文章力を上げるために、まずは「視写」をしてみましょう。
「視写」とは、お手本の文章を「視」ながら「写」すこと。
簡単に言うと、文章の「丸写し」です。
この方法は、古今の作家が文章上達のための最善の方法として挙げてきました。
たとえば、『鉄道員(ぽっぽや)』や『壬生義士伝』で有名な浅田次郎は、毎日、谷崎潤一郎や志賀直哉の作品を視写していたそうです。
また、昔の寺子屋も読み書きの練習と言えば、四書五経の視写と決まっていました。
かくいう私も、高校時代は阿刀田高や向田邦子、丸谷才一の文章を視写して、「ああ、いつかこういう文章が書いてみたい」と夢見ていたものです。
しかし、この視写、実際にやってみると結構難しいものです。
まるで「他人の靴」を履いているような窮屈さを覚え、原稿用紙1枚程度でも、一字一句間違えずに写そうとすると相当神経をすり減らします。
でも、だからこそ勉強になるのです。
どうしてここはこの言葉なんだろう?
どうしてここに「、」を打つんだろう?
ああ、自分だったらここはこう書くのに・・・
他人の頭になって文章を書き写すことで、ただ読んでいただけでは気がつかなかったことが見えてきます。そして、視写した文章は、あなたの血肉となり、自分で文章を書くときのいわば「テンプレート」として機能してくれるのです。
用意するべきものは、視写したいと思えるお気に入りの文章と原稿用紙だけ。
小論文の練習に使うのであれば、お気に入りの新書や、新聞を読んでいて気になった論説文などがよいでしょう。
よく「天声人語」や「社説」の視写を勧める本を見かけますが、前者は中途半端に文芸的で、後者はバランスを重視しすぎて主張がはっきりしない場合があります。
せっかく視写をするのであれば、主張が明確で分かりやすい、そして視写していて楽しい文章を選びましょう。
いつのまにか基本的な文章力がアップしているはずです。
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