私の率直な感想です。
冒頭の書き起こしですが、全文を読むと、彼の人柄というか個性がにじみ出ていて結構面白いものです。基本的に心底「悪人」って感じはあまりしない人です(話はとりとめないのですが(笑))。
だからこそ、言葉の使い方をちょっとだけ気をつけて、「うんまくやって」ほしかったな、と思います。
だって話の最後にこんな風に言ってるんですから。
マスコミというのは、そこのところだけ取るんですよ。前後の話は何にも書かないでね。俺が「神の国」だっつったって、別に神様だけ言ったわけじゃないだよ。仏様も、お釈迦様もキリスト様もみんな大事にしなきゃだめだよと言って、だけど、日本は神主さんが沢山いたから神様の国ですよねって言ったら、森総理は「神の国」といってと、もう袋叩きにあうです。ああいうこと書いた人みんな天罰が当たると私は思ってます。(会場笑い)私は逆に神様のお守りがあったからここまで来れたんだと思ってますが。
まあ、それはさておいて。記者諸君、よくだまってしっかり聞いておいてください。例え話をしただけの話で。最近たとえ話しても、NHKの会長もやられて、あれは個人の意見だなんて取り消したからいいじゃねえか。取り消したって聞けねえんだよなんてやってますけども。まあそういう難しい時期だから。だけど政治家じゃなきゃいいんだよな。何しゃべっても。政治家だとまあ色々なこと言われるんですが。
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