もやもや表現の添削屋、石井秀明のブログです。

添削屋日乗

添削屋日乗

相手に自分の言葉を「誤解」させない4+1のポイント

投稿日:2014年2月21日 更新日:

130924ツボアイコン(水色)

(この記事は約4000文字。読むのに5~10分ほどかかります)

それでも「誤解だ!」と叫びたくなるときもある。

前回の「あなたの言葉はなぜ伝わらないのか?」の記事の中で、私は「この世に『誤解』など存在しない。相手はただあなたの言葉を『理解』しているだけだ」と書き、「相手に自分の言葉が伝わっていないな、と思ったら、それは『100%あなたの責任』」と断じました。

そして予想通りのコメントをいただきました。(コメントは編集してあります)

「誰かの「知識・経験のフィルター」が誤作動してる時、その誤作動は防ぎようがない。こちらの責任100%ではないのでは?」

「たしかにそういう面もあるけど、相手の価値観に阻まれてどうしても誤解されるときはあると思う」

うん、そうですよね。そう思いたくなる気持ち、よく分かります。

たしかに相手の「知識・経験のフィルター」が「誤作動」してるとしか思えない時ってありますからね。

「え? そうくるか!?」みたいな(笑)

まあ、前回の記事はあくまでそのような状況に陥った時に、相手の「誤作動」「誤解」で話を済まさずに、もう少し自分の言葉の使い方を振り返ってみようって話を自戒をこめてしたものだったのですが、それでも中には

「こんなに大変なら伝わらなくてもいい。」

と思っちゃった人もいたみたいで(汗)

なので今回はこの「誤解」についてもう少し掘り下げてみようと思います。

なぜ、あの人はあなたの言葉を「誤解」するのか?

まず、今回の記事の中で使う「誤解」の定義ですが、

「通常問題なく周りに伝わるはずの表現を用いたのに、想定外、ことに悪い方向への想定外の解釈がなされ、自分の意図しない内容が相手に伝わってしまうこと。または伝わったその内容」

ということにしておきます。

ポイントは「通常問題なく周りに伝わるはずの表現を用いたのに」という部分です。

今までの経験上、特に問題のない表現だったのに、なぜか今回はうまく伝わらなかった。そういう状況を今回は「誤解」としましょう。

では、どうしてこのような「誤解」が発生するのでしょう?

私自身は、大きく分けると以下の5つが原因として挙げられると思っています。

原因1,あなたのことが嫌い

のっけから身も蓋もないことを書きますが、「誤解」のもっとも大きな、そして一番根が深い原因は、おそらくこれでしょう。

人間は、味方の言葉しか聞こうとはしません。

これはもう本能といってもよいでしょう。

「こいつは敵だ!」と思われた瞬間に、相手の耳(or目)は閉ざされ、あなたの言葉はすべて悪いように解釈され始めます。

あなたにも、いっぱい思い当たる人がいませんか? ほら、あの人とかあの人とか(笑)

私もこれにはずいぶん悩まされてきました。

原因2,自分のことが「好きすぎる」

変な表現ですが、相手が自分自身のことを「好きすぎる」ことも「誤解」を招く要因です。

つまり、自分がどう感じるか、自分がどう考えるか、を大事にする余り、あなたの言葉を自分の都合のよいように「ねじ曲げて」解釈してしまい、「誤解」が生ずるのです。

私自身、いろいろ誠心誠意、言葉を尽くして語ったのに、「それって結局○○ってことですよね」と、見事に「自説」を述べられて、がっくり来たことが何度もあります(笑)

「我田引水」「牽強付会」を、そのまま体現した人ってことですね。

原因3,知識が足りない

相手の知識が足らないことも「誤解」を招く要因です。

インターネットが普及しだした頃、「空メールを送ってください」とメールで案内したところ、メールの本文に「空」とだけ書かれた返信が送られてきたことがありました(笑)。

これはまだ罪のない例ですが、相手の知識が不足しているためにあなたの言葉が思わぬ意味で捉えられてしまうことはよくあることです。

理解の前提となる知識が欠けると、一気に「誤解」が発生するんですね。

原因4,経験が足りない

知識と同様に経験が足りないことも「誤解」を招きます。

異性の放つ「馬鹿!」という言葉の意味を、若者は何回「誤解」すれば大人になるのでしょう?(笑)

また、思春期に読んだ文学作品を大人になってから読み直すと、そこに全く別な貌(かお)を見ることはよくあることです。

「亀の甲より年の功」というのは、経験の多寡という面では今でも充分有効な格言なんですね。

原因5,言葉を知らない

こちらに関しては以下の図を見て直観的に理解していただければと思います。

言葉は網の目状になって、周りの世界を捉えるいわば「網膜」の働きをします。

言葉を少ししか持っていない(=網の目が粗い)ということは、物事の「微妙な違い」が分からないということです。

monariza

・言葉をたくさん知っていて違いを細かく捉えられる人が見ている世界

monariza2

・言葉の網の目が粗くなると世界も粗くしか捉えられなくなる。

monariza3

・でも、だれもが自分が見ている姿が正しい世界のあり方だと信じて疑わない。

やばい

・おまけ。「やばい」しか発しない若者が見ている世界(笑)

この「解像度」の違いが、「誤解」の温床になるのです。

微妙な言葉の違いが伝わらない。別な言葉に「置き換えられて」伝わってしまう。

そういう「誤解」がここから発生します。

相手に自分の言葉を「誤解」させないための4つのポイント

さて、「誤解」される原因が分かったところで、今度は「対策」を練りましょう。

私の考える相手に自分の言葉を「誤解」させないためポイントは、以下の4つです。

1,まず相手の「味方」になる

原因1で述べたとおり、相手が自分のことを「敵」だと思っていたら、伝わる言葉も伝わらなくなってしまいます。

だからまずはこちらが相手の「敵」ではないことを知らせて、相手の耳(or目)を開かせましょう。

会話であれば共通の話題を見つけ出す。文章であればまずは相手の存在を認める文言を書く。(この記事の冒頭をみてください)

そうして自分が相手の「敵」ではないことを分かってもらってから話を始めましょう。

2,相手の「知識・経験のフィルター」の特徴を推測する

原因3,4,5に対処するために、まずは相手の「知識・経験のフィルター」の特徴を推測しましょう。

相手の「属性」を踏まえ、与える言葉の質と量を決めます。

原則は、「ギャップがあればあるほど言葉の量は多く、丁寧に。」

知識が足りなそうであれば、知識を与えながら。

経験が足りなそうであればば、「○○を知ってる?」「××したことある?」と相手の経験の質と量を測りながら、話を進めます。

言葉を知らなさそうなら、なるべく簡単な言葉を使うようにし、不安があれば「△△って言葉知ってる?」と確認しながら進みましょう。

前回の記事で書いたとおり、自分と全く同じ「知識・経験のフィルター」を持っている人はいないのです。

相手がどんな「知識・経験のフィルター」を持っているを考えながら言葉を選びましょう。

3,「地ならし」情報を適切に与える

2,を適切に行えば、自然にやることになるのですが、「地ならし」情報を適切に与えることも「誤解」させないためには大切です。

「本題」を伝える前に、それがきちんと伝わる「共通の土台」を作り上げておかなければなりません。

最初に相手がどのくらい知識や経験を持っているかを確認し、自分と相手がどのくらい情報をすでに共有しているかを測ります。(これを「レディネス調査」といいます)

その上で、必要があれば「本題」を理解するために必要な情報、つまり「地ならし」情報を与えておくのです。

あらかじめ「地ならし」をして相手と自分の知識の「高さ」を揃えておくことで、「誤解」を防ぐごとができるのです。

4,理解度を確認しながら双方向で一歩一歩進む

そして、話し言葉の場合であれば、話しの途中で相手の理解度を確認しながら進めることが大事です。

とくに原因2(自分が好きすぎる)が考えられそうな人と話をするときは、適宜相手の理解が適切なものかどうか、一歩一歩確認しながら進むことが大事です。

時々、質問がないかを確認し、自らの言葉が「誤解」されていないかつねにチェックしながら話を進めましょう。

そうすることで、話し終えてから全然伝わっていないことに気づいてがっかり、ということもなくなります。

「誤解」させない人は、「誤解」しない人

さて、相手に自分の言葉を「誤解」させない4つのポイントは納得いただけたでしょうか?

ただ、これら4つのポイント。じつはこれから述べる「最後のポイント」を守らないとうまく機能しません。

そのポイントとは、「つねに自分を疑う」ということです。

じつは「誤解」させない人は、「誤解」しない人でもあります。

あとで別な記事で詳しく書きますが、相手の言葉を「誤解」しない人は、以下の3つのことができる人です。

1,自分の感情を脇に置く
2,自分の意見を脇に置く
3,分からなければすぐに質問する

つまり、自分の「好き」「嫌い」や「自分の意見が正しい」と思う気持ちを一旦カッコにくくって外に出し、相手の話をニュートラルな状態で聞くことができる。そして、自分の知識が絶対ではないことが分かっているからこそ、分からないことがあれば率直に質問できる人が、相手の言葉を「誤解」せずに受け取ることができるのです。

そして、そのように「自分を疑う」ことができ、自分の言葉の使い方を客観的に捉えることができるからこそ、相手に「誤解」させないように言葉を使うことができるのです。

難しすぎる?

はい、かなり難しいことですね。そして、これが完璧にできる人はほとんどいないと思います。

ただ、「誤解」の仕組みを知り、何度も何度も失敗しながらじりじり「相互理解」に近づいていくしか、我々に残された道はありません。

しかし、その道は険しいながらも「あなたと私はわかり合えるかもしれない」という希望に近づく道でもあります。

私自身、まだまだ修行の身であります。

この記事があなたの「誤解」についての理解を少しでも深め、あなたの人間関係を少しでもよい方向に持っていけるのであれば、これに勝る喜びはありません。

一緒に頑張りましょう。


※kindle版「小論文のツボ60」が発売されました! 本ブログ連載「小論文のツボ60」をまとめて一気読み! 例文を加えてさらに分かりやすく!
小論文の書き方のコツをすべて伝授! 小論文のツボ60 - 作文と小論文の違いから日頃の訓練法まで-小論文の書き方のコツをすべて伝授! 小論文のツボ60 - 作文と小論文の違いから日頃の訓練法まで-
石井秀明

論文オンライン 2014-01-01
売り上げランキング : 4948

Amazonで詳しく見る
by G-Tools
※kindleは、お手持ちのスマホ(iPhone,Androidなど)や、タブレットPC(iPadなど)からもご覧になれます。

公式Webサイトはこちらから!

140303ロゴ(論文オンライン)small



-添削屋日乗

Copyright© 添削屋日乗 , 2024 AllRights Reserved.